『紙とコストCost:Value 』

掲載日:2014年8月18日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『紙とコストCost:Value 』
発行所 株式会社宣伝会議
宣伝会議編集 B5判 141ページ 2520円

 

一般に紙と言えば,まず本が目に浮かぶ。紙はわれわれの日常生活に欠くことができない存在である。普段は空気のように意識の外にありがちであるが,もし紙がなければ本もないし,紙幣もなく,鼻をかむこともできないほど必要不可欠な存在になっている。

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数十年前にOAが登場したころ,OA信奉者のコンピュータメーカーは,ペーパーレスの時代が来るとアピールしていたが,ところがどうであろうか。ペーパーレスどころか「ペーパーロス」と言われるほどオフィスに紙があふれている。

しかし,これはビジネス用紙のたぐいであって,本書は紙という素材のコストをバリューという視点から分析したものである。紙素材を活用し,訴求効果を生かしている商品を創出している企業を中心に,「なぜその紙なのか」という問いに答えたものである。そして紙の存在意義を作品別に,編集部推定により数値化を試みるという新しい企画である。

「モノ」の価値というものは,素材コストを抑え,効率の良い生産ばかりに支配されるものではない。このことはDTPや印刷物制作にも共通して言えることであろう。われわれは改めて紙に対する正しい認識を深めるために,第1章「紙を取りまく環境とその周辺」は,紙の利用者の立場として精読を薦めたい。

印刷産業は印刷という技法が生まれて以来,長年紙とは深い関係があり多大な恩恵をこうむっている。紙の印刷物の書籍や雑誌類だけではなく,包装材のパッケージ類など広範囲に貢献している。たとえ将来IT社会が発達しマルチメディアが普及しても,デジタル化の進展で紙の存在価値が薄れることはないであろう。

 

 

(2005年3月28日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)