顧客とともに栄える~印刷機材の総合商社

掲載日:2014年8月21日

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:顧客とともに栄える~印刷機材の総合商社

 

株式会社モトヤ 代表取締役 古門慶造氏に聞く

 

活字、組版メーカーとして創業85年の歴史をもつモトヤの三代目社長古門慶造氏に、同社の「昨日・今日・明日」を伺った。

――85年という長い歴史の中でエポックメーキングをお聞かせ下さい。

古門 もともとは印刷業を営んでおりましたが、3人兄弟のうち、2人が印刷業を継ぎ、私の祖父が「印刷のもとや」ということで活字の製造、印刷材料の販売を始めたのが「モトヤ」の始まりです。当時は姫路に拠点があり、戦争中は空襲の戦火から鋳造機を守るのに大変苦労しました。 戦後は1949年に株式会社に改め、本社を大阪に移し、第二の創業として出発しました。その後、経済の復興とともに全国主要都市に営業所や代理店を拡大していきました。 エポックな出会いとなったのが1963年の父親のアメリカ視察でした。IBMの工場見学をして大きなショックを受けてきたようです。『日本では活版全盛であるが、これからはコンピュータの時代だ』と父の頭の中はコンピュータ一色になったようです。でもコンピュータでどうやって印刷をすればいいのか…、それが後の電算植字(1969年)、とタイプレス(1970年)に発展することになりました。

――タイプレスはまさに時代を象徴するヒット商品ですね。

古門 活字を使わないコールドタイプシステムとして画期的な商品として迎えられました。タイプ印字を自動制御化して電動タイプレスEEを発売し、第3回発明大賞考案功労賞を受賞しました。この年(1978年)にワードプロセッサ(東芝JW-10)が発表されました。当初は価格面と品質面から賛否両論ありましたが、モトヤでは「これは敵ではない。どうやって使おうか」と開発に力を入れました。DTPの前進となる電子組版機「MT-5000」「WP-6000」の開発、誕生となりました。1984年に普通紙出力の「レーザー7」を発表しました。

――ハードを生かすにはソフト面の継承が重要ですね。

古門 ハードの自由度が高まればいろいろなことができますが、それをどう利用するかが難しくなってきます。タイプレスのころは活字組版をどう継承するかで自問自答しながら開発しました。ワープロからDTPとなりオープン化になったことで組版能力をもった機械(専用機)から自在性をもった安価なソフトで仕事がこなせるようになりました。つまり専用システムの時代ではないことから、メーカーから商社へと軸足を移動させました。そこで私たちは「お客様が一番困っていることは何だろう」と考えました。その一つが「人材派遣」でした。なぜかといいますと、印刷(プレス)の前工程(デザイン、組版、版下)はコンピュータの中で統合化され、印刷業界以外のところで制作されることが多くなりました。印刷業は刷るだけの下請けになってしまうのではないかと危機感を感じ、データ作りが他業界に流れないように教育をした人材を派遣をし、レベルを維持したいと考えたわけです。

――かなり大きな方向転換ということでしょうか。

古門 実は人材育成の歴史は古いんですよ。1970年にタイプレスという商品を出したわけですが、始めはオペレーターがいないわけです。そこでタイプレス学院という学校を作り、操作、組版ルールから印刷会社への受け入れ準備などを始めました。ワープロが登場し、DTPが普及しても組版のことを知る人は少なく、印刷業界内部での人材育成は難しいことから、機器開発と並行してオペレーター教育をずっとやってきた歴史があります。
ハードだけ売るのは簡単ですが、それだけでは魅力も夢もありません。お客さんが本当に使っていただけるものにするのが私たちのサービスであると思っております。新しいサービスのように見えますが、わが社の姿勢として以前からやっていることでもあるのです。「顧客とともに栄える」というのが社の理念です。それで85年ずっとやってきています。

――顧客とともに栄える、というもう一つの具体例がp-collaboでしょうか。

古門 そうです。だいぶ業界の中でもp-collaboの認知度が上がってきました。切っ掛けは1995年の阪神・淡路大震災です。印刷業界はどう復興すべきかを考えると、復興に向けて機械を買ってほしいけれど、一人で儲けようとか、そのために設備を全部自社で設置しようとか、そういう考えはやめましょう。互いに協力し合いましょう、下請け感覚はやめましょう、復興のために対等な立場で仕事の仲間作りをしましょう、ということを呼び掛け賛同をいただきました。それで「印刷作業のコラボレーション」という展示会がスタートしました。お客さん同士が新しい仕事仲間が増えた、今まで困っていた仕事ができるようになったと非常に喜んでいただいています。
「印刷作業のコラボレーション」のサポートサイトとして「p-collabo.com」を立ち上げて、ここに今現在で約400社の印刷会社に登録していただいています。31のカテゴリー(キーワード)に分けて、自社の強みの分野に登録しています。1社で3分野出せるようにしています。例えば、「会社案内/パンフレット」が得意、もしくは「大判の印刷」が得意というような分野カテゴリーが31あり、そこへ登録していただいて、そこから印刷会社が簡単に見つかるようになっています。自社の仕事に対して、身近なところあるいは逆にちょっと離れたところで仕事をやっていただける仲間を見つけるパートナー探しのサイトにしております。現在もう一段進めまして、一般企業からの問い合わせにお応えできるサイトにしたいと考え、お客さんのご要望を受け取り、自動的にメールを配信し、あとは直接やりとりができるようにしています。業界全部がしっかり儲かるような形にしていただきたいというのが一番の願いです。
私は1948年生まれですから団塊の世代の真っ只中です。団塊世代は、コンピュータ化されるプロセスを体験しており、昔の手作業とコンピュータ化の両方を知っている人間ですね。定年になった方々のノウハウを、業界のために生かしたいと考えて定年退職者の方々の派遣業務をやらせていただこうと考え「キャリア世代登録」を設けました。また最近始めたのは、生まれ故郷で仕事をしたい、そういう人には登録していただいたら定年までにお仕事を見つけますよ、というような「シニアUターン登録」も作りました。

――最後に文字というものをこれからのビジネスの中で、どういうふうに位置付けられてやっていかれるのでしょうか。

古門 ビジネスとしてはなかなか難しいですね。しかし、文字メーカーはとして、日本語というすばらしい財産をきちんと後世に継承していけるようにしたいと思います。どんなに電子化が進んでも、それぞれの国、民族の言語は文化であり、印刷物もパソコンでも携帯も全部日本語を使っていますからね。

株式会社モトヤ
東京本社:〒104-0032 東京都中央区八丁堀4-5-5
TEL 03-3523-8711 / FAX 03-3523-8712
大阪本社:〒542-0081 大阪市中央区南船場1-10-25
TEL 06-6261-1931 / FAX 06-6261-1930

 

 

(2007年6月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)