本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
環境先進国のドイツで最も長い歴史を誇る印刷機メーカーであるマンローランドは、近年「グリーン印刷」を提唱し環境に配慮した印刷テクノロジーの開発・普及にも力を入れている。宮城荘一郎社長に、同社の今後の展望について伺った。
マンローランド ジャパン株式会社
代表取締役社長 宮城荘一郎氏に聞く
――貴社は、お客様の要望に一つひとつこたえ、長く有効に使っていただける機械作りを行っているが、貴社の特色についてお聞きしたい。
宮城氏 マンローランド社は、MAN社とローランド社が中心となり、いろいろな会社を吸収しながら、1845年に創業されて現在に至っている。全世界で一番歴史の古い企業体であり、なおかつ母体がMAN社という重工業のメーカーなので、機械作りに対しては飽くなき追求をし続けて新たな技術を作っていくメーカーである。
印刷機は、枚葉機の菊4判からラージフォーマット、商業用輪転機、新聞用輪転機まで幅広く製造しており、オフセットという切り口で見ていくと、日本市場ではすべての印刷機を製造・販売・サービス・サポートしているメーカーは、ほぼマンローランド1社という状況ではないか。これらが一体となっているので、ダイレクトドライブ技術を枚葉機に採用できたりと、メリットも形として表せている。
マンローランド社では見込み生産を一切行わない。テーラーメイドの1台1台違う機械を送り出すというのがマンローランドの一番の長所で、それが成功していることを日本市場では一番実感できている。
常にお客様の要望に合わせた機械作りを行い、場合によっては設計まで行う。今後印刷会社にはますます独自性が求められる状況となり、5年後10年後を見据えたビジョン作りが必要になってくると思う。そういった明確な方向性を持った印刷会社に対しては、われわれは最も適した商品を生産・カスタマイズし提供していくことができる。それがマンローランド社の一つの精神であるし、一番大きな特徴であると思っている。
――具体的な動きについてお聞きしたい。
宮城氏 2008年度はドイツ本社決算で黒字となった。現在の経済状況を考えると、この結果は皆様にとってマンローランド社が安心できるパートナーであるというあかしだと思う。
ワールドワイドでの2008年度の動向としては、菊判以下の小さなサイズの機械は縮小傾向と考えるが、菊全以上、XXLと言われるラージフォーマットの市場は伸びているように思う。この傾向は中国市場に顕著に見ることができる。
日本での大きな動きとしては、国内だけではなくアジア第1号機となるダイレクトドライブ機を納品し、900XXLラージフォーマット機も複数台納品することができた。日本でのこの分野へのニーズは、今後ますます伸びていくと感じている。
――貴社は予防保全にも力を入れているが。
宮城氏 社長就任以来この1年半の間、特に注力をしてきたのはサービスである。印刷機販売におけるサポートは当然行っていくが、既存のお客様が現在稼働させている印刷機へのサポート、つまり今後も長い期間使用することが可能な状況を作り出すという、いわゆる“予防保全”にも力を入れている。
生産現場からの「突然の機械停止を削減したい」などの切実な声に対して、マンローランド社では『ProServ(プロサーブ)』という予防保全プログラムを提案している。オペレーターのスキルによるメンテナンス格差をなくし、機械ごとの個別点検による費用対効果を徹底吟味したプログラムとなっている。大きなメリットとしては、「いつ機械を止めて修理するかをお客様に決めていただける」「あらかじめ次に修理が必要な個所がわかるので、いきなり機械が停止するケースが目に見えて減少する」という2点である。
メンテナンスの履歴をしっかり管理することによって、「印刷機の状態はオペレーターに聞かないと何もわからない」という状況をなくし、オペレーター以外でも印刷機の状態を把握できることを目指している。
――「街の掛かり付け医」といったイメージと理解すればよいか?
宮城氏 そうである。履歴がカルテとなり、たとえ体(印刷機)に不具合が出ても、これまでどういった病気治療(故障修理)を行ってきたかを把握していれば、大病院で手術をしなければならないという状況になる前に手を打てるということになる。
機械を売りっぱなしということではなく、最後まで面倒を見る、ともに歩んでいくという考えである。これは信頼されるパートナーを目指す第1歩と考えている。
――予防保全への関心はどうか?
宮城氏 『ProServ(プロサーブ)』の取り組みはドイツ国内では5年前に、日本国内でも2年前に導入されているが、関心の高さを実感している。お陰様で契約ユーザーからも非常に高い評価を受け、契約社数は毎月確実に増加している。
――グリーンプリンティングについて伺いたい。
宮城氏 マンローランド社では『グリーンプリンティング』という表現をしているが、環境に配慮した印刷テクノロジーの開発・普及には1980年代からと、かなり早い時期から取り組み、さまざまなアワードも受賞している。
日本でもアルコールフリーと言われて久しいが、業界内ではまだまだ進んでいないというのが現状である。ドイツでは環境に対する取り組みは非常にシビアで規制も厳しく、アルコールフリー実現に近づいている。これら海外を中心に培われたノウハウを一つの切り口としてパッケージ化し、お客様に提案していこうと考えている。
また、関連したものとして水なし印刷への取り組みもある。マンローランド社では水なし用印刷機も製造しているので、環境配慮型手法として、今後製品提案を行っていこうと考えている。
印刷の消費資材削減、生産現場のエネルギー消費削減、VOCなどの汚染物質排出削減への取り組みを今後も積極的に行っていく。
――最後にメッセージを頂きたい。
宮城氏 良いものを作り成功している会社には理由があり、大きいのはやはりお客様の求めるニーズにいかにこたえられるかということだと思う。それにこたえることによって信頼が得られ、本音で相談し合えるパートナーとして認めてもらえると思う。
時代は動き変化していくので、それに合わせてマンローランド社も変わっていくのは当然と考える。ただ、そうであっても変えてよいものといけないものがあり、理念というものは変えてはいけないものと考える。
ニーズにこたえるためには当然技術力も重要だが、人材もとても重要だと考えている。単にニーズを引き出すだけでなく、その会社が考えるビジョン・理念を共有しともに歩んでいけるパートナーとして、業界へ貢献していきたいと考えている。
また、「テーラーメイドの機械を日本市場に供給する」「プリントバリューという印刷機以外のサービスを大事にしていく」という2つの柱に間違いがないことは確信しているので、今後より信頼に足り得るパートナーとしての地位を確立していきたいと考えている。
マンローランド ジャパン株式会社
〒335-0026 埼玉県戸田市新曽南3-1-23
営業部 TEL 048-447-9100 / FAX 048-447-9337
(『Jagat Info』2009年8月号に掲載)