エーデルグラムとは何でしょうか。

掲載日:2014年8月14日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:エーデルグラムとは何でしょうか。

A:【概念】 
  エーデルグラムとは、特殊レンズシートを印刷物の画像の上に重ねると、印刷物の絵柄の中の隠し画像を浮かび上がらせる技術をいいます。かまぼこ形状の特殊レンズを用いてモアレ現象を利用しています。もともとは、株券・商品券・約束手形などの金券の偽造防止や認証用に用いるために大日本印刷㈱が独自に開発したものです。
  基本的には、特殊レンズシートと印刷物がワンセットになって使用されて、今では出版向けに多く利用されています。

 【製造方法】
  印刷版式は普通の平版です。以前は単色が主でしたが、カラー画像にも潜像として文字を埋め込んだらどうなるのかということで開発されました。
  基本的には、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック(以下CMYK)の4版ありますが、そのうちの埋め込みたい画像を1版だけに加工します。
  どの版に埋め込むかということは、特に決まりはありません。埋め込みたいところと埋め込める画像によりますが、例えば画像の赤い部分の中に浮かび上がらせたいなら、マゼンタの版に埋め込むと見えやすくなるように、どの版を使うかは絵柄によって違ってきます。

  基本的に、浮かび上がる画像は、印刷物上では万線状になっています。パソコンのソフトで浮かび上がらせる画像を線に分割する技術があります。
  シート用のレンズは主に0.3ミリピッチのかまぼこ型のレンチキュラーレンズを使っています。印刷物上では、約0.05ミリピッチの細かさで万線を作り、埋め込みたい画像は万線に対して網点を半波長ずらしており、0.05ミリピッチでずれていることになります。
  他の画像のところは網点が通常の印刷物と同様に並んでいますが、潜像の版だけ万線で濃淡を表現しています。したがって、これにレンズをあてると、ずれたところが浮かび上がってくるというわけです。
  画像のスクリーン線数は、すべて対応できます。高精細印刷にも対応可能ということですが、実績がないのでこちらのほうはあくまでも理論上ということになります。
  スクリーン角度の問題で、モアレが出る出ないというのがありますが、そこは出力機を調節しながらモアレがでないような状態で出力するということになります。

 【特殊レンズシート】
  万線シートのピッチや厚みによって、素材もさまざまです。通常、0.2ミリピッチというのが一番細かいもので、0.5ミリピッチまであります。ピッチさえ合えば素材や厚みも気にする必要はありません。

 【用途】
  現在、エーデルグラムが使用されている印刷物では、小学生以下の子供向けの雑誌類など教材関係に多く使われています。子供が遊びながら、学べるというのが大きな理由です。
  例えば、動物の名前だとか、動物の骨があって骨格がどうなっているかなど、ゲーム感覚で、普通の雑誌では使えないような道具を使って学習できます。また、英語教材などで答えが潜像画像として埋めこまれているというような方法で学習の手段としても使われています。

 【今後の展開】
  今後は、DMへの活用も考えられます。基本的にはDMを受け取った人がDMを持参してお店に行き、そこでレンチキュラーを重ねて確認してもらって懸賞になる等、来店を促すようなツールとしても考えられます。 
  また商品は模造されるケースがあります。模造される毎に刷り替えていたのでは、非常にコストが高くなってしまいます。こういうときに潜像を埋め込んでおけば、レンズをあてるだけで、自分のところのものだと確認できます。ランニングコストが安く簡単に検証できることになります。

  本来は証券の偽造防止というところから出発したエーデルグラムですが、株券・商品券・約束手形などの金券には殆ど利用されていません。証券は機械で認識させることが多く、また見て分かるようなホログラムが印刷されています。
  それに商品券を確認するのにレンチキュラーレンズを1個づつ店のレジに置くと、混雑時のお会計が大変効率の悪いものになりますので、日常生活で使うには向かないでしょう。

   取材協力:大日本印刷㈱ URL http://www.dnp.co.jp/index_j.html
 

 (2003年10月13日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)