※本記事の内容は掲載当時のものです。
書評:『デザイン・ルールズ「文字」』
伊達千代・内藤タカヒコ共著
エムディエヌ B5変型判 160ページ 2415円
「文字とデザインについて知っておきたいこと」を副題としてまとめているが、グラフィックデザインにおける文字の重要性を説いている。文字について知りたい人、またデザインを学びたい人のための、文字とタイポグラフィの基礎知識である。
今までフォント関連の図書では、書体やデザインを主とした解説書が多いが、本書のようなユニークでグラフィカルなフォント(書体)解説書は少ない。
グラフィックデザインと言えば、グラフィカルなもので画像が主に取り上げられるデザインを思い浮かべるが、本書のエディトリアルデザインは文字を主体にした内容でありながら、細かいところに気が配られあか抜けしている。
文字がコンピュータ化され、文字を使う側が安易に文字を扱っている感があるが、昔はレタリングと呼ばれる手法で、活字や写植以外は手書きで処理してきた。つまりレタリングができないデザイナーは、デザイナーの資格がないと言われたものである。
本書は文字に関する諸要素を5つのステップに分類し、それぞれ分かりやすくコラム解説を付けている。
特に「ステップ1」の中での「欧文書体のマナー」については参考になる。つまり日本人の欧文フォントに関する審美感は、優れているとは言い難いからである。加えて「ステップ4」の「文字をグラフィックスとして扱う」などは、エディトリアルデザインの見地から説得力のある解説である。
文字をデザインすると言えば、タイプデザインだけと思われるが、文字のもつ可能性を広げるもので、タイポグラフィやエディトリアルデザインにおいては、内容と書体の関係が重要である。
(2007年9月3日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)