※本記事の内容は掲載当時のものです。
書評:『真性活字中毒者読本』
発行所 柏書房
小宮山博史/府川充男/小池和夫著
「活字中毒」という言葉のイメージは読書家、濫読家などを思わせる。よく通勤電車のなかでも、旅先でも、また家の中でも手元に本がないと落ち着かないという人がいるが、これは強度の「本依存症」であろう。
はしがきにも書かれているように「活字中毒」をインターネットで検索すると、数えきれないくらいの「活字中毒……」「……活字中毒」が出現してくるのには驚いた。ここでいう活字の意味は活版印刷の金属活字ではなく、文字全般を表しているわけである。
この本依存症も活字中毒の現象に包含されるのかもしれないが、ここでいう「真性活字中毒者」の症状とは、活字書体そのものに中(あた)っている人達を意味している。活字といっても狭義の金属活字や木活字などにかぎらず、写植やデジタルフォントを含む広義の活字のことを指している。
本書は「日本語組版を考える会」の講演資料や座談会などの内容を、第1章から第7章にまとめているが、今日のDTP時代でも参考になるのが第1章「日本語組版の歴史」と第7章「印刷史研究と電子組版の往復運動」であろう。
そして第4章の「明朝体の歴史とデザインを考える」では、長年本文用書体に明朝体を使っているが「なぜ明朝体なのか」をあらためて考えさせられる。この著者のグループは「印刷史研究会」のメンバーであるが、いつもながら豊富な史料を基にした解説は楽しい。
(プリンターズサークル2002年1月号「Book Review」より) 澤田善彦
(2002年11月11日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)