水性インキの用途と現状について

掲載日:2014年8月17日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:水性インキの用途と現状について

A:【版式と用途】 
  水性インキとは石油系溶剤を使わない印刷インキで、印刷する版式としては、グラビアとフレキソで使われています。
  水性グラビアインキの用途は、雑誌などの出版印刷、パッケージなどの紙器印刷、建装材としてのチタン紙や塩ビフィルムへの印刷、アルミはくやプラスチックへの印刷などの用いられています。
  水性フレキソインキの用途は、セメント袋などのクラフト袋への印刷、段ボール印刷、牛乳やコーヒーなどの紙器容器への印刷、ナプキンやティッシュペーパーへの印刷、プラスチックフィルムへの印刷などがあります。
 【組成】
  水性インキは、樹脂(水溶性樹脂・コロイダルディスパージョン・エマルジョン)、水溶化剤(アンモニア水・有機アミン類)、顔料(有機顔料・無機顔料)、助溶剤(アルコール類など)、耐摩擦性向上剤(ワックス類)、あわ消し剤、水といった成分から成り立っており、必要に応じて、かび防止剤、可塑剤、さび止め剤が添加されることがあります。
 【長所と短所】
  石油系溶剤インキと比べたときの水性インキの長所は毒性、臭性が少なく不燃性であり資源的に豊富で安価です。
  短所としては、加熱乾燥したときの費用が高い、蒸発速度が遅く湿度に影響されたすい、紙のしわ・波打ち・カーリングの原因となり寸法安定性を劣化させ、さび・かびの発生・腐敗などを助長することなどがあげられます。
  水性インキへの期待と、水性インキの抱える問題を考えるとき、だだインキの問題だけでなく、被印刷体・刷版・印刷機・乾燥装置などの印刷システムといった見地から考えを進めなければならないということです。
 【日本と欧米の現状】
  日本において食品包装は油性インキが大半を占めます。紙・ダンボールなどは近年では油性インキによる印刷から水性化が進み、特にダンボールの業界では、約95%が水性化されています。他にも、包装紙や紙ニスなどの業界でも水性化は進んでいます。一方、グラビア印刷業界では約3%足らずしか水性化は導入されていません。
  また日本においてインキの出荷量が一番多いのは、グラビアインキですが、グラビアインキの水性化はあまり進んでいないようです。

  アメリカでは油性インキと水性インキの比較で水性インキの割合は6割を超えています。ヨーロッパでのそれも3割強が水性インキです。ちなみ日本は1割にも達していません。欧米では、日本と違いフレキソ印刷が多く、またフレキソCTPの性能も進歩しているので、水性化しやすいという背景があります。
  では、なぜ欧米ではフレキソが多いのかというと、色に対する価値観が日本とは全く異なるからです。欧米では日本ほど印刷再現の問題がないからです。
  また、欧米では化学物質に対する規制が厳しく、業界全体での総量規制が行われていることろもあります。日本もようやく排出を抑えようとする動きが出てきています。国レベルで、PRTR法やグリーン購入法を導入しました。地方独自で条例等を制定する動きもあります。
  こうした背景には、環境問題に対するニーズが急速に高まり、また商品に対する安全性を求めるニーズも高まっていて、陳列されている商品にも環境対応をうたったものが多くなってきています。将来的には確実に有害な化学物質は規制され、使用しにくくなると考えられます。水性インキの使用は必要とされているニーズであるといえます。

 資料提供:㈱トップ堂  URL:http://www.topdou.com/

 

(2003年1月6日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)