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株式会社メディアテクノロジ―ジャパンにて、PODを活用した出版ソリューションについての勉強会が開催された。
海外では、オンデマンド出版が広く浸透している。米国では、ブックオンデマンドソリューションの一つとして、
ライトニングソース社(米国出版流通大手、INGRAM CONTENT Group の印刷子会社)の事例がある。
ライトニングソース社では、出版社からのオーダーによって、高速のインクジェットPODを10数台稼働させ、オンデマンドの印刷・製本を行っている。出版流通グループとして物流を担っており、出版社から見ると、入稿からデリバリーまでのワンストップサービスとなっている。
アマゾンの書籍サイトや図書館からの注文があると、オンデマンド対応で24時間以内に出荷しており、年間で5000万冊(2012年実績)となっている。また、平均印刷製本部数は、1.8部とのことである。
国内の一部では、個人向けのフォトアルバム・サービスやブログ製本サービスなどブックオンデマンドソリューションが提供され始めた。
出版向けでは、三省堂書店本店で出版社からデータが提供されている一部の書籍(品切れ本)について、オンデマンドの印刷・製本による販売を実現している。
しかし実際の出版流通では、米国ライトニングソースの様なオンデマンド出版も、少部数出版も本格化してはいない。
国内の出版流通は、永年にわたって大手取次の複雑な仕組みに依存してきた経緯があり、流通在庫の過剰化や返本率の増大などの問題を引き起こしている。
少部数出版は、このような問題に対する解決策の1つとしても有効と考えられる。しかし、それを実現するには生産面の問題に加えて上記のような流通面の問題を克服する必要がある。
一部では、出版倉庫会社(特定の出版社関連ではなくてオープンな倉庫業)が、トナー式デジタル印刷機を導入して簡易製本を行い、少部数出版を実現しようとする動きが始まっている。
また、大手出版社がコミックや新書の在庫切れを解消するために、デジタル印刷・製本ラインを自社で導入した例も出てきた。
多くの出版社が、欠品の解消や流通在庫の減少、納品リードタイムの短縮などを少部数出版で実現しようと望んでいるのではないか。
オンデマンド出版を実現するための手段として、下記の図にある出版スキームが考えられる。
出版の適正化(在庫レス)、出版流通の効率化を目的とし、出版社・制作・印刷・製本・ロジスティックスの連携を上手く取らなければならない。リードタイムを短くし、デジタル印刷機の効果を引き出す仕組みを構築していかなければならないだろう。