増税、円安、株高、物価高といったマクロトレンド変化は、金融危機以降の印刷メディアの長期トレンドにも与え始めたようだ。客観的にどのような変化の兆しが見られるのか、各種指標から考察する。
日本の広告費にみるメディア潮流4つの変化
2015年2月発表の電通「日本の広告費」をみると、広告ビジネスの金融危機以来のトレンドが変わり始めている。景気回復の追い風を受け、広告費の総額はいよいよリーマンショック以来の6兆円台回復を果たした。しかし、その広告メディア内訳は当時と一変した。変化のポイントには①デジタルメディアの再成長、②広告費・販促費の投下地点の変化、③費用対効果の重視傾向、の3点が挙げられる。また、特に短期的には長期低落傾向にあった印刷メディアの下げ止まり傾向を挙げてよい。
広告主の姿勢の変化、販促費投下地点の変化
インターネットを始めとしたデジタルメディアの伸長は言うまでもない。ユビキタスからモバイルへ、そしてウェアラブルへと進化、いまや生活者の日常行動と切っても切れない存在になりつつある。また広告・販促費は自宅から売り場まで、そして陳列棚からレジまでの生活者の動線上に投下されるが、広告主は購買の最終決定に影響を及ぼそうと、自宅から屋外へ、そして店頭、さらには店内へと、広告・販促費の投下地点を購買の最終意思決定地点に近づけ続けている。また、費用対効果を測定しやすいメディアを選ぶ傾向を強めている。
印刷系の広告メディアに下げ止まりの兆し
印刷メディアに目を向けると、折込チラシ(△3.6%)の減少幅が依然として大きい。しかし新聞(△1.8%)はかつてのような5%を超えるような落ち込み幅ではなくなってきた。DM(+0.8%)と雑誌(±0.0%)は±0前後に落ち着いてきた。フリーペーパー・フリーマガジン(+1.2%)は7年ぶりの増加に転じた。長期低落局面にあった印刷メディアの減少幅がようやく小さくなり、あるいは上昇し始めた。本格反転なのか、下げ止まりなのか、あるいは嵐の前の静けさなのか、判断は今後を見守るしかないが、一時のような一方的な減少という感じではなくなってきたことは確かである。
改善が散見された始めた印刷関連指標
米国は2014年の商業印刷は1%程度の微増であったようだ。日本では2014年の商業印刷は5%超の増加であった(生産動態統計100人以上の事業所対象調査)。各種の印刷に関するデータすべてが減少だけを示している感じではなくなってきた。サンプル要因などにより日本の調査は少し高めに出ていることを割り引いて見る必要はあるにせよ、予断は許さない状態ながら印刷メディアに関して潮目の変わりを示すようなデータが出始めていることが事実とはいえる。
JAGAT研究調査部 藤井建人
※全文は『JAGAT info』2015年4月号マーケティング情報「日本の広告費に見るメディアトレンド最新動向」
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