※本記事の内容は掲載当時のものです。
ナンデモQ&A:特殊印刷
Q:フィルムへの印刷はなぜグラビアなのでしょうか?
A:【グラビアの特徴】
グラビアは凹版印刷の一種で、細かい凹点(グラビアセル)内に詰められたインキの量によって濃淡を表現します。版の窪んだ部分にインキをためて、それを圧胴の圧力でインキを転移させて印刷します。
特徴としてはインキを載せ転移させる量が一定であるという計量精度に優れています。1インチあたり何本セルが入っているかというスクリーン線数にもよりますが、セルが浅ければ少ないインキが入りますし、深ければ多くのインキが入ることにより高精度な細密な再現性が得られます。インキの転移量を細かく調整できるので、非常にカラー再現にすぐれているという印刷手法です。
また、グラビアインキは一般的に油性インキが主流です。アルコールやトルエン、酢酸エチル等のインキ溶剤が使われています。最近は環境等の問題でトルエンを使用しないインキや、逆に水性のインキが出ていますが、基本的には油性インキになっています。
【グラビアとフィルムの相性】
一般的に、プラスチックフィルムは濡れ性が悪く水を弾く性質があります。そういう被印刷体にインキをつける場合に、グラビアで印刷が向いている理由のひとつに油性の性質をもっているので付着性がいいことがあげられます。もうひとつは、カラー再現の中で細かな印刷がしやすいことがあります。
例えば紙の場合はグラビア以外にもオフセットや凸版で印刷しますが、紙にインキが吸い込むため、インキの計量精度を計算できないところがあります。しかしフィルムはインキを吸い込むことがないため、ほしい量をほしい個所にキッチリ転移させることができ計量精度が高く再現性がいいことがあげられます。
また、例えば用紙だと多少表面に凹凸があるために、インキが付かなかったり付き過ぎたりすることがありますが、プラスチックフィルムの表面には非常に平滑性がありグラビアの版も表面が平らで窪みがあります。そういう意味では平らな面に平らな版をつけるということで適しているともいえます。
紙の場合はグラビアだとかすれぎみになることもありますが、平滑なフィルムはかすれることはありません。そういう意味ではグラビアの相性がいいといえるでしょう。
【フレキソの動向】
プラスチックフィルムの印刷をグラビア以外でやっているのがフレキソ印刷です。オムツとか生理用品でポリエチレン単体の袋、スーパーのお持ち帰りの袋などフレキソで印刷されているケースが多いでしょう。
単体の袋ではフレキソで印刷されるケースがありますが、複合されて貼り合わせされたラミネートものだと殆どグラビアです。
軟包装でもよくありますが、リピートでオーダーをいただく仕事が多いと、色合わせがとても重要でフレキソだと色ムラが出やすいといわれています。
版についても、フレキソは樹脂版をシリンダーに貼りつけて印刷するため、印圧の調整が微妙で、グラデーションも難しいかもしれません。
カラーカーブで0%から100%までリニアになればいいですが、フレキソの場合ハイライトの再現性が非常に難しく、インキが付いたり付かなかったりします。逆にベタ部ではインキがはみ出て太りすぎる傾向があります。
最近は版周りの進歩もあり、インキの転移量を微細に変えることもできますので以前よりは技術的に改善されています。しかし、グラビアと比較するとまだ印刷品質の差があり、顧客に満足してもらえないというのが現状でしょう。
取材協力:大日本印刷㈱ 包装総合開発センター
http://www.dnp.co.jp/
(2004年7月19日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)