※本記事の内容は掲載当時のものです。
書評:『編集者の組版ルール基礎知識』
発行所 日本エディタースクール出版部
野村保惠著 A5判 184ページ 1890円
組版ルールと言うと堅苦しい感じを与えるが,可読性を高めるための慣習的な組み方を意味する。つまり読みやすく,誤読されないようにすることが第一義の目的である。
かつてある著名な編集長いわく,本の売れ行きは組版の良しあしで決まるわけではなく,内容が本の売れ行きを左右すると言ったことがある。これは真理であるが,組み方はどうでもよいという意味ではない。
パソコンの組版ソフトを使えば,だれでも文字組版ができるようになった。そのためDTPの普及により,組版品質は低下したと言われている。しかし組版ソフトのデフォルト値のままで,どうして標準レベルの組版ができないのであろうか。
つまり多くの組版ソフトのデフォルト値が,標準レベルとは言えないということである。従って組版ルールにはいくつかの選択肢があるわけで,正しい選択をするために組版知識が重要なカギになる。
本書は単なる組版ルールの解説書ではない。組版ルールには守らなければならない部分と,レベルに合わせて許すという部分があると言う。どのように組めば体裁が良いか,なぜこのように組むのか,などの理由を解説しているので理解しやすい。
日本語組版には縦組みと横組みがある。例えば音引きや拗促音には縦組み用と横組み用とがあり,その使い分けが必要である。そして約物が連続した場合の組み方がある。
本書には欧文組版のオックスフォード・ルールとシカゴ・ルールが解説されているが,一般の組版解説書としては数少ない例である。そして関連書に「本づくりの常識・非常識」があるが,併読を勧めたい。
(2004年6月24日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)