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この本は今年のdrupaで、オセ(Oce)のブースで手にした。2年前の本だったらしいが私は不勉強で読んだことがなかった。ホテルに帰ってペラペラめくっていると、これは内容のいい本だと思った。
その後、JAGAT大会でこれをご紹介したのである。
重複になるが、この本のタイトルがなぜ「未来を破壊をする」というのか。それが最初の何ページかに書いてあるので、ホテルで読んだときのことを思い出しながら、お二人の話のイントロダクションとしてお話ししたい。
原題は、「ちょっと考えてください」と書いてある。アメリカのコマーシャルプリンティングというものがその国の経済と歩調を合わせて密接な関係を持って動いていると言われてきた。
2009年、アメリカの印刷業界は88ビリオン、880億ドルの出荷高、これはGDPの0.6%に当たる。しかしながら2000年におけるGDPとの関係というものがもし維持されているならば、この数字は149ビリオン、1490億ドルになるはずであった、というのである。
93年から2009年のGDPは52%伸びたが、GDPと印刷の関係が、93年当時の関係が損なわれていなかったとしたら、この産業の出荷高は176ビリオン、1760億ドル、倍になっていただろうというわけである。次のページに棒グラフがあるが、左が93年、真ん中が2000年、右が2009年。2009年は880億ドルで、1760億ドルがこんなふうに変わった。これだけのものが失われた。880億ドルが失われたというのである。非常に困って、ダウンサイジングしたり倒産したり、印刷業者もサプライヤーも合併統合したり、印刷の力はどうなってしまったのかと言っている。
続いて、皆さんは知っていましたか、と色々なメディアの歴史について語られている。
印刷が1450年にヨーロッパで発明されたとき、ヨーロッパの人口は5000万人にくらいだったといわれているが、読み書きできた人は1%くらいで50万人だった。
それから100年経って読み書きができるliteracy rateは50%くらいになった。しかし、人口は7000万人だった。この計算でいけば、7000万人の半分の3500万人の人が100年かかってようやく印刷物を読めるようになったのである。
このことが意味しているのは、印刷物を読んだりするユーザーが5000万人という数字になるには100年以上かかっているのである。
それに反して、ラジオの場合は38年、TVの場合は13年、インターネットの場合は4年、iPodの場合は3年。ユーザーが5000万人になるにはそのような年数である。Facebookが1億人のユーザーになるためには9ヶ月もかかっていないし、iPhoneのアプリケーションが10億本ダウンロードされるのも9ヶ月。アメリカの有名なコメディアンのtwitterのフォロワーがアイルランドやノルウェーやパナマの人口よりも多くなってしまっている。
過去というものはテクノロジーとイノベーションによって、産業の未来がどのように破壊されてきたかの物語である。我々はテクノロジーとイノベーションによって我々の未来をどのように破壊しなければならないのか。これは一種のメタファーの表現であるが、要はどうやってデジタルメディアを使ったり、接していかなくてはいけないのか。
この本はそのためのファーストステップになるであろうと書いてある。それがこの本のタイトルの意味合いである。
日本の印刷業がGDPに占める比率は91年で1.9%、2009年は1.18%、約1.2%。アメリカは0.6といっているので、シェアからいえば日本の方が多いかも知れない。
2012年8月27日T&G研究会「徹底討論!『未来を破壊する』とは何か」より(文責編集)