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商業印刷システムを始めとし新聞社向けトータルシステム、出版社システム、流通小売業向けシステムの開発を目的として設立された方正。同社の現状と今後の見通しについてお聞きした。
方正株式会社 代表取締役社長 管 祥紅氏に聞く
――貴社のこれまでの歩み、現状についてお聞きしたい
管氏 北大方正集団公司(以後、方正グループ)は、研究成果の産業化を目的として北京大学100%出資で1986年に設立された。その後、多くの関連会社・子会社を増やしていく中、1996年、東京・五反田に方正株式会社(以後、方正)が設立された。現在方正グループ全体での年間売上は約6300億円となっている。
方正グループの原点は、写植の時代にコンピュータ上でコミュニケーションに使えるデジタルの文字をいかに作るかというところからスタートした。研究を重ねるにつれ、非常に精度の高い「組版ソフト、RIP、ページ記述言語」などの技術が生まれ、当時の研究者が自ら製品化・販売したところ、これが爆発的に売れ、会社設立という動きとなった。
方正は設立して13年となるが、設立当初から「印刷」とは深い関係があり、特に新聞業界との結び付きは大きい。印刷・新聞関連製品の売上シェアは非常に大きく、組織体制としても人材の層が一番厚い分野である。近年、新聞業界では主流製品としての地位も固まりつつあり、出版社などの経営・資産・広告・編集・進行管理などのトータルシステムを請け負うことも多くなってきた。今後も印刷・新聞業界との結び付きは強くなっていくと考えている。
――貴社は管理関係のシステム事業も行っているが、今後も強化していくのか?
管氏 そのつもりである。当初からWindowsベースで事業展開を進めたが、印刷業界からは「なぜWindowsなのか?」とよく聞かれた。当時としては当然の疑問かもしれないが、一歩進んで紙以外のネットや通信への活用を考えると、コンテンツ内容の管理こそが大変重要だということになるはずであり、それにはWindowsベースでの事業展開が必要になってくると考えた。
印刷会社にとってはメリット・デメリットがあると思うが、クライアントのためと考えればやむを得ない部分もあるかと思う。最近は経営的な資材管理の重要性がようやく理解され始め、規模の大きい企業の案件も増えてきている。
――インターネットの普及による新聞業界の現状に対し、貴社はどのように考えている?
管氏 コンテンツ配信などのデジタル化の動きもあるが、従来の紙メディアの強みもあると思っている。私自身も毎日、新聞を3、4紙は読んでおり、深く読み直したり、意味をよく理解したい時には紙メディアは重宝する。ただ、一方では新しいチャネル、デバイスが多数出てきているのも事実であり、これらの活用も考えなければならないのではないか。方正は、新聞業界がスマートフォンなどの新しいデバイスへのコンテンツ配信ビジネスを展開するに当たって、コスト削減を行いつつ利益の出る戦略的提案を実現している。徐々に成功例も出始めてきている。
――JGAS2009で出品されていた製品についてお聞きしたい
管氏 「Pack#(パックシャープ)ver2.1」「トナー・セーブ(GCR)」をメインに出品した。
1. Pack# ver2.1
商業オフセット印刷から商品包装用途のグラビア・フレキソ印刷まで幅広く製版作業をサポートするソフトウエア。分版表示・検版、トンボ編集、トラッピング処理からプリフライトまで9つのAdobe Illustratorプラグインモジュールで構成。印刷業界のデファクト・スタンダードと言えるIllustratorのプラグインとして構築されていることのメリットは、入稿されたaiデータをそのままIllustrator上で製版作業を完結させられること、つまり、製版工程上で何か修正作業が発生したとしても、その情報をai形式のままクライアントやデザイナーに差し戻して共有することも可能となり、工程上の手戻りを激減させることが期待できる点。なお、今回発表されたPack# ver2.1では、CS3に続きCS4も正式対応している。初年度は100式の販売を予定している。
2. トナーセーブ(GCR:Gray Component Replacement)
CMYのインクをKに置き換えることでインクの総使用量を削減する技術。方正では、GCRによりCMYのインク量を減らし、K版で全体のトーンや画質を支えるための特別な技術を採用。これにより、直接的な原価低減効果だけでなく、乾燥時間の短縮による印刷機回転率の向上が可能。また、従来の網点化された1bit TIFFをアウトプットするのではなく、ソースPDFイン・GCR反映済みPDFアウトができる製品となっている。RIPのフロントに設置するだけで利用できるため、この分野で先行するCTPメーカー自身が製品にバンドルしているGCRに比較して圧倒的な低コストで導入することが可能となる。なお、GCR処理をしたPDFファイルを保存する仕組みは来春以降の発売予定となっている。
3. その他の出展製品
上述の注目2製品以外に、自動組版エンジン「FNP-X」や流通小売業向け機能を強化した「特売マネージャー ver5」などを展示した。
――最後にメッセージを頂きたい
管氏
印刷業界は、バリューチェーンの大きな流れを理解してクライアントと協力することが重要ではないか。少部数、少量多品種にも対応する必要があるならば、印刷業界自らがクライアントに対し、少部数で利益を出せる提案を行っていくべきだ。チラシ制作においても、マーチャンダイジングだけではなく、コンテンツ管理などのシステム化の提案・受注を行うべきである。これによるコスト削減は、クライアント・印刷会社双方にメリットが出るはずで、その実現のためのお手伝いを方正がさせていただく。クライアントに元気になってもらわなければ、仕事もなくなる。従来の考え方・やり方を守ろうとすると、新しい挑戦はできない。
もっと前向きに、変化をチャンスと捉え、付加価値の提供を実現して欲しいと考えている。
方正株式会社
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