『文字本』

掲載日:2014年8月18日

※本記事の内容は掲載当時のものです。
 
書評:『文字本』

片岡 朗編・著
誠文堂新光社 B5判 207ページ 2100円

 

「文字をつくる」「書体をデザインする」「文字をレタリングする」など、いろいろな表現があるが、本書は新しい書体デザインの紹介とともに、文字がもつ意味の遊びと、言葉の遊びと文字デザインをミックスして解説したタイポグラフィックな本である。文字がもつ意味、言葉がもつ意味をユニークな手法で表現している。文字文化とは言葉の文化であり、文字は意思を伝え文字は情報伝達の手段である。

pc0704_02

この本のタイトルの「文字本」は、単なる文字デザインの本ではなく、またレタリングの本でもなく、読み進むうちに非常にユニークな本であることが理解できた。

本書の主たる内容は「丸明朝体」というユニークな書体の紹介になっている。今まで長年、文字書体の主役は明朝体であったが明朝体が本文用書体として万能か、という疑問がある。可読性が高いサンセリフ系の本文書体が登場してもよいのではないか。DTPが登場しデジタルフォントが普及して以来、文字制作の手段が容易になり多様な書体デザインが誕生している。つまりDTPは書体文化の始まりと言える。

長い歴史をもつ明朝体の世界に、新しい「丸明朝体」というカテゴリーが生まれた。明朝体と言えば、その特徴は横線の終筆部に「ウロコ」と称する三角部分のエレメントが存在するが、この「丸明朝体」の特徴は始筆部分や終筆部分が丸いエレメントで構成されたデザインになっている。「丸明オールド」の漢字を共通項目として、筆の動きを強調したカナファミリーと、直線を意識した漢字がデザインコンセプトになっている。2000年2月サントリーの「新モルツ」の広告キャンペーンで発表されたのが始まりで、注目された書体である。

 

(2007年8月23日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)