※本記事の内容は掲載当時のものです。
書評:『パンフレットデザイン パンフレット制作基本マニュアル 』
発行所 グラフィック社
南雲治嘉著 B5判 127ページ 1890円
本書の内容には,パンフレットとは何かを改めて考えさせられるものがある。チラシとパンフレットが印刷物の広告メディアの代表であるが,メディアの変ぼうが著しい時にITが存在しない時代のままの手法で,パンフレットを作っても効果は薄い。
IT時代のデザインを「常用デザイン」と呼び,基本的な概念に「いつでも」「どこでも」「だれにでも」の3つの要素がある。そしてデザインの美的評価は客観的判断によるもので,数値や物差しでは計れないものである。
とかくパンフレットを制作する時には,ビジュアルのみに目がいく傾向にあるが,経営や販売戦略の延長線上にあることを認識するべきで,目的や用途からユーザに訴えるパンフレットは生まれてくるものと著者は言う。
本書の内容は1章~3章に分類され,4章の付録でまとめられているが,なかでも2章の「制作基礎技法」の中の「配色(効果的な配色)」の技法は,パンフレットだけではなく,すべてのグラフィックデザインに共通して参考になる。
また3章の「作品と分析(用途別)」では,良い作品は良い企業から生まれる,つまり企業姿勢の問題であるという。何のためにパンフレットを作るのか,を明確にする必要があると強調している。
優れたパンフレットには基本と戦略がある。豊富な優れたサンプルを目的別に分類して掲載し,だれでもパンフレット制作ができるよう,常用デザインの立場で解説したパンフレットデザインのマニュアルと言える。
(2005年3月26日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)