アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

掲載日:2014年9月18日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

 

眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

古くからある立体写真

2眼レンズ立体は1800年初頭に英国ブリュースターとホルムスが考案し,明治維新の時には2眼カメラが日本に入ってきた。1896~1903年の立体写真は,小学館より1994年に発刊された『立体写真集・NIPPON明治の日本を旅する』のほか,日本ステレオ写真の所蔵写真などがある。『立体写真集・NIPPON明治の日本を旅する』には、米国の立体写真販売会社「アンダーウッド&アンダーウッド社」から49点が抜粋されている。
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▲立体印刷を利用した本

1. 2眼レンズ立体

レンズで拡大して見るため,印刷技術として高精細印刷で網点が見えないよう,右の写真本は600線で印刷している。最近ではCG画像を視差角30~45度で出力後,製版するものも増加している。撮影の基本として,仕上がりサイズでの奥行き,一番前の飛び出しズレを±3mm以内にすると視距離30cmで見ることができる。マクロ撮影ではこれが難しいため,1台のカメラを固定しておき被写体を移動し撮影する方法もある。

●原理

下図のようにレンズの半分を使い見るものであり,レンズのプリズム効果で左右の2枚の絵を重ね合わせ,さらにレンズの丸味によりややボカすことで自然な合成をする。大事なことは人間の両眼平均間隔65mmよりも両眼レンズ間隔を広げて,レンズ中心とレンズ内側端の中央間距離を約65mmに設定する。さらに,レンズの焦点距離と大きくしたい印刷絵柄の寸法を計算してレンズ立体を作る。絵柄を大きくしたい場合は,レンズの焦点距離を長くレンズ径を大きく取る。
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2. 余色立体

赤と青の余色である2色のメガネで見ると立体的に見える。赤フィルムで見ると赤刷色は白く,画像が消えて青刷色が黒く見え,青フィルムで見ると青刷色は白く,画像が消え赤刷色が黒く見え左右が重なる。
・写真,CGは2角度からの2枚の写真が必要。
・イラストは印刷製版工程で左にずらすと奥行き画像,右にずらすと飛び出し画像となり,変形左右拡大すると斜め飛び出し画像ができる。入稿時には飛び出し順序をトレーシングペーパーに書き指定する。
 最近Macintoshコンピュータの普及で,従来の余色立体の赤青フィルムの画像に対する減衰量を4色画像に演算させることで,赤青フィルタで4色の2枚画像を重ね合わせて見ると4色再現できるようになった。
・印刷方式はオフセット,グラビア,シルク,インクジェットで可能。
・大きさは「カードサイズ」から「たれ幕サイズ」まで可能で,2眼レンズ立体より優れるが,フィルタを通さず肉眼で見ると見当ズレ印刷物に見えるのが欠点。ずらし量は雑誌±3mm,ポスター10~15mm。
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▲従来タイプ2色・赤青立体印刷
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▲新4色再現・4色刷立体印刷(プロセスインキ)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)