※本記事の内容は掲載当時のものです。
書評:『紙とパルプの科学』
山内龍男著
発行 京都大学学術出版会
価格 1575円 サイズB6判 / 191ページ
紙と言えば印刷用紙、包装用紙などに分類されるが、印刷業界では主として印刷用紙がなじみ深い。 そして印刷と言えば、まず本や商業印刷物などが眼に浮かぶであろう。 通常は空気のような存在で意識の外にあるが、紙は必要不可欠な存在として日常生活に密着している。 ひと昔前、コンピュータが普及すればペーパーレス時代が実現すると言われたが、 現代では紙が減るどころか企業内や家庭内は紙に埋もれているのが現状である。
紙のことを英語で「ペーパー」と呼んでいることは周知であるが、 この呼称は古代エジプトの記録材料であった「パピルス」に由来する、とあるが、 現代で言う紙の起源は紀元前2世紀ごろの中国である。
本書は、古代中国で発明された紙がどのように世界中に広まったかという経緯、 また約2000年の歴史を経て製造法がどのように発展し多様化したのかなど、 紙とその原料となるパルプの科学を基礎から論じ紙の正体を描き出している。
印刷業界においてはグーテンベルグ以来の印刷技術の発展以来、 印刷材料として紙の歴史は古く、古来より紙は情報伝達媒体として重要な役割を果たしてきたと言える。 さらには情報技術の普及などにより紙の消費量は増大している。 われわれ人類は、多分に紙の恩恵を被っているが、特に印刷業界では紙の恩恵は計り知れない。
今後電子メールの普及などで電子媒体が増加していくであろうが、 プリントという紙媒体による情報伝達手段も残るであろう。 また物流の増加とともに紙の包装媒体も増加するであろう。 本書の内容は学術的で難解のところはあるが、コラム欄の内容は面白く参考になる。一読の価値があろう。
(2007年1月29日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)