電子受発注の中で、消費者の重大な過失とはどの程度までのことを指すのでしょうか?

掲載日:2014年8月14日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:知的財産権

Q:電子受発注の中で、消費者の重大な過失とはどの程度までのことを指すのでしょうか?

A:例えば商品を「1個」買うつもりだった消費者が、パソコンの操作ミスにより「11個」 買うとウェブの申込ページに打ち込み、その間違いに気づかないまま 申込み(送信)し、商品が発送されて誤りに気づいたとします。 
 電子契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)が無い頃は、この消費者は、民法95条により、錯誤による契約無効が主張できますが、同条には但し書きで例外があり、この消費者のミスに重大な過失があれば契約無効の主張はできません。この場合、契約を有効としたい事業者側は「重大な過失があり契約は有効だ」と主張できます。
ここで、「重大な過失」とは、「重い不注意」つまり「通常ちょっと注意すれば間違いに気づく程度だった状態」をいいます。 実際、「重大な過失」かどうかは、個別事情によってケースバイケースで判断されるため、例で記載したパターンが一律「重大な過失」とはいえません。しかし、クリックミスや数字の打ち間違いが重大な過失と認められるケースも従来あり、事業者側の立場としては「重大な過失があった」と主張することになるため、法的に不安定な状態でした。
 電子契約法施行後 前述のような特に消費者側にとっての不安定な状況を払拭するため、電子契約法が制定されました。この法律は、事業者側が消費者の申し込み内容など意思を確認するための適切な措置を設けていない場合には消費者側を保護するもので(電子契約法3条)、仮にこの場合、消費者側に「重大な過失」があっても、民法95条ただし書の例外が適用されず、事業者側は消費者側の重過失を問えないことになりました。
 逆にいうと、事業者側が消費者の申し込み内容などの意思を確認するための適切な措置を設けていれば、従来どおり、契約有効を主張する事業者側は錯誤無効を主張する消費者に「重大な過失」を主張することになります。
この場合、事業者側が主張する「重大な過失」としては、例えば「システムで申し込み内容の確認を求めており、ちょっと注意すれば誤りに気づくようになっているのに、これに気づかなかった」点等と考えます。

※民法95条
 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重  大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

※電子契約法3条 民法第九十五条 ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。
   一  消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
  二  消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。

 

(2007年10月1日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)