『図説中国印刷史』

掲載日:2014年8月18日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『図説中国印刷史』
米山 寅太郎著
発行所 汲古書院 四六判 283,11ページ 3675円 

 

本書は,大修館書店の月刊学術雑誌『しにか』に,平成4年4月から平成7年3月まで連載の「中国の印刷」をまとめて単行本化したものである。唐時代から清時代までの印刷史の特徴と各種版本の発展について,および明・清の活字印刷について解説されている。

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印刷術の起源は中国に発し,紙の発明とともに古代中国が世界の文化の発展に大きく貢献したものの一つである。本書は,第8章までが唐時代から清時代までの印刷史の特徴と各種版本の発展について,そして第9章では明・清の活字印刷についてそれぞれ述べられている。

特に宋代の出版は幅広い範囲に拡大していったことであるが,特筆すべきことは宋の慶歴年間(1041~48)に畢昇が活字による印刷術を発明したことである。これはグーテンベルグの活版印刷に先立つ400年前のことである。内容は各章ごとに節に分けられ,一貫性のある組み立てとなっており考証も行き届いた細大もらさぬ記述で,中国印刷術の発展を通覧できるようになっている。

特に印象深いのは,第1章第2節「唐代の印刷」における印刷術の起源について述べた部分である。中国では唐前期の印刷物はまだ発見されていないが,日本では770年に印刷された「百万塔陀羅尼経」が現存し中国現存の唐後期の印刷物よりも早い,と述べていることである。

総じて言えば,本書はこれまでの各方面の研究成果を踏まえた,現代日本の書誌学の水準を示す代表作であると言えよう

 

(2005年7月14日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)