ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造

掲載日:2014年8月21日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造

 

サカタインクス株式会社 取締役オフセット事業部長 三宅 悟氏に聞く

 

創業112周年を迎えるサカタインクスは、環境経営を最重要課題として、コア事業であるインキ製品では「地球に優しく、人に優しく、そして美しく」を製品開発の基本とし、環境配慮型製品を数多く揃え、さらに基盤技術を駆使した製品の研究開発を推進している。また、北米、ヨーロッパはもちろんのこと、中国、ベトナム、インドなど成長著しいアジア地域での生産拠点の拡充も図っている。
2007年6月にオフセット事業部長に就任した三宅悟氏に今後の事業展開などを伺った。

――環境対応に力を入れ、事業的にも伸びているのか。

三宅 当社は環境配慮を経営の重要課題の一つと認識し、早くから環境対応型インキの開発に着手している。オフセット分野では10年以上も前から大豆油インキを提供しており、今ではほぼすべてのオフセットインキを環境対応型インキで提供している。さらに、軟包装用インキもノントルエン化を進めており、さらなる環境対応型インキとしてのノントルエン・ノンMEKインキや水性インキも販売している。
もともと当社は新聞用インキが発祥の製品であり、フレキソインキは水性。ともに技術面でもリードしており、環境対応製品を早くから提供してきた。オフセット業界で、最近一番注目されているインキに水なしノンVOCインキがある。「水なし印刷」は、オフセット印刷で一番環境に優しい方式であり、多くの企業のCSR報告書や環境報告書などに採用されている。当社は業界初のノンVOCタイプを開発し、提供しており、IGAS2007では新製品「NEXT」も紹介している。
顧客も「環境経営」に関心が高く、最近では中国、インドも環境への意識が高まってきており、最新鋭の環境配慮型インキが求められている。

――フレキソやパッケージの環境対応はどうなのか。

三宅 「フレキソ印刷」は水性インキを使用しているので、環境には一番優しい印刷と言え、欧米ではかなり浸透している。ただ、日本では図柄やデザインなど、印刷物の仕上面に対するクライアントの要望が非常に厳しい面があり、やはり最終的にはどうしても現状はオフセット、グラビアが中心であるが、フレキソを推進している印刷会社も出てきている。
パッケージの場合、埼玉などの環境条例による規制が非常に厳しい。軟包装用では、まだまだ主流はグラビア印刷で、それに適合する設備投資が大きくなっている。インキや溶剤の回収装置など、インキメーカーとして、設備などの紹介・提供などで協力している。原油価格が高騰して、フィルムやインキの材料も随分上がって、ある程度価格に転嫁できないと成り立たなくなっている。

――デジタルプリントの市場も、アメリカなどに比べると日本は非常に伸びが遅い。

三宅 POD分野では、以前からXeikonを扱っていて、出荷台数もある程度伸びている。今はミドルエンドを印刷業界がどうやって取り込むかが注目され、市場規模は5年後には10倍と予想される。当社はハイエンドからミドルエンドまで手掛け、各地でのセミナーなどを開催し、欧米での成功事例などを紹介し、その普及に努めている。
印刷需要が全体的に落ちてくる中、印刷会社は生き残りを懸けて、デジタルプレスやニス加工など、新しいものに挑戦している。当社は、これらニーズを踏まえ、デジタル印刷においても、付加価値の高い印刷物を提案し、各地のセミナーでは、バリアブルの活用法などを中心に、デモンストレーションを交えて紹介している。IGAS2007での「Xeikon 6000」と中綴じ製本機「IBIS Smart Binder」のインライン接続による実演も、この一環として効率化を図る目的での提案である。

――新しいインキの評価を伺いたい。

三宅 急速に拡大したフリーペーパーは「新ジャンル印刷物」として位置付けられるまでになっているが、低級紙が多く使用されていて、印刷トラブルの原因となっている。そこで、フリーペーパー用輪転機用インキ「ウェブマスター エコピュアMEGA J Lite(メガ ジェイ ライト)」を2007年5月に発売した。低級紙とコート系用紙の共存印刷時の紙面品質向上とコストダウンを両立する点が評価されて、順調に伸びている。

また、当社は日本で初めて導入された枚葉8色機用インキを担当して以来、豊富な経験とノウハウをベースに、圧胴適性、水幅適性、セット乾燥性、耐摩擦性をさらに進化させた 「ダイヤトーンエコピュアSOY 8 SPEC J」を同時発売した。従来品「ダイヤトーンエコピュアSOY 8 SPEC」に、新しく樹脂分散技術(IMGM)を採用することで、両面多色枚葉機での印刷時の課題であった、印刷後オフ輪並みのインターバルでの出荷が要求される「高い生産性」と、片面枚葉機と同レベルの「高い紙面品質(表裏差、ベタ・網バランスなど)」を両立している。近年、導入台数が増え続ける8色機用の「基準インキ」と位置付けている。

―― 8色機は色の管理などが難しいし、反転すると計測誤差が生じたり、メーカーによって特性の違いもある。営業担当者が個々の顧客に合わせていくのか。

三宅 技術担当が立ち会って、印刷環境や仕事の種類も見ながら、インキを設定している。

――紙との相性も御社でテストしなければいけないのか。

三宅 顧客のニーズによりマッチしたインキを提供するため一環として行っているもので、紙質検査の試験室を設け、酸性・アルカリ性、通気性や浸油速度などを測っている。いろいろな輸入紙が入ってきているが、日本の紙と特性が違うので、紙の検査をしないとインキの設定ができない。

――広色域のインキも出されているが。

三宅 高彩度インキ「ダイヤトーンエコピュアWCS」は7色のプロセスインキの中から任意選択で、独自のオリジナルプロセスを作成できる。既存設備の中で、最大限に印刷品質を上げ、決まった色数、色相を固定せず、フレキシブルに対応できることが最大の特徴である。

――「IGAS2007」で特に好評だったものや話題になったものはあるのか。

三宅 PDFデータの修正・変更を可能にする製版ソフト「NEO(ネオ)」が非常に好評で、会場で要望のあった検証用としての評価版が200本程度出ている。 また、ベルギーのEskoArtwork社の開発したConcentric(同心円)網点を発表した。AMスクリーンの滑らかさとFMスクリーンのインキ皮膜を薄くする特性を併せ持った画期的な網点で、インキマイレージの向上やモアレの解消などを実現する。最大の特徴は印刷中にインキを盛り過ぎてもドットゲインの増加がほとんどなく安定した色調の印刷が得られることだ。現在検証中だが、結構面白いと思っている。
今後とも顧客の要望を最優先に、新しい製品・サービスを提供していきたい。

サカタインクス株式会社
大阪本社:大阪市西区江戸堀1-23-37 TEL 06-6447-5811
東京本社:東京都文京区後楽1-4-25 日教販ビル TEL 03-5689-6600

 

(2008年3月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)