ECにおける最新のCRM、成功事例の研究[PAGE C3報告]
掲載日: 2009年02月25日
PAGE2009 デジタルメディアトラックC3「ECにおける最新のCRM、成功事例の研究」報告
2009年2月5日(木)のPAGE2009 デジタルメディアトラックC3「
ECにおける最新のCRM、成功事例の研究 」では、顧客と企業を結ぶCRM活動の取り組み事例を紐解き、成功する要素を探った。講師は
株式会社キャラアニ 田村明史氏、
ケンコーコム株式会社 原田直美氏、
株式会社ECナビ 青柳智士氏。
はじめにモデレータの田村氏より、この講演のイントロダクション。AIDMAを例に、各社ECサイトのCRMについて概要などの説明がされた。
続いて原田氏より、「ケンコーコム流、CGM活用に踏み出したCRM」と題したプレゼン。ケンコーコムは94年設立。健康食品、医薬品、化粧品などの健康関連商品を約11万点以上揃えており、モバイルコマースや楽天・ヤフー!などへの出店もしている。売上もEC開始以来、堅調に伸びている。
プロダクトライフサイクルについての分析では、一般的なものとは異なるのではないかと説明。商品露出の初期段階(品薄であったり情報希少であったり)と、棚落ち段階(従来店舗で入手困難)にこそ需要が発生するという。このライフサイクルに合わせた情報供給と顧客サービスが必要なのであると語った。
そもそも、健康食品や健康関連商品の販促における問題点として2つあるとした。第1に「効果・効能表記につながる表現の制限」であり、含有成分についての情報を、消費者にわかりやすく訴えることが非常に難しいことと、どのようなときにどのタイミングでどれくらい摂取するのがお勧めなのかを伝えにくいということ。第2に「同じ成分、同じ商品でも、使用者によって個人差が大きい」ことであり、商品の説明が難しい上に、その期待できる効果は個人によって様々であること。結果的に汎用的な商品情報のみとなり、消費者に商品の良さを伝えるのが困難となっていると語った。
それらの対策として、ケンコーコムは「メディア事業によるメーカー発信型情報の充実化」と「CGM活用による消費者発信型情報の充実化」をはかった。まずメディア事業としては、商品情報の充実と商品露出増加を狙った広告事業を展開。PRから成分を知るきっかけを創出し、情報共有への導線を形成した。
そしてCGM活用については、まず情報ブログポータル「
ケンブロ 」をリリース。これはブログのトラックバック機能により投稿された、健康・美容に関するクチコミ情報が集約されたポータルサイト。ブロガー・アフィリエイターとコマースを繋ぐことにより、広がりのある情報提供を強化した。そして2008年8月には、健康関連情報のクチコミサイト「
ケンコミ 」をスタート。商品レビューをスタートにコマースと一般消費者とを繋ぎ、新しい健康関連ビジネスの下地づくりをはかった。本体サイトでは商品情報にてわかるのは含有成分のみであるが、そこからクチコミ情報への橋渡しを行うことで、消費者発信の情報を供給する。
原田氏によれば、これらのサービスは企画から構築、サービスインまで内製でまかなうのが基本なのだという。常に顧客視点を突き詰めることでうまれるサービスと、リリース後も顧客との対話により改善がうまれ、そして良い相乗効果となっていくことを語った。
次に「ECナビの考える、これからのCRM」と題して、青柳氏のプレゼン。
ECナビは99年設立。関連会社に「
Buzzurl 」「
adingo 」「
リサーチパネル 」「
Pex 」などがあり、売上はやはり順調。ECナビを中心に、広告収益、リサーチ収益、交換手数料収益、アフィリエイト収益からなるグループ構成となっている。柱となるECナビの特徴点は、「パソコン・家電・ファッションなど様々なカテゴリから優良オンラインショップ約36,000店舗、実に約1,900万アイテムの中から商品を探すことができること」「ポイントを導入していること」「プレゼントやサンプルの情報が充実していること」などが挙げられる。女性の利用ユーザが多いのも特徴である。
Yahoo! Web of the year 2007 によれば、mixiに次いで2位を獲得している(昨年4位)。要因として他サイトとの連携や貯めやすいポイントシステムとしている。
ECナビでは「
SHOP OF THE YEAR 」を行っており、ここから見るECナビユーザから支持されるショップの条件を分析した。はじめにアイテムについて。商品ラインナップが豊富であること、オンリーワン商品があること(オンライン限定など)などを説明。次に顧客対応面。配送や返品に関する説明の仕方、またWeb上のユーザビリティなどを挙げ、顧客視点のサイト構築の重要性を語った。他にも、クーポンやポイントを導入していること、そして情報の鮮度(週替わりセールなど)も重要であるとした。いずれも実践し続けていくことの難しさがあり、そこを達成してこそのSHOP OF THE YEARなのであろうと説明。
ECナビは、消費者行動プロセスにおけるサポートを心がけており、AISCEAS(Attention、Interest、Search、Comparison、Examination、Action、Share)のそれぞれの段階で、消費者が必要とする情報・機能に対してECナビがサービスを提供できているとした。
プレゼンの合間には、モデレータとのスピーカー間での意見交換も行われた。顧客満足度向上のためには、特に奇をてらった戦略があるわけでもなく、やはり根本的には顧客視点でのサービスを展開していくことに尽きるが、そこを継続することの難しさ、常に顧客に向き合うことの難しさがあるということ。(さらには社内の関連部署を動かす熱意も)
終了予定時間をオーバーする、熱気に満ちたディスカッションとなった。