新聞無購読層増加による到達率低下、効果測定の課題、広がるメディア選択肢の幅など、新聞折込広告を巡る環境は依然として厳しい。この問題を克服すべく誕生した2つのサービスを紹介する。
(株)朝日オリコミは、2015年2月、神奈川県川崎市、横浜市北部で新聞無購世帯セグメントポスティングサービス「ぽすけっと」を開始した。サービス名は、「ポスト」と「助っ人」を合わせた造語だという。「ぽすけっと」は、近年の新聞折込広告が抱えていた、新聞無購読世帯への到達率や若い世代へのリーチという2つの課題を解決する手段として開発された。
このサービスの特徴は、大きく分けて3つある。1つ目は、従来のポスティングやフリーペーパーでは不可能な新聞無購読世帯への配布選別を実現した点だ。さらに配布エリアの細かいセグメントが可能で、新聞折込広告との併用により、高いリーチ・レスポンスが期待できるという。
2つ目は、自社調査から、新聞無購読でもチラシを必要とする層を割り出し、情報高感度だけでなく購買力も高いと想定される層が多く住む「分譲マンション」中心の配布網を築いたことだ。
3つ目は、消費者に安心感を与える体制作りである。「ぽすけっと」は、地域の新聞販売店スタッフが配布、広告には毎回、配布元と問い合わせ先を明記したカバー紙を付け、朝日オリコミ内に設置した問い合わせ窓口がその対応に努めている。
現在はサービス提供エリア、配布日も毎週2回と限定的だが、広告主、ユーザーからの評判は共に上々ということで、今後は地域の拡充や配布日を増やすことも検討していきたいという。
昨年、折込広告会社が始めた印刷の総合通販サイトとして話題になった「よみプリ」は、(株)読売ISが提供している。読売ISは、折込広告事業のほか、女性向けマーケティングや各種データ活用にも力を入れてきたが、減少する新聞折込需要の活性化策として、「よみプリ」のサービスを開始した。
「よみプリ」は、デザイン・制作から印刷、さらに個別折込の手配まで一括して任せられる点が大きな特徴で、いわば、「折込広告のワンストップサービス」という形態になっている。
サービスを開始したことで、これまで取引のなかった地元密着型の小規模スーパーなど、新規顧客の掘り起しが実現、小口の折込需要の喚起に繋がるだけでなく、想定していなかったような仕事や副産物も得られたようだ。
新聞折込広告にとって苦しい状況は続いているが、紹介した2つの事例のように、「折込広告」が持つ課題を克服する新サービスや、利点をさらに伸ばすような取り組みが増え、成果も生まれ始めている。
(JAGAT 研究調査部 小林織恵)
関連イベント
2015年7月8日(水) 14:00-17:00(受付開始13:30より)