※本記事の内容は掲載当時のものです。
アナログ博物館:アイデア印刷術 5.五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」〔1〕
五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」〔1〕
特殊印刷の五感に訴える印刷の代表格,「香りの印刷」と「色の変わる印刷」について, 企画・応用面を重点的に解説する。
1. 香りの印刷
香りの印刷は,擦(こす)るまたは剥(は)がす,めくる触覚と嗅覚を刺激する。すなわち,そのような仕組みを仕掛けると,読者や消費者が注目して,商品を買うきっかけになるのだ。
〔1〕カプセルタイプの香料印刷
通常の印刷物の絵柄の上に,香料を含有するマイクロカプセルをブレンドしたインキで印刷。この印刷物を指先で軽く擦ると,カプセルが壊れ,香りがする。特殊な香料を除いて,通常の香料では3~5年間,保香できる(オフセットは保香が短い)。
印刷方法は,スクリーン印刷とオフセット印刷がある。スクリーン印刷に使われているマイクロカプセルの粒径20~50ミクロンに対し,オフセットの粒径は3ミクロン以下である。従って,香りを多く盛れるスクリーンは,広告や小ロット物に向き,オフセットは予算の少ない付録や,大量な物に向く。予算があればスクリーン印刷をお勧めする。
〔ポイント〕
・香りを有効に出すためには,香料面積は2cm2以上が望ましい。
・香料インキは,香料により色が変化し,下地の原稿が写真の場合は,印刷面はマット調になりやや曇ることがある。
・この企画を成功させるには,香りの良い香料を使うことが,最大のポイントである。
・2種類以上の香りを同一印刷面に印刷すると香りが混ざり合い,失敗することがある。
・香りが支給の場合は香油が必要。水に溶ける溶剤(アルコール)で希釈された香料は,カプセル化できないので,カプセル化の可否をチェックすること。
・昇華性の強い香りやガス類は香りが長持ちしない(1~3カ月程度)。
例 コーヒー,カレー,チョコレート,プロパンガス〔実施例〕
●「月刊Domani12月号(小学館)」香料印刷のしおりの場合
香油支給→マイクロカプセル化→インキ化→香料印刷→断裁・OP袋入れ→刷本に貼り付け(アタッチャー※で機械貼り)
(※アタッチャーはサンプルなどを機械で貼り込めるシステム)
●「消臭剤の香料印刷」サンプルカードの場合
従来は,サンプル入りの小瓶を作成し販促のため配布していたが,費用がかさむため香料印刷に切り替えた。
カモミールティーの香りとワインの香りになった。ワインは難しいとされていたが,カプセル化に成功した。
●「集英社文庫の帯花の香り印刷」の場合
集英社文庫25周年キャンペーンに花の香り印刷を採用。読者が帯を擦ると,さわやかな花の香りがする。
〔応用例〕
雑誌の付録,雑誌広告,香水・化粧品用カード,シール,ポストカード,パンフレット,便せんなど
〔2〕剥がすと香りの出る印刷物
香水などの香料を直径20~50ミクロンのマイクロカプセルに封じ込めたものをインキ化し,糊とブレンドしたものを,輪転印刷機に連動させたインライン加工機で大量に,かつ迅速に製造可能。
例えば,2つに折ってある印刷物を手で剥がすことにより,カプセルが開き香りが出る。
最近では,シート印刷後,前述のアタッチャーシステムで香り入り糊を付け,2つ折することができる。また小ロットであれば,香りの糊をスクリーン印刷し,手折りすれば製造できる。 〔応用例〕
雑誌広告,パンフレットなど
〔3〕自然芳香タイプ香料印刷
保香性をもつインキをスクリーン印刷したこともあるが,印刷時に強い臭いが出るため,住宅のある所では公害になり,現在はほとんど印刷されていない。
〔4〕香りのシール
シールを剥がすと,良い香りが出てくる。香料を透明フィルムに印刷し,ふちの糊も印刷する。両面に香りを遮断するフィルム状のシールを貼って片方が剥がせるようにしたもの。 〔応用例〕
雑誌広告,チラシ,グリーティングカードなど
※上記リストには特注品があるのでご注意ください
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)