-ブランディング×デザイン力で印刷会社のソリューション力を高める【第9回】
印刷会社が顧客のブランド・イメージをデザインで表現するには、顧客の顧客であるユーザーのニーズを把握し、商品・サービスの市場におけるポジション(立ち位置)の模索から関わる必要がある。
※本稿では顧客の定義を以下の通りで記している。
・印刷会社の顧客(以下、顧客)
・印刷会社の顧客の顧客(以下、ユーザー)
●デザインはブランド戦略構築のプロセスから組み立てる
印刷会社が顧客の商品・サービス等の成果に貢献するための一つの方法は、ブランディングの支援である。ブランディングの支援とは、顧客の商品・サービスのコンセプトを創り上げた上で、そのイメージを統一しロゴ、キャッチコピー、キャラクター、配色、フォント等のブランド要素を印刷物として表現することである。そして、一貫性のあるデザイン表現をするには「フォント」「カラー」「ビジュアル」等を「トーン&マナー」でルール化する必要がある。
しかし、コンセプトであるブランド・アイデンティティの立案から、すぐにデザイン表現を導き出そうとするケースが散見される。それではブランド戦略とデザイン表現が統一できない。
ブランド・アイデンティティを表現し成果を出すためには、印刷会社は顧客と一緒に、ブランド戦略構築のプロセスからデザイン表現やトーン&マナーを組み立てる必要がある。
●ユーザーのニーズから商品・サービスのポジショニングを把握する
はじめに、ブランディングの対象となる顧客の商品・サービス等の市場機会を探す。次に、市場のなかに存在する複数のターゲット層から、どのユーザーが見込客として可能性があるか絞り込みをする(ターゲティング)。そしてそのユーザーニーズを把握した上で、顧客の商品・サービスはどのユーザーニーズを充足することができるのか立ち位置(ポジショニング)を見つける。
ターゲティングでは、顧客のユーザー(見込客)は「どのような人か?」「どのような問題、悩みを抱えているか?」「どのような欲求を持っているか?」「どのようなライフスタイルか?」「どのような趣味趣向か?」など、ニーズを探っていく。顧客の商品・サービスについて、ユーザー(見込客)は何を連想するのかを「イメージ連想マップ」などを活用して探る必要がある。イメージ連想マップとは、以下のように商品・サービスを中心に連想が広がっていく状態を表したものである。
この例は、あるエステサロンに対して、ユーザー(見込客)の心の中で起こる連想の状態である。この中で多数でてくる言葉や、顧客の商品・サービスに関係ありそうな言葉が、強い連想として想定することができ、ユーザーニーズを満たすキーワードの可能性が高い。ユーザーニーズに応じた、顧客の商品・サービスの立ち位置(ポジショニング)を発信していくことで、ブランド・イメージをユーザーの心の中に築くことができるのである。このエステサロンでは、強い連想群をそれぞれ「癒し」と「贅沢な気分の非日常」というニーズに結び付ける。
そのニーズを軸にして、顧客の立ち位置(ポジショニング)を見つける。そしてトーン&マナーの基になるデザイン表現をつくりあげていく。
●ポジショニングに応じたデザインのルールを決める
ニーズとなりうる強い連想を軸としてポジショニングマップを作成していく。印刷会社は、顧客の商品・サービスはどの位置を取ることができるかを想定し、それに合わせたデザイン表現を導き出していく。例えば、フォントとカラーの表現をポジショニングマップから導き出していく。
#顧客は、横軸の「癒し」と縦軸の「贅沢な気分の非日常」のポジション[A]を取ることができると想定する。競合B社とC社は顧客とは違う場所であるとすれば、[A]の印象をユーザー(見込客)の心の中で築くことができれば、[A]のニーズが発生した際には、顧客の商品・サービスが想起されることになる。
そこで[A]の場所に当てはまる印象を与えるフォントやカラーを、顧客の商品・サービスのデザイン表現としてルール化していくのである。この場合、フォントとカラーはこのようにすることができる。
決定したデザイン表現の要素をブランド・アイデンティティと照らし合わせ、整合性が保たれていれば、トーン&マナーとしてルール化することになる。これらデザイン表現の要素をさまざまな広告・販促の印刷物で発信することで、ユーザー(見込客)に対して購買につながる印象を持たれることができるのである。
小澤 歩(おざわあゆむ)
有限会社グレイズ代表取締役 http://ozawaayumu.com/
(財)ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー http://www.brand-mgr.org/
目次 | ||
第1回 | 印刷会社に求められる顧客ビジネス支援のブランディング [2015/10/23] | |
第2回 | 印刷会社がクライアントに提供すべきもの [2015/11/27] |
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第3回 | 印刷会社が取り組むべきブランド戦略構築の流れ [2015/12/01] |
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第4回 | 活動の軸になるブランド・アイデンティティとは [2016/01/05] |
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第5回 | 顧客の心の中で自社を占めるポジショニング [2016/02/05] |
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第6回 | 印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現 [2016/03/08] |
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第7回 | ブランドの価値は世界観とトーン&マナーでつくる [2016/03/11] |
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第8回 | デザインを統一するトーン&マナーのつくり方 [2016/04/8] |
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第9回 | ブランド・イメージをユーザーに届けるためのデザイン表現方法とは? [2016/05/12] |
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第10回 | ユーザーの購買意欲を喚起する写真、イラストの選定方法 [2016/07/15] |
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第11回 | ユーザーの購買行動を促す広告・販促物に必要な視点とは [2016/08/19] |