※本記事の内容は掲載当時のものです。
アナログ博物館:アイデア印刷術 1.インクジェット印刷〔2〕
インクジェット印刷〔2〕
3. 各種インクジェット印刷
〔1〕一般用インクジェット
【概要】汎用型のインクジェットプリンタ。水溶性染料インキの使用が一般的で,用紙は各種専用紙が用意されている。
【利点】上述のとおり,コストパフォーマンスと可搬性から一般家庭では最も普及している。業務用としてもその特徴を生かした実例がある。
〔2〕高精細インクジェット(Giclee/ColorSpan社)
【概要】プリンタ本体内のドラムに用紙を巻き付ける安定した用紙搬送機構をもち,サーマル方式を採用している。インキは透明性,輝度の高い,高耐候染料系を使用し,8色印刷(Y,M,C,K,薄赤,薄藍,オレンジ,グリーン)で,1800dpi相当の高品質を実現している。
【利点】完全なフルデジタルを駆使し,複雑な表現技法の再現が容易で,水彩画の微妙なにじみ,油絵のタッチなどの微妙な表現が可能である。当然小ロット対応も可能で,現在,複製画の製造で最も多く利用されている。
▲ジークレ出力
〔3〕大型インクジェット
【概要】B0~A2サイズまでの出力が可能で,多くの機種がそろっている。産業用インクジェットの代表格で,印刷品質,生産性は年々進歩している。耐候性インキ,速乾性インキの登場で用途幅も広がり,さまざまな場所で目にすることができる。
【利点】大型ポスターを例に取ると,1~50枚の小ロットでは,オフセット印刷に比べ,コスト・納期・品質の面で有利になる。ラミネート,スタンド,バックライト式など,後加工と合わせて商品化の提案が有効。
〔4〕インクジェット捺染印刷
【概要】インクジェット捺染印刷は,生地,布へ,基準4色による色分解で,調子再現の印刷が可能なため,近年発展傾向にある。現時点では,生産性は低いものの,高付加価値商品,または小ロットでサイクルの早いアパレル系商品などでは,十分メリットを出ている。
【利点】オートスクリーン印刷の捺染方式との比較を表3にまとめた。
▲捺染
〔5〕平面式インクジェット印刷(EagleH/Inca)
【概要】平面にバキュームで固定された原反が往復運動し,定位置移動のヘッドで印刷するユニークな方式である。
【特徴】最大印刷サイズは2.4m×1.6mで,厚さ4cmまでの原反を設置することが可能。平面式のため,凹凸のある原反,曲げ適正のない原反にも対応でき,耐候性UVインキの採用により,屋外3年の耐久性も備えている。
▲Inca 平面式インクジェット印刷
〔6〕加工機インライン用インクジェット
【概要】DMを代表とする多形態加工機に設置されたインクジェット印刷。事前に,個々のパーソナルデータを情報加工し,印字データを作成する必要がある。印字速度,印字解像度,印字範囲などが重要な仕様となる。
【利点】オンデマンド印刷では,レーザ方式,電子写真方式などもあるが,印刷~加工までのインラインフィニッシュの分野では,設置が容易で,機能が単純なインクジェットが有利である。
▲DM加工機インライン用インクジェット
▲インクジェットプリンタによる製品サンプル
おわりに
インクジェット印刷は高品質・高生産性を追求し発展し続けており,上述の内容も数年で更新されていくことになるだろう。常に最新の動向をつかむことで,潜在的な需要を掘り起こすとことができると考える。特に,小ロット,パーソナルな分野は,裾野が広く,さまざまなソリューションが可能なので ,今回の講座が受注拡大のお役に立てれば幸いである。
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)