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ミマキエンジニアリングは、サイングラフィック(SG)、インダストリアルプロダクト(IP)、テキスタイルアパレル(TA)、3つの市場で常に「新しさと違い」を提供し、グローバルな営業展開を目指している。今回は、IP市場の現状と同社の取り組みについて、JP事業部国内営業部/東京IPグループ・リーダー中村紀和氏に伺った。
株式会社ミマキエンジニアリング
JP事業部 国内営業部 東京IPグループ リーダー 中村紀和氏に聞く
――貴社の特徴についてお伺いしたい
中村氏 ミマキエンジニアリングは1975年8月設立の業務用のインクジェットプリンタやカッティングプロッタなどのメーカーである。規模は単体518名・連結752名(2009年3月31日現在)で、数多くの自社ブランド製品を開発・供給している。初期にはCAD製図機としてA2フラットベッドペンプロッタのOEM製品を開発、1985年には「北斎」の商標で自社ブランド製品の販売も開始している。
最初の飛躍のきっかけは、ペンプロッタのヘッド部にカッターを取り付けた切り文字が作成できる機種を自社開発し、早い時期からサイン&ディスプレイ市場に参入して国内市場の6~7割程度のシェアを勝ち取ったことである。その後は同市場に海外メーカーなどが参入してきたが、当社の強みであるワイドフォーマットインクジェットプリンタなどの開発力によって、サイン業界では上位のシェアを維持し続けており、2007年にジャスダック証券取引所へ上場もしている。
主力のサイングラフィックス(SG)分野では、高速・高画質のみならず次世代インクの開発で新たな市場を開拓。業界のイノベーターとして「新しさと違い」を提案し続けてきた開発スタイルは、インダストリアルプロダクト(IP)やテキスタイル・アパレル(TA)の分野にも生かされている。
――貴社では、インクジェットプリンタにLEDをいち早く採用されたようだが?
中村氏 最新機種のJFX-1631はフラットベッド方式で最大作図範囲は幅1602mm×送り方向3100mm、最大解像度1200×1200dpiのUVインクジェットプリンタである。大きな特徴はUVインクを硬化させるための光源にいち早くUV-LED方式を採用したことである。LEDは熱変形の原因となるUV照射時の発熱がほとんどないため、メタルハライドランプでは最高約80℃に達していたメディアの温度は、LED方式では常温に保てるようになった。これによりアクリルやスチレンボードなど熱の影響を受けやすいメディアにも高画質プリントを実現。さらに50mm厚の素材にも対応可能なので、いろいろなメディアに幅広くプリントすることが可能である。LEDは長寿命(約5000時間)であり、従来のメタルハライドランプ(寿命約1000時間)方式と比べて約3分の1の消費電力を実現できる。
JFX-1631には新開発ヘッドを8個搭載しており、従来比2倍の実用プリントスピードによって生産性が向上し短納期が可能になる。高精度・高画質を実現するために搭載した新開発の送り機構の採用によってインクの着弾精度が向上し、1200×1200dpiと7段階のバリアブルドットによる高画質のカラー再現、3ポイントの文字も判読可能になるなど、ワイドフォーマット機の常識を覆す高画質出力が可能になった。
――UVインク開発を自社にて行っているそうだが?
中村氏 現在メディアの材質に合わせた硬軟2種類のUVインクが用意されている。
軟質素材向けの柔軟UVインクは200%まで伸びる性能があり、ラッピングなど成型・曲げ加工をする場合に適している。カラー(4色)出力ではPOPの等身大パネルなど、またパッケージ用途では罫線を入れた時の割れを防ぐことが可能になる。カラー(4色)+白の出力では、メンブレンスイッチなどのエンボス加工品、クリアーパッケージなどの透明なメディアは白の下地を作ることにより、4色のみの場合に比べて写真本来の美しさを表現でき、小さな文字もくっきりと再現される。
硬質UVインクの特長はインクに硬度があり、耐摩擦性や耐薬品性にも優れており、光沢度も高いことである。カラー(4色)ではアルミ複合板や電飾フィルムなどへの印刷、またカラー(4色)+白は、ガラス、プラスチックなどの透明素材、各種銘板(金属・樹脂)などの用途に向いている。
――大判ポスターでのバリアブルプリントという動きもあるそうだが?
中村氏 ワイドフォーマット機の中でもUVインクモデルはインク乾燥の待ち時間がないので大判ポスター、POPディスプレイ用途など商業印刷の分野での用途になる。従って、印刷会社がオフセット印刷物とセットにしたワンストップサービスをビジネス開発する時のヒントになる。例えば、バリアブルデータ出力機能をポスターに利用して、デパートの店内ポスターを内容は同じでもフロアごとに色調を変えるなどのバリエーションが提案できる。また、厚さ50mmまでの厚物素材にも直接印刷できるので、大手印刷会社も大判デジタル印刷には非常に注目しており、従来の外注依存型から内製への移行が流れとなっている。
――小物プリントをオフセット印刷とセットで提案しているユーザーもいるとのことだが?
中村氏 当社のUJF-605CIIは、UV硬化インクジェットならではのオンデマンド性を生かし、印刷物の付随するノベルティなどを受注に合わせて生産でき、即日対応も可能な小サイズのインクジェット機である。
導入している出版印刷会社では、オフセット印刷の出版物と同時に掲載されているキャラクター関連商品のノベルティやCDケースなどをUJF-605CIIで作成することを提案して、ビジネスを拡大している。また、某プラスチック製プリペイド磁気カードの印刷もUJF-605CIIで印刷されている。
最大作図範囲は幅600mm×送り方向500mm、最大解像度1200×2400dpi、7色(C、M、Y、K、Lc、Lm、W)+クリア、最大メディアサイズは700×600mm、厚さ50mm以下となっている。
――今後の展開についてお聞きしたい
中村氏 ミマキエンジニアリングは、オンデマンドビジネスにおいて独自技術と自社ブランド製品を世界に供給する開発型企業を標ぼうしており、既に北米と欧州に営業拠点を整備、今はアジア圏への進出を視野に入れて中国に製造・販売子会社を設立しグローバル展開を進めている。今後はJFX-1631やUJF-605CIIといったUV硬化インクジェット機を中心に、海外・国内ともにIP市場シェアのさらなる拡大を図っていきたいと考えている。
株式会社ミマキエンジニアリング 東京支社
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(『Jagat Info』2009年9月号に掲載)