※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:さまざまな環境変化に対応し、DICグループのシナジー効果でユーザーニーズにこたえる
大日本インキ化学工業株式会社 インキ機材事業部 事業部長 住田和海氏に聞く
大日本インキ化学工業は、世界のリーディングポジションをもつ印刷インキ、有機顔料をコア事業とし、4事業部門により幅広く事業活動を展開している。今回は、ヒートセットオフ輪プロセスインキの新製品「ニューアドバン・プレミア」の開発背景を含め、世界最大手のインキメーカーとしての考えを、ユーザー企業の声などを紹介いただきながら伺った。
――新しいオフ輪インキを8月に発表されましたが、背景などをお聞かせください。
住田 8月に弊社のメイン製品「ニューアドバン」の後継新製品として、「ニューアドバン・プレミア」を上市しました。
このインキは、弊社と子会社であるサンケミカルのシナジー効果を最大限に発揮して開発しました。
インキというのは非常にローカルな製品です。これまでは例えば日本に通用するインキが欧米では通用しない、逆に欧米で通用するものが日本へもってきても通用しないというような環境にありました。弊社は世界シェア約30%を誇る世界最大手のインキメーカーであり、同時に世界シェア25%を占める顔料メーカーでもあります。ワールドワイドに通用する技術力・インキ製造力を有しております。DICグループの総合技術力によって、業界初のノンVOCインキ「ナチュラリス100」やハイブリッドインキ「ハイブライト」など革新的なインキを提供してきました。今回はシナジー効果を主力のスタンダードオフ輪インキに大きく採用しました。
――「ニューアドバン・プレミア」の特徴をお聞かせください。
住田 一言で言いますと、『オフ輪印刷の品質をワンランク上げるような紙面品質を実現しましょう』ということになります。
具体的に申し上げますと、スミで言えば漆黒性を大幅に高めることにより、非常に紙面にメリハリが出て、その印刷物を見たお客様に対してアピールができる。それから、カラーのインキに関しても、光沢をアップして紙面全体の品質を上げたことが一番のポイントです。
――確かにオフ輪も枚葉も、印刷物としては実際はあまり変わらないような使われ方をされてきていますね。
住田 オフ輪印刷の高級化は時代の流れだと思っています。当然、インキとしては、生産性の向上に寄与する・安定性に寄与する部分、そういう点についても以前の「ニューアドバン」よりもさらにワンランクアップしております。
――インキを設計する上で、苦労されている点や工夫された点などはございますか。
住田 私たちというより印刷会社が今最も苦労しているのは、いろいろな用紙が出てきているということです。品質のあまり良くない紙もあれば、輸入紙などもだいぶ入ってきて、紙の表面が相当変わってきました。これまではさまざまな用紙にインキを使い分けしなければなりませんでしたが、「ニューアドバン」の時から『一つのインキでかなり幅広い紙に対応しよう』ということを追い掛け、現在かなり幅広い用紙に対応できるようになりました。
――インキを替えるのはそれほど効率が悪いということでしょうか?
住田 用紙を替えたらインキも替えなければいけないということは印刷作業上、大変なロスになりますので、その点を解消することは大きな生産性向上につながると思います。
また、一つのインキですべての用紙に対応できれば、廃インキの削減にもつながりますので、環境面からのメリットも大きいと思います。
――環境への配慮についても積極的に対応されていますね。
住田 インキの環境保全策は石油系溶剤の削減が一つの方向性です。ノンVOC化はその先端になりますが、主力製品では大豆油インキ化を図りました。昨年秋に枚葉プロセスの「フュージョンG」に続き、この9月には中間色インキ「Fグロス」もリニューアルし、大豆油化を実現しました。これで弊社のほとんどの主力ブランドが大豆油インキとなりました。お客様には安心してご使用していただきたいと思っております。
――ユーザーから求められることで最近多いのはどのようなことでしょうか。
住田 具体的なところでは、FMスクリーンをやりたいという要望が多くなってきました。FMスクリーンでは非常に網点のサイズが小さく、小さい点を安定して打たなければならない。しかもオフ輪の高速回転の中でキッチリ微小点を印刷していかなければなりませんので、それを実現できる着肉性や印刷の安定性が高いインキの提供も重要なテーマとして取り組んでいます。FMスクリーンのほかにも、お客様からはさまざまな技術的な要求があります。そういったユーザー企業の多様なニーズにこたえて、これからもより質の高いインキ製品の提供を行っていきたいと考えております。
――最後に、印刷業界についてのご要望などをお聞かせください。
住田 常々思っているのですが、インキについての規格を決めて、その規格の中に入ったら承認していただく、そういう業界挙げての標準化を進めていくべきではないかと感じております。インキを標準化することによって、’どこででも、だれにでも質の良いインキを提供できるようになる’、これはムダを省けるという点から考えて非常に大きなコストダウンにつながると思います。一企業の力ではなかなか難しいことですが、業界団体などで標準化のために旗を振っていただければ、メーカー側もその方向に進んでいくのではないでしょうか。
ただし、標準化のみに目を向けていればよいというわけではありません。各インキメーカーでオリジナル製品の研究・開発・販売は必要ですし、それによってインキの質の向上、ひいては技術革新が進められるのも事実です。標準化されたインキと新しい革新的なインキが併存して、どちらを選ぶか、それはお客様のご判断です。われわれインキメーカーにとって最も重要なのは、あらゆるニーズにこたえられる体制を確保することではないでしょうか。
現在インキ原料事情は価格の高騰など非常に厳しい状況にあります。弊社としては値上げをお願いしたいところですが、弊社単独では実現できない状況です。一企業だけの努力でコストダウンをすることは、もう限界に来ているような気がします。そのような状況からも、標準化を行うことでのコストダウンを業界全体で真剣に考えていくべきではないでしょうか。
大日本インキ化学工業株式会社
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(2006年11月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)