※本記事の内容は掲載当時のものです。
ナンデモQ&A:特殊印刷
Q:駅・デパート・スーパー等の床や壁に貼られている色々な印刷物はどうやって制作されていますか。
A:駅・デパート・スーパー等の床や壁に貼られている印刷物(一般にはサインパネルと呼ばれている)で人物・物体を切りぬいたり○型□型等にカットされて製品の売り場案内や出入口方向の表示、ポスター等になっているのをよく目にします。当然、それらはプリンタからオンデマンドで出力された印刷物です。しかし、床に貼られていると靴で踏まれたり、壁や手すりに貼られていると人体と接触することにより磨耗して行きます。 また、ある一定の期間が経過すると跡形も無く剥がされなければならないものもあります。そこで、このような印刷物は通常の物とは違った材料を使用して制作されていますが、どのように制作されているのかについて、ローランド ディー.ジー.(株)のプリント&カットマシンによるフロアサイン制作を一例として述べたいと思います。
【レイアウト】
まず、レイアウトは、特に専用のレイアウトソフトが必ずしも必要ではなく、市販されているイラストレーターで作成し出力します。 また、人物・物体を切りぬいたり○型□型等のカットはどうされているかというと、イラストレーターでカッティング線を絵柄と併せて作成します。切り取る抜き型の線をつくっています。 文字の場合だったらアウトラインを抜いてもらえばいいです。写真の一部の絵柄等の変型ならばフォトショップでアウトラインをとって、イラストレーターにパスのデータだけをもってくればカットラインとして認識されます。 ここで「出力」すると出力機側にはプリントとカッティング機能があり、グラフィックスとカットのラインを認識してくれます。プリント後、自動的に原点に戻り型を切るということになります。
【水性と溶剤系のインクジェットプリンタ】
出力機は主に水性と溶剤系のインクジェットプリンタがあります。このどちらが多く使われていたりどちらが向いているのかについてはいろんな見方があります。しかし、いずれにしても表面保護等の為にラミネート加工をしなければなりません。ラミネート加工すると耐光性、耐摩擦性が上がりますので、短期間のご使用においてはどちらのインクを選んでも構いませんが、耐光性が問われる場合は優れた耐光性を持つ溶剤系インクのほうがいいようです。 次に、生産コストには差が出てきます。インクの値段はメーカーにより多少の違いもありますが、そんなに差はありません。溶剤系のインキはコスト的には安価ですが、水性インクに比べると若干、彩度が落ちます。 印字される素材としては塩ビやPET、フィルムベースのものがあります。印字される素材は水性と溶剤系を比べると値段に格差があり、溶剤系のプリンタ用の素材は水性に比べて約半分のコストで済むので一般的には生産コストは溶剤系の方が安価でできます。水性のインクジェットだと専用紙である必要がありますが、溶剤系は専用紙だけでなく色々なものに印字できるという特長があります。
【後加工】
プリントアウトした後のインクは、水性の場合はすぐ乾くので、すぐ後加工の作業にかかれます。しかし、溶剤系のインクは、メーカーによって差がありますが、乾燥には多少時間がかかります。溶剤系の場合は溶剤成分が揮発しないと、ラミネートしたときに気泡ができます。ですから、一晩くらいおかないと完全に乾燥しないケースがあります。 印字した後はラミネート加工を施します。この場合、普通のラミネートだと雨が降ったときに水で滑ります。それで、最近は水がついても滑らないラミネートの素材が開発されています。 また、素材が塩ビなのかPETなのかフィルムベースなのかによってラミネートとの相性があるので、それをあわせてもらう必要があります。 そうしないと作成後に伸縮があったり、長期に掲示するものだと、伸び縮みや割れてきたり気泡ができたりすることがあります。屋内でも、白色灯は紫外線を出しますから、その対策としてもラミネートするほうがよいでしょう。 材料を選ぶときに結局どういう場所のどういう用途でどのくらいの期間使用するのかということで、それぞれ違ってくるし、インクの選択も違ってくるでしょう。そういうことは、材料の組合せで、より効果のあるやり方を選択しなければなりません。 メーカー各社により、いくつか制作方法がありますが、基本的にはプリントアウト・ラミネート・カッティングという工程を経て制作されます。
取材協力:ローランド ディー.ジー.(株)
(2004年1月5日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)