日本アグフア・ゲバルト株式会社(東京都品川区大崎 松石浩行社長)は、同社のワイドフォーマット UVインクジェットプリンター「Anapurna 2050i」が平等院鳳凰堂の西面扉の新造復元事業に貢献したことを発表した。
今回復元されたのは鳳凰堂中堂の東西南北にある2 枚1組の観音扉のうち、古くから日常の出入り口として使用されていた西面扉の2枚。タテ2.5メートル、ヨコ1.2メートルで外装は全面朱漆塗が施され、内側に現存する最古の大和絵である「日想観図」が描かれており、この「日想観図」をアグフアのUV インクジェットプリンター「Anapurna 2050i(アナプルナ 2050i)」により扉となる木材にダイレクトに印刷した。
平等院鳳凰堂_壁扉画_01 |
平等院鳳凰堂_壁扉画_02 |
3年がかりで復元された扉は平等院の神居文彰住職が復元用の木材を探すところから始まり、樹齢400年の尾州ヒノキにたどり着いた。描かれている「日想観図」についても当時の色味・技法を可能な限り復元するために東京文化財研究所の専門家と共に膨大な調査を行った。本来であれば、肉筆による復元模写を鳳凰堂に納めるのが最善であるが、近年深刻化する環境変化における肉筆模写の劣化を危惧し、肉筆模写のデータを湿気や水、光に強く耐候性に優れるUVインクジェットプリンターで復元する方法に踏み切った。さらにインクジェット出力であれば現在もなお進行中の「日想観図」の調査研究で新たな発見があった際、技術の反映や再出力もできるという利点もある。
そして機種選定の中、色の再現性はもちろんの事、肉筆の表現方法や描き方、刷毛目までも忠実に再現でき、鳳凰堂に安置された後、国宝建造物である鳳凰堂及び堂内環境に悪影響を及ぼさない材料を使用するという観点から、高いカラーマネージメント力と非VOCで環境性能の良い自社製インクを使用しているアグフアのアナプルナ 2050iが選ばれた。
大和絵の色と風合いをインクジェットで出力にあたり、最初に日本画で使用される白の胡粉を重ね塗りし刷毛の効果を出し、調査により得られた創建時の色をカラーマネージメントで忠実に再現、インクジェット出力でありながら肉筆画に匹敵する仕上がりとなった。また、押縁(おしぶち)と呼ばれる扉の周囲を縁取る部分は側面に曲面があり、かつ、アナプルナ 2050iが印字できる高さ(5cm)を超えているなど課題があったが、アグフアが独自に開発した治具により斜めの状態で印刷することで、押縁の表面から側面の曲面まで均一な印刷を実現した。
最後に仕上げとして「日想観図」の(日輪・仏像)部分には金箔を貼付し、朱漆塗の外装部分と繋ぎ日本画技術と最新のデジタル印刷技術の融合により西扉の新造復元が完成した。
神居住職は「この扉の完成を見た瞬間、涙が止まらなかった。この扉には美と技と科学が揃っている。今回の復元は6、70年後に実施されるであろう次回修理の先例として評価されるであろう。」と述べている。新造復元された西扉は2015年12月6日まで平等院内のミュージアム鳳翔館で特別公開された後、鳳凰堂中の西扉として建て込まれ「国宝」の一部を成すこととなる。
お問い合わせ先:
日本アグフア・ゲバルト株式会社
グラフィック システム事業部
企画宣伝担当 和田 祐実子
電話:03(6420)2010 FAX:03(6420)2011
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