※本記事の内容は掲載当時のものです。
書評:『誤記ブリぞろぞろ―校正の常識・非常識
野村 保惠著
発行所 日本エディタースクール出版部 B6判 213ページ 1470円
印刷原稿がパソコンを使って作成されるようになってから久しいが,印刷物上の誤記や誤植は枚挙にいとまがない。つまり入稿データにミスが多いからだ。印刷物作成工程では,原稿入稿から最終成果物に至るまでの中間で「校正」というチェック工程があるから,誤記や誤植が表面に現われる率はそれほど目立っていない。しかしその校正作業での見逃しが,誤植として表面化するわけである。
チラシ印刷などで,商品価格を一桁間違えて印刷し,印刷所が損害賠償をした例は少なくない。「て・に・を・は」の間違い程度であれば許されるが,致命的なミスは命取りになる。「校正恐るべし」である。
一般に,パソコンで作成された原稿は編集者あるいは発注者をとおして印刷所に入稿される。原稿作成時の誤記・誤植の原因はいくつかあるが,その多くは著者やオペレータの同音異義語の入力ミスである。つまり「かな漢字変換」の誤変換である。
「校正」は出版社にとっては,また印刷所にとっても不可欠な作業である。「校正」に求められる要素は【1】字体の確認【2】組版ルールの確認【3】素読みの3つであると,著者は強調している。著者は出版関係での校正・校閲作業の経験・知識が豊富なベテランであるためすべてに含蓄がある。「引き合わせ校正」も重要であるが,素読みのできる人が求められる。
6章で,具体的な例として「パソコン・OCRの誤植例」を挙げている。本書を座右の銘として,著者,編集者,DTPオペレータなどはぜひ参考にされたい。執筆者は心して原稿作成をしないと,「ミス」は「ロス」につながることを肝に銘ずることである。
(2006年3月2日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)