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印刷および印刷機材で世界最大の展示会drupa2012(国際総合印刷・メディア機材展)が、5月3日~5月16日までの14日間、ドイツのデュッセルドルフメッセで行われた。
いつものように1号館~17号館までをフルに使っての展示会であり、出展者数は1844社(前回は1911社)を集めたが、参加
者数は31万4500人(同39万1000人)と前回のdrupa2008と比べると激減した。展示面積も最大面積で開催された前回には及ばないものの、
こちらの方は微減にとどまった。
drupa2012にも印刷業界の不況風(ユーロ危機)が吹いているのが正直なところだが、世界4大印刷展示会随一のポジ ションは微動だにしない。
さて今回のハイライト、事前の触れ込みでは「B2サイズ枚葉デジタル印刷機の揃い踏み」と言われていたのだが、前回のdrupa2008で参考出品された富士フイルムの「Jet Press 720」や大日本スクリーンの「Truepress Jet SX」が実用機として展示されていたのはもちろんで、両者共にパッケージ対応の機種やオプションを新しく用意したりして実用時代をアピールしていた。
今回新しく登場したB2枚葉機はHP(ヒューレットパッカード) 「HP Indigo 10000 Digital Press」で、シリーズ化して登場している。2438dpiで最大7色印刷、最大印刷スピードは毎時3450シートとなっている。
一般的な商業印刷やPhotoアルバム用の両面機が「HP Indigo 10000 Digital Press」、連帳タイプの軟包装・ラベル向けが「HP Indigo 20000 Digital Press」、片面・厚紙対応した機種を「HP Indigo 30000 Digital Press」として展示されていた。
その他デジタル機メーカーとアナログ印刷機メーカーのコラボレーションが今回の目玉と言える。小森コーポレーションとコニカミノルタによるUVインクジェットは、コモリの給紙・紙送り機構にインクジェット部分をコニカミノルタが提供というコラボレーションで1200dpiで毎時3300枚の印刷能力を誇っている。両社でdrupa展示を行っているのだが、コニカミノルタは「KM-1」という商品名で、コモリは「Impremia IS29」と呼んでいるが、ボディの色以外は同じものである。
また、ミヤコシが液体トナー方式のデジタル印刷機開発を行っているのは有名だが、給紙・搬送系にリョービの機構を使い共同開発として「MD-Press 30NX-8000」を参考展示していた。1200dpiで毎時6000~10000枚の印刷能力があるという。
この他にもたくさん新製品が発表されていたが、今回のdrupaを一言で表現するのは思いのほか難しい。JAGAT内でも随分悩んだのだが「All Digital drupa」というのがよいのではないか、という結論に達している。
今回のdrupa2012でハッキリしたと言えることが幾つかある。どうも近未来の印刷技術の選択肢からオフ輪は脱落しているようであり、その代わりに登場したのがVLF(Very Large Format)という提案であり、近未来への一つの解になっている。
具体的にはVLFに納期やロット、紙、色数の近いものを面付けしてコストを落とそうというものだ。面付けといってもいわゆるギャンギングという異種面付けを30~40点付け合わせるのだから、小ロットになってもデジタル印刷に引けを取らないコスト優位性が出てくるわけである。現時点ではデジタル印刷以上の効率的な仕事ができるかもしれない。しかし、これが成り立つ条件として、デジタルの力で入稿から面付け・断裁をオールデジタルにする必要があるというのがdrupa2012に付けた「All Digital drupa」という理由である。
例えば、ハイデルベルグブースでは派手な印刷機のデモに混じって華やかさこそなかったものの、プリネクトブース(簡単に言えばプリプレス)でWeb to Printソリューションで仕事を集め、オートギャンギング機能で面付け、断裁データをJDFで吐き出して自動断裁するフローを懇切丁寧に説明していた。
極端な例ではトンボなしでも運用可能ということである。これならトンボ分付け合わせ点数を増やせるということである。
どこの会社も似たようなことは大なり小なり持っているが、ハイデルベルグのようにデジタル印刷機の開発にお金と労力を費やした一つの解としてVLFという提案は理屈を超えた説得力を感じる。
こんなワークフローがあってこそのギャンギングということで、「All Digital drupa 2012」と改めて呼びたい。
次のdrupa2016まではVLFソリューションが声高らかに謳われるのは間違いないが、それから先はデジタル印刷 vs. VLFが問われてくるのも間違いないだろう。
それでは今回のdrupa2012で挙げられる特徴を箇条書きにする。
<drupa2012の特徴>
1 動いているオフ輪が1台もなかった
2 デジタル印刷機(ロールtoロール)は普及段階に入った
3 B2デジタル印刷機が一斉に登場
4 電子写真方式で液体現像方式(液体トナー)が復活か??
5 オフセットメーカーとデジタルメーカーのコラボレーション
6 日本発の低エネルギーUV乾燥オフセットが普及
7 ポストプレスは花盛り。オフセットやデジタル何でもござれ。しかし…
8 抜き型不要。ラベルや箱をカット。多品種小ロット対応
9 ワークフローはWeb to Printとギャンギング。究極にVLFソリューション
10 スポットライトはナノインキのベニー・ランダ氏に集中
Indigoの生みの親、ベニー・ランダ氏がナノインキを引っ提げてdrupaに帰ってきた。話題性だと他の何よりも目立ってしまったのが正直なところだろう。1ミクロンのインキ皮膜圧が当たり前として考えてきた印刷の世界に「0.5ミクロンで印刷した方が良いんだ」というアンチテーゼは、真偽のほどは抜きにしてとても新鮮であった。
(文責:研究調査部長 郡司 秀明)
(JAGAT Info 2012年6月号より転載)