※本記事の内容は掲載当時のものです。
ナンデモQ&A:知的財産権
Q:新聞記事をそのまま引用してもいいのでしょうか
A:新聞記事に著作権があるかどうかという問題があります。新聞記事には、一般の報道記事・解説・社説・署名入り記事などがあります。このうち、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」は言語の著作物に該当しないと著作権法10条2項に規定があります。ここでいう雑報とは、どこそこで地震があったとか、交通事故があったとかいう簡単なニュース、人事往来、死亡記事などです。
こういうものは、著作物ではないとされているのですが、それ以外の記事は殆ど著作物と考えた方がいいでしょう。
日本新聞協会は昭和53年5月、次のような見解を発表しました。
「最近の紙面における記事は背景説明の伴った解説的なもの、あるいは記者の主観、感情を織り込んだ記事が多く、紙面構成も高度な創意・工夫がはかられており、、独創的な紙面づくりが行われているのが実情である。したがって報道記事の大半は、現行著作権法に規定される著作物と考えるのが適当である」
これを細かくみていくと、雑報以外の記事の一つ一つは著作物です。そして、著名のあるものはその筆者の著作物ですが、無署名のものは記事が職務上作成した法人著作(著作権法15条)と解されますので、新聞社が著作者でかつ著作権者です。このほか掲載されている写真も、外部のカメラマンが撮ったものはその人の著作物、社内カメラマンのものは新聞社の著作物です。
一方、紙面の構成にも創意・工夫がはかられているので、その紙面全体は新聞社の「編集著作物」と解されます。新聞全ページを営利的な目的で無断で複製したとすれば個々の記事や写真の著作権のほかに、全体の編集著作権をも侵害したことになります。
新聞のニュースといっても項目だけを箇条書きしたものと、解説文つきの二つが考えられます。解説文つきでは著作物となり新聞社の許諾を得なければなりません。しかし、箇条書きだけだと、本の題名とか記事の見出しと似ていて、それだけでは著作物とはみなされませんから、新聞社もクレームをつけにくいでしょう。
しかし、記事は新聞社の報道活動の成果であることを考えれば、断っておくほうが無難です。「○○新聞より」という名称を入れておけば高い使用料を請求されることはないと思われます。
「商品企画のための著作権Q&A」社団法人日本印刷技術協会編 より
[参考資料]
著作権法 抜粋
(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。
3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
(昭六〇法六二・1項九号3項追加)
(職務上作成する著作物の著作者)
第十五条 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
(昭六〇法六二・見出し1項一部改正2項追加)
(2003年9月8日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)