※本記事の内容は掲載当時のものです。
書評:『印刷メディアの基本設計』
和田義徳著
発行所 日本印刷技術協会 B5判 84ページ 1600円
現代はパソコンを使って文章作成やレイアウト,デザインなどが容易にできるため,プロとアマの差は少なくなっている。著者は,「プロとアマ」の違いはなければならないという。しかし,プロのための必要な要素が欠けてはいないであろうか。
メディアは多様化しているが本書は,デザインとは情報を可視化するもので,抽象的なイメージやアイデアを具体的に存在あるものにする作業であるという。DTPはいまや印刷物制作のためのツールとして常識になった。そしてデジタル作業環境は,工程の境目がないシームレスな環境になっているのが特徴である。
副題に「企画デザインのセオリーを学ぶ」とあるように,単にDTPやデザインに関する解説書ではなく,カテゴリーを第1章から第7章に分け各セオリーを解説する。第3章「表現段階に必要となる基礎知識」,第5章「製造段階に必要な基礎知識」,第7章「実務で使いたい色彩の基礎知識」などが,「印刷メディアの基本設計」の中核部分として実用的な解説になっている。
印刷メディアの商業デザインや印刷物は企画方針に沿った制作行為で,企画意図やアイデア特性を理解した上で設計図を作らなければならない。つまり設計能力が問われる。
その時に必要なセオリーはいくつかあるが,特に第5章に「製造段階に必要な基礎知識」が上げられている。例えば,組版ルールはセオリーであって組版の基礎知識は不可欠である。しかし,単に組み方ルールの視点から捉えるのではなく,デザインという見地からレイアウト効果を考えるべきである。つまり効率良く使うべきであるということを示唆している。
(2005年10月3日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)