2009年はどうなる? 音楽も変わる!メディア産業も変わる![PAGE C4報告]
掲載日: 2009年03月02日
PAGE2009 デジタルメディアトラックC4「2009年はどうなる? 音楽も変わる!メディア産業も変わる!」報告
2009年2月6日(金)のPAGE2009 デジタルメディアトラックC4「
2009年はどうなる? 音楽も変わる!メディア産業も変わる!」では、オンラインメディアの急成長によりメディア産業が大きな転換期を迎えているなか、すべての価値観が変わる2009年の方向性を展望した。講師は有限会社清水メディア戦略研究所代表取締役 清水計宏氏、マイスペース株式会社CEO 大蘿淳司氏、ヤマハ株式会社開発戦略室技師 杉井清久氏。
最初に、モデレータの清水氏から今回のセミナーについて解説。オンラインメディアの急成長により、商品・サービスの販売・マーケティング手法からコンテンツの制作・流通方法に至るまで大きく様変わりしている。すべての価値観が変革し、いま大きな転換点にあることを強調。
それはあらゆるものが繋がりあい、新しい価値を生み出していること、時間や距離といったものから解き放たれていることであり、例えば電気自動車により何が変わるかというと、あれは一種のデバイスであり、位置情報・駆動状況などがネットワーク化され、巨大な情報システムに化けるのだという。
あらゆるメディアはデジタル化される。モバイルデバイスは成熟化し、ノートPC、ポータブルミュージックプレーヤー、携帯電話、携帯ゲーム機、スマートフォン、カーナビなど個人の価値を基準に組み替わっていく。それまで個々に占有するものが共有される方向へ向かい、高品質化・複合機能といったデバイスの進化で消費するだけではない、参加型のメディアが発展。観たり、聴いたり、読んだり、プレイするだけではなく、共有し、発見し、体験し、学びあうといった、進化するコンテンツ。あらゆるものにコンピュータとメディアの特性が組み込まれるという。
Wii Fitの登場により、気がつけば任天堂が最大の体重計メーカーになった。Wiiが登場したときに、体重計を作っている各社はそんなことを想像もしなかったことだろう。デバイスとネットワークとの組み合わせ効果などから、まったく予想もしない他の領域からメディアが変革するといったことは、今後どんどん起こってくるとした。
続いて大蘿氏によるプレゼンテーション。
MySpace は世界で2億人のユーザを誇る、世界最大のソーシャルメディア。新たな才能・面白さ・楽しさが次々と生まれる「創造の場」を目指すことが事業ビジョンであると説明。戦略として3点挙げ、第1に「流すインターネットから創るインターネットへ」として、アーティストやクリエイターを支援し、新たな才能やコンテンツが生まれる機会を提供。自分を売り込むための使いやすい機能群、販売や配信のスキームを提供している。第2に「分散型コンテンツ流通促進」として、エンタメ系コンテンツの流通を促進。バイラル型のコンテンツプロモーションに向いたメディア活用を狙う。第3に「参加自由・新たなコンテンツ形態」としてのプラットフォームの開放。第三者によるMySpaceネットワークの活用など、新たな収益源になるとしている。
実際に、自分の楽曲を登録している人々がライブの告知をMySpace上で行うと明らかに集客に差が出る例なども紹介。SNSというメディアの特性もあるが、自分をプロモーションすることが結果に繋がりやすい可能性を秘めているとした。音楽業界も大きく変革し、誰もがアーティストであり成功の仕方も多様化している。メディアも変わり、人々の行動形態まで変えるとした。個々がもつメディアの力が影響していくとした。
そして「音・音楽と創造の行方 ~革命の中のモノづくりとマーケティング~」と題して、杉井氏のプレゼンテーション。
まず現在進行中の革命として、産業革命よりも大きな革命である「消費→創造」について。農業以前はヒトは「食べる歓び(生きることそのものの歓び)」が価値観の中心であり、農業発明以後は「溜める歓び」に変わり、「消費の歓び」に変わっていった。そして現在はその最終章にあたり、ヒトの価値観は「消費→創造」へ大きく変化。「創造的消費」というステージにあるという。これまではほんの一握りのクリエイターが創造するものを、大多数の消費者が消費していた。メディアの変革により、誰もが創造者側へ行けるようになり、4人に1人がネットで情報発信する時代にまで到達。創造のための投資が不要となり、宣伝するのにもお金がかからなくなっている。経済構造が変わらざるをえない状況になっており、コアな人材同士が繋がるコアな経済化が進んでいくとした。
次に
TENORI-ON 開発のバックグラウンドに触れた。音楽の聴き方にも変遷があり、以前はアーティスト基準で音楽を聴いていたのに対して、その後ジャンル基準に変わり、やがてはアーティストもジャンルもmixして聴く「シャッフル」という聴き方が登場する。「音楽中毒者」という言葉を用い、新しい音楽体験をしたいがために新しいCDを買ったり借りたりするといった、彼らの新しい価値観について述べた。TENORI-ONのマーケティングの中で、この「音楽中毒者」の存在がクローズアップ。新しい音楽体験を求める層をターゲティングした「聴く楽器」というコンセプトが生まれる。「聴く楽器」は既存のミュージシャンではない、新しいクリエイターを生んだのだとした。
最後に杉井氏によるTENORI-ONのデモンストレーションも行われた。
音楽という切り口でメディアの変革を取りあげたセミナーとなったが、デバイスの進化とネットワーク化によるインフラ要素、タギングによる繋がり、そして個人の創造による個人のメディア化、UGC。など現在進行形の大転換について考察された内容となり、セミナー終了後も活発に意見交換が行われていた。