『印刷屋の若旦那コンピュータ奮闘記Part2』

掲載日:2014年8月20日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 
書評:『印刷屋の若旦那コンピュータ奮闘記Part2』
発行所 印刷学会出版部
中西秀彦著 B6判 183P 本体1200円(税別)

 

本書は,1999年に発刊された『印刷屋の若旦那コンピュータ奮闘記』の続編となるPart2である。「印刷雑誌」に1998年5月号~2001年12月号まで連載された,44回分のコラムを収録し単行本化したもので,Part1同様に分かりやすい用語解説とイラストが楽しい。

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Part1は1999年4月号のBook Reviewで取り上げたが,その時代は1995~1998年の間における自社の変動と印刷業界を観察したもので,いささか古いトピックスもあった。

今回の連載時期は,CTPやオンデマンド印刷,オンライン・ジャーナルといった,21世紀の印刷業を方向づけるような新技術の導入された時期にあたる。しかも印刷業界が不況のあおりを受けた社会的背景もある。

新しい読者のために改めて紹介すると,著者の中西印刷は120年以上の歴史をもつ著名な印刷会社である。Part1の時もそうであったが,印刷とコンピュータを巡る実際の状況が捉えられるようになっている。

いずれの章も興味深く一気に読み下せる内容であるが,なかでも「終点・CTP」「出発・CTP」や,「ITばあさんが行く」「DTPは印刷会社からなくなるか」などは,コンピュータから逃避しがちな印刷屋の経営者にとって示唆に富む内容であろう。

印刷業界の技術的問題や展望だけではなく,不況で暗くなっている業界の現状をユーモラスに明るく語り,印刷の将来に夢と希望をもたせながら印刷業界に警告を与えている。          澤田善彦

  

(2003年1月14日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)