日本語組版とつきあう その58
約物とは
約物とは、句読点や括弧類などの文字組版で使用する記述記号のことである。ただし、約物という用語は、学術記号、商用記号やその他の●や■などの“しるし物”も含め、記号文字の総称としても使用されている。
約物の分類
約物にはどんなものがあるか、その性格の違いから種類を分けてみるとよい。例えば、JIS Z 8125(印刷用語―デジタル印刷)では、しるし物も含め、次のように分類している。
・記述記号
区切り符 中点(・)、疑問符(?)、感嘆符(!)、コロン(:)、セミコロン(;)、斜線(/)など
句読点 テン(、)、マル(。)、コンマ(,)、ピリオド(.)
括弧類 ()、〔〕、[]、{}、〈〉、《》、「」、『』、【】、‘’、“”など
・引用符 「」、‘’、“”など
・つなぎ符 ダッシュ(―)、ハイフン(‐)、リーダ(…)など
・しるし物
参照符 *、†、‡、¶、§など
学術記号 数学記号、生物学記号など
商用記号 通貨記号($、¢、£、¥等)、単位記号(℃、°、′、″、%等)など
その他 ※★●□など
これは、文章のなかでの使用目的による分類である。
組版処理面からの分類
これに対し組版処理の面からも分類できる。例えば、JIS X 4051(日本語文書の組版方法)では、約物について、次のように文字クラスとして分けている。なお、ここでいう文字クラスとは、文字の字幅や字間、さらに行頭・行末の配置についての禁則条件、2行にわたる文字間の分割可能性の有無による違いから文字をクラス分けしたものである。
・始め括弧類
・終わり括弧類(読点を含む)
・ハイフン類 -、~、=など
・区切り約物 ?、!など
・中点類 ・、:、;
・句点類 。、.
・分離禁止文字 ―、…、‥など
・前置省略記号 ¥、$など
・後置省略記号 °、′、″、%、‰、℃など
括弧類は、行頭・行末の配置についての禁則条件が異なるので、始め括弧類と終わり括弧類と別の文字クラスになっている。
なお、この規格ではぶら下げ組は処理の内容として含まれていないので、読点は終わり括弧類に含めている。ぶら下げ組を考えた場合は、その扱いは括弧類と読点では異なるので、別の文字クラスにする方法もある。また、括弧類では、パーレンや山括弧について、その前または後ろのアキをベタにする処理法もあるので、別の文字クラスにする考え方もある。
特別な約物
かぎ括弧については、書籍などの引用文などにおいて、かぎ括弧でくくる引用文そのもののなかにかぎ括弧を含んでいる場合がる。そこで、引用文をくくるかぎ括弧と引用文中のかぎ括弧を区別するために、縦組でいえば図1に示したように、かぎ括弧の横線を短くしたものを使用している例がある。これらは、“小(こ)かぎ”などとよばれている。また、%でも、ゼロの向きが斜めになったものもあり、約物には字形が異なったものもあるので注意が必要である。
いずれにしても、約物には、どんなものがあるかとともに、その使用法や組版処理の違いも心得ておくことが大切である。
(図1)