※本記事の内容は掲載当時のものです。
書評:『グラフィックデザイナーのブックデザイン 』
小柳 帝編・著
発行所 ピエ・ブックス A5判 193ページ 2625円
本書のブックデザインは、本文のレイアウトとともにユニークである。昔はグラフィックデザイナーというカテゴリーもなく、ブックデザインという言葉もなかった。つまり本の装丁は図案家の仕事であったし、表紙のタイトルの文字なども活字書体で、活字の清刷りか、手書きのレタリング文字を使用したものである。
文字に関しては後年写植文字が登場し、また現代ではデジタルフォントが豊富に登場してきて豊かな表現が可能になった。加えてグラフィックデザイナーたちは、本を構成するあらゆる要素の文字組みやエディトリアルデザインの領域まで、本をクリエイトする範囲を切り開いた。
本の装丁に貢献したブックデザイナーたちを世代別に分類すると先駆者の第1世代、パイオニアたちの第2世代と続くが、本書は第1章「人物編」、第2章「雑誌編」、第3章「出版社編」に分類して代表的な作品を紹介している。
なかでも第1章の「人物編」は読みごたえがある。先駆者時代の亀倉雄策、河野鷹思、原弘など、パイオニア時代の杉浦康平、粟津潔、田中一光など、そしてイラストレーションの時代の久里洋二、真鍋博などの作品が解説されている。 とりわけ本書掲載のパイオニア時代の杉浦康平のコラム欄の内容は、現代のグラフィックデザイナーたちに大きな示唆を与える内容である。これだけ見ても、近代のブックデザインの歴史が分かるようである。 本書の「柱」と「丁付け(フォリオ)」のレイアウトは特徴があり、平凡なブックデザインの本が多い中でユニークさが目立っている。
(2006年11月6日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)