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株式会社コトブキ企画 営業部 松井 啓悟 氏
コトブキ企画は1953年に創業し、DTPデザインから印刷業務全般を主業務としている。
2000年より本格的にインターネット分野に進出し、Webサイト構築や紙とWebの連携サービスを提供している。
最近、印刷業界の中で話題の本がある。それは『未来を破壊する』という本で、「厳しい印刷市場の進路を示す新しい常識」というサブタイトルが付いている。この中には重要な市場の変化を示すポイントが書かれている。そこからいくつか引用し、なぜ我々がWebファーストに取り組まなければならないのかを話したい。
インターネットが普及する以前のマーケティングにおける予算配分は、印刷物とテレビやラジオなどのブロードキャスティングのどちらかで予算を配分していた。これが2000年くらいまでの企業とメディアとの関係である。当然、印刷会社としても、印刷と競合する他メディアの存在はあまり意識していなかった。
それに対して、インターネット普及後のマーケティングにおける予算分配は、印刷、オンラインゲーム、マスメディア、SNS、Web、検索エンジン広告、モバイルコンテンツ、YouTubeというように情報を配信するチャネルが増えている。
昨今、「企業の広告予算削減で印刷需要は減少の一途をたどっている」と嘆く人がたくさんいる。予算が削られているのは間違いないが、大元の予算が減っているのではなく、印刷にかける配分が変わったことが一番大きな理由と考えられる。
印刷ビジネスに関わる企業としては、この配分の中で、より多くの分野に携わることができなければ、当然ビジネスとして縮小せざるを得ないという状況になっている。
また、『未来を破壊する』という本の中には、「印刷会社はコミュニケーションプロバイダーになることが必要だ」と書かれている。皆さんは、もしテレビ局が生き残るために大型印刷機を入れたということを聞いたら、どう思うだろうか。「知識も経験もないくせに印刷業務に進出しても、まず失敗するだろう」と思われるだろう。
同じように、我々も安易に印刷がだめだからWebマーケティング、Webコンサル、経営コンサル、ブランディング提案までというのは、なかなか急にはできない。印刷物にどのような効果があるかということは日頃考えていても、その先までを研究して他メディアへの進出ということを考えている印刷企業は少ないのが現状である。
私も、例えば「こんな印刷物を作れば問い合わせが増えますよ」という提案はできても、「こんな戦略でどう動けば儲かりますよ」というような提案は全くできない。であれば、我々はどうすればいいのか。印刷会社の強みを生かした横展開、印刷と他媒体との連携業務の拡張をいかに行うかが肝要になってくる。
「My PAGE View」は、カタログ・パンフレット・マニュアルなどの印刷物を、パソコンで本をめくるような感覚で見ることができるデジタルブックで、デジタルならではの多くの機能を搭載している。
PDFを元データとして、最小3ステップでデジタルコンテンツの作成を行うことができる。できたコンテンツは、パソコン用のFlashデータと、iPhone、iPad、Android端末といったスマートデバイス用のHTML5のデータになる。
デジタルブックを表示したユーザーが読む場合はページめくりを行う。ページめくりは フッターメニューの中央にある。ボタンを押して、ページをめくって、細かい文字を読むときは紙面上で拡大クリックをする。拡大倍率は2倍、4倍、8倍の3段階に対応している。
そのまま紙面をドラッグすると紙面の移動ができるし、拡大時には右上部に、今どこが表示されているのかを表わすミニマップが表示されるので、こちらをドラッグしても紙面の移動が行える。
全文検索機能は、登録するときのPDFから文字情報を自動で検出して検索機能の対象とすることができる。
今表示しているのはバイク雑誌なので、「ヤマハ」と入れて検索してみる。そうすると、「ヤマハ」という文字が何ページ目に何件含まれているかをリストアップして、表の中の「ページに移動」ボタンを押すと該当のページを表示して「ヤマハ」という文字が含まれているテキストボックス部分を赤くハイライトすることができる。
紙のカタログや本を読んでいる人は、気になるページに付箋紙を貼ったり、メモ書きを残す場合がある。それを実現したのが、付箋とメモ機能である。付箋を貼る場合には、「付箋」ボタンを押して紙面上をクリックすると付箋紙が表示される。この状態で位置や大きさを入れ替えて、もちろん中にはテキストも打ち込むことができる。「メモ」ボタンを押すとメモ用のパレットが立ち上がるので、書き込むペンの種類や色、太さや濃度を選び、例えばこの紙面の商品画像をマーキングするのであれば、ドラッグすると簡単にメモ書きを残すことができる。
また、デジタルデータならではの動画の埋め込みにも対応している。紙面上に動画を埋め込めるので、静的なコンテンツも動的なファイルとして一般ユーザーに読んでもらうことができる。他にも、SNSのツイッターと連携したり、「シェア」ボタンを押してフェイスブックのウォールで情報を共有するということもできる。
「My PAGE View」は2003年の開発・販売からちょうど10年目を迎える。当初の目的は、クライアントからの、Webサイトでのカタログ請求コストを抑えることと、サイト制作費用の削減ということであった。当然デジタルブックは紙がありきで、その後にWebでの告知が必要なシーンから発生していた。まさに印刷ありきの、印刷ファーストの時代のデジタルブックである。
その中でも、印刷物の2次利用という観点から、ワンソースでデジタルとDTPのコンテンツ生成を両立し、校正やデータチェックを不要とすることを、「My PAGE View」は当時重視していた。一般のユーザーの認識としても、この時代はまだWebサイトよりも実際の紙のカタログのほうが情報も多くてわかりやすいものだという認識もあり、Webは資料請求の窓口に過ぎないという時代である。
したがって、この時代のデジタルブックに求められたことは、より紙に近いデジタルブックであること、そしてワンソースマルチユースであることである。ただし、この時代のワンソースマルチユースというのは、Webと紙で2回校正しなくてもいいというくらいの意味でしかなかった。あくまでWebカタログはコストダウンが目的であり、Webサイトを見慣れないユーザーに対して紙という見慣れたインターフェースに近いもので情報提供を行うというツールになっていた。
ところが近年、急速にタブレット、モバイルが普及し、企業としての重要度はWebファーストへ急速に意識がシフトしている。いまやデジタルカタログは、印刷物の副産物ではあるが、できたデジタルコンテンツ、及びそれと連携するものでどのような効果が出せるかが重視されている。それにより、動画、音声や画像認識、GPSというクロスメディア要素を含んだ機能をデジタルブックが持つ必要性が高まってきている。
「My PAGE View」は、現在advanced crossmedia digitalbookと銘打ち、より高度にデジタルブックに付加価値や連携機能を与えている。発売から10年たっても時代に取り残されず進化し続けているデジタルブックは、「My PAGE View」だけだと思う。多機能、ワンソースマルチデバイス、マーケティング、GPS、SNSと、しっかりと最近取沙汰されているキーワードを取り込んで開発を行っている。
中でもWebファーストの観点から重視される機能をいくつか紹介したい。まず1つ目は「My PAGE Viewアクセスレポート」という、ログ解析を行う「My PAGE View」専用のツールである。
アクセスレポートで「My PAGE View」のログ情報を解析すると、実際の紙面拡大位置とか、ユーザーがデジタルブックを表示してどんな検索キーワードで検索しているのかというランキング、またどんなページのPVが高いのかというランキング、いわゆるデジタルブックを読んでいるユーザーの行動を把握することができる。
また、拡大倍率の解析というのが、他のデジタルブックではない大きな特徴機能になる。他社のアクセス解析の機能だと、アクセスの多い場所は解析できるが、実際ユーザーは紙面のどこをクリックしてどこに興味を持って紙面を読んだのかという情報の解析まではなかなかできない。拡大倍率ごとに解析することによって、紙面を通して2倍、4倍の拡大が付いているデジタルブックの中で、数ページだけやたら8倍の拡大が集まっているという場合がある。
例えば、商品のカタログで8倍の拡大が付いているところの売上が上がっているというのは当然だと思うが、売上が上がっていないのに8倍の拡大が異常に集まっている場合がある。その場合は何かしら紙面上のデザイン構成に問題があるとか、いろいろな原因が考えられる。「My PAGE View」は拡大倍率の調査までできるので、単なるデジタルブックの解析にとどまらず、次の印刷物の提案に生かすことができるようになっている。
2つ目は「My PAGE View」オプションの書棚ツール、フロントシステムである。フロントシステムでは、作った「My PAGE View」のデータを取り込み、専用の書棚を作ることができる。複数のデジタルブックをカテゴリー分けして表示したり、横断検索機能として複数のデジタルブックを串刺し検索することができる。
また、フロントシステム自体にログイン機能も搭載しているので、会員制のカタログ公開サイトを簡単に作成することができる。最近ではオウンドメディアマーケティングという言葉が流行っているが、これは自社サイトでの自社会員ユーザーに向けての情報公開をしっかり行えるかどうかというものである。
今までだとポータルサイトが流行っていたが、あるサイトに行くといろいろな企業のパンフレットが出ていて、そこから好きなものを選ぶ。そうすると、いくらユーザーに見てもらいたい情報を掲載しても、いろいろな情報の中に埋もれてしまってなかなか見てもらえないという状況が生まれていた。
そこで、このオウンドメディアマーケティングというのは、企業がブランドを自ら所有するメディアになり、多様化するWebマーケティングにおいて企業に今最も求められているのは「ユーザーとの最適なコミュニケーションを通じ関係を構築すること」という形で、いろいろな企業が取り組んでいる。
3つ目は、ワンソースマルチデバイス機能である。「My PAGE View」では一度のデータ作成でWindowsやMAC等のパソコン以外にもiPhone、AndroidやタブレットPCなど、幅広い閲覧環境に対応することが可能である。
先ほどワンソースマルチユースという言葉を紹介したが、大きな違いは、Webを見る際の多様性に対応し、スマホ、タブレット、PCと、複数の環境で簡単に見られるように最適化されている点である。
近年、「My PAGE View」は顧客の要望に合わせて急激にスマートフォン、タブレットの対応を進めている。その理由の1つが、このグラフにあるタブレットへのニーズの高まりである。このグラフは2010年から2016年のタブレット出荷台数の予想値である。2010年では全体で129万台というのがタブレットの出荷台数であった。それが2016年の予想値は実に10倍以上の1,510万台となっている。
また、先日、日経新聞の記事にもあったが、来年、WindowsXPのサポートが終了する。それを機に、いろいろな企業が、もちろん一番近いOSのWindows7に乗り換えることも考えらえるが、多くの企業が注目しているのはタブレット導入によるWindows8への切り替えである。
また、参考値だが、2013年、今年の企業の新入社員のうち、実に72.5%がスマートフォンを持っている。新社会人の76.9%は社会人の社会生活においてスマートフォンは必要であるというふうに考えている。
これはどういうことを表わすかというと、今後、スマートフォンやタブレットPCが当たり前のように身近に存在する世代が確実に増えてくる。スマートフォン、タブレット両方がなくてはならないツールになるのが、この調査結果からも見て取れる。
タブレットを企業内でどのように使いたいのかという、利用要望のリストがある。一番多いのが、従業員のモチベーション上昇で、52.6%である。コトブキ企画に問い合わせがある企業でも、メーカーの営業の人が300ページ以上ある総合カタログを毎回持ち歩くのはつらくて仕方がないという話がある。それをデジタルブックにしてその情報をタブレットPCに入れて持ち運べるようになれば、営業の人の重い荷物を運ぶ労力を軽減できるという形になる。
他にもいくつか挙げているが、重要なのは青字の部分である。営業用のプレゼンテーション端末として活用することによる売上拡大。外出先でのWord/Excel/PowerPoint/PDF、いわゆる企業内の資料確認を簡単にタブレットPCで行うことによる業務効率化。3つ目は、我々印刷業界には頭が痛いが、ペーパーレス化によるコスト削減。
4つ目が、店頭販促、デジタルサイネージキットとして活用することによる販促効果。これは、iPadが発売された当初、服飾の販売店などでiPadを置いて、上半身と下半身の服をフリップで入れ替えることによって、その場でいろいろなイメージをお客さんに持っていただくというふうに使われていた。
5つ目は独自アプリケーション開発・導入による業務効率化。最後に、動画機能を利用したEラーニング実施である。ブック上に動画を埋め込むことによって、文字だけでは表現できない情報を伝えるということが、ここで大きな目的になると思う。
実際、皆さんが何か製品を買って組み立てるとき、取扱説明書だけではちょっとわかりにくいということがあると思う。そのときに、デジタルブックだと、よくお客さんが悩む箇所に作り方の動画を埋め込んでおくと、よりわかりやすいコンテンツを作成することができる。
幾つかの項目を挙げたが、実は、企業の多くはタブレットを導入した後、希望する利用用途を生かせていないのが実情である。コトブキ企画に問い合わせをいただく企業の中にも、「タブレットを各営業に4,000台配布したが、それをうまく活用できていないという社内アンケートが上がってきた。何とかできないか」という相談がかなりの数ある。したがって、タブレットの要望は増えてきているが、それに対する効果的なツールを提案する機会はまだまだたくさんある。
「My PAGE View」では、HTML5とアプリ形式両方に対応している。これは営業ツールとしてタブレットに情報を入れて持ち歩きたいというニーズと、一般のお客さんに、タブレットでオンライン上で気軽に、アプリを入れずにブラウザベースでカタログを見てほしいという、2つのニーズに対応した形になる。
「My PAGE View」では両方に対応しているので、企業の要望にも簡単にこたえることができる。他社の製品の中には、HTML5のデータだけだったり、スマートデバイスで見るときアプリを使うことが前提となっている製品が多数あるが、この両方の機能を兼ね備えている製品はなかなか多くないというのが実情である。
企業の意識は確実にWebファーストへ向かっている。企業の要望は、印刷物のデータを使って低コストで効果のある自社Webコンテンツを作りたいというものである。それに対して、我々を含めて、印刷会社の感覚というのは、デジタルブックは印刷物のコストダウンのオマケでやるものというふうに思っているところがかなりある。印刷物と別のコスト感で提案しないと、顧客との温度差はなかなか埋まらない。
この円グラフは、「My PAGE View」にお問い合わせいただいた企業の業種内訳である。実に70%の企業がエンドクライアントの一般企業であるか、システム会社、ホームページ制作会社である。
多くの企業が、デジタルブックのようなデジタル媒体の取り扱いにおいて、我々印刷会社を窓口として認識していないというのが実情である。これはまさにプリントパッシング、印刷会社飛ばしという状況が生まれようとしている。デジタルブックの採用には、いかにクライアントとの温度差を埋めてWebファーストの発想ができるかが必要になる。
企業がWebファーストへと意識を向けたとき、大きな障壁となるのが、告知認識の手段である。いくら立派なWebコンテンツを作っても、そこへ一般ユーザーを誘導できなければどんな立派なコンテンツも無駄になってしまう。
しかし、『未来を破壊する』という本では、2010年代の販促ツールではプッシュ型のWeb広告自体が消滅している、と指摘している。プッシュ型というのは、いわゆるWebプロモーション、メールマガジンを配布したり検索エンジンでキーワードに引っかかるような検索ワード対策、オフラインであれば屋外広告、ダイレクトメールを送ったり、POPを付けたり、テレビ広告を打ったりというもので2013年はまだ生き残っているが、あと7年かけて消滅するのではないかと、この本には記載されている。
例えば、コトブキ企画では法人e名刺という、Web to Printの名刺印刷サービスを展開している。法人e名刺というキーワードでグーグル等の検索広告を出すには、ワンクリック500円以上かかる。法人e名刺では、一番安い価格帯のものは980円で、100枚1,000円くらいの商品なので、1箱1,000円の名刺を販売するために500円というかなり割高な広告を行っている。
さらに、ときによっては1回の問い合わせを獲得するのに2万円かかったり、3万円以上かかることもある。現実的な費用対効果としては非常に厳しくなってきているというのが、このプッシュ型の広告である。
そうは言っても、プッシュ型の広告を現状では行わないわけにはいかない。それではどのようにしてプッシュ型の広告をしていけばいいのか。我々は、そういったところにこそ印刷物の出番は待っていると考えている。現実に、インターネットで検索を行うきっかけの実に44%がオフラインの媒体で、印刷物である。
ただし、従来の印刷物では、残念ながらそのニーズにこたえることは難しいと思う。そのために、こういった印刷物とWebを連動させる何かが必要になってくる。そこで我々が注目して商品開発を行ったのが、画像認識サービスである。
画像認識サービスは、スマートフォンで画像を撮影してWebコンテンツにつなげるというサービスである。画像認識のいいところは、QRコードとかARの四角いコードなどは一切必要とせず、印刷物に載っている画像自体を認識していろいろなWebコンテンツに紐付けることができる。
一般的なAR技術は、画像を認識して、その結果をもとに拡張したコンテンツを表示するものが多い。例えば、ディズニーランドに行ってミッキーマウスのイラストを撮影すると、その場でミッキーマウスが動き出していろいろな動画が見えたり、数年前には、箱根のローソンの前に行って、山に向けて写真撮影すると、その場でエヴァンゲリオンが表示されるというものがあった。これもARの技術である。「スピードウェブ」の画像認識も、そういったAR技術の一部である。
また、企業のARに対する注目度は年々高まってきている。グラフの一番左、2009年時点の市場は200億円規模だったが、昨年の2012年には770億円規模になっている。この伸び率でどんどん伸びていくと、再来年の2015年には1,800億円規模の市場になると予測されている。
かなりの急激な伸びでARの市場は伸びている。このバックグラウンドにあるのは、スマートフォン、タブレットPCの急速な普及が密接に関係している。
ここで、改めて画像認識に取り組む理由を整理したい。まず、インターネットの普及により、印刷物のニーズにも大きな変化が出てきた。今までのように情報配信するよりも、いろいろな付加価値の情報をWeb上につなげて表示したいということである。もちろん、一般ユーザーが求める情報入手方法は、最初の検索のステップが紙の媒体であっても、さらなる情報はネットから仕入れることが大多数になっている。
それに反して、一般企業が求める情報配信は、実はユーザーが知らないもの、求めていないものが多い。新商品とか売りたいものというのが、その最たるものだと思う。新商品は当然ユーザーは知らない。
最近で有名なものだと、カルビーがベジップスという新商材を2012年から発売している。それも売りたい商品だが、なかなか告知の方法がないということで、最初は近畿地方の数店舗のコンビニエンスストアから拡販を開始し、徐々に四苦八苦して売れていったという背景がある。
次に、Webサイトでの商品告知は効果の薄いバナーや高額な検索連動広告に限られている。そういった場合にも、一般ユーザーは未知の価値には気づきにくいという状態である。そこで注意・関心を得るためには、見るのに特別な装置を必要とせず、ユーザーが検索行動を取らなくても情報をユーザーに与える、そういった印刷物が必要になる。
さらに、印刷物から動画・インターネットへ誘導する画像認識を活用して、紙とネットをつなぐことにより、ネットでは難しい新商品の認知向上を行い、かつ、顧客の望むネットコンテンツへ直接誘導することが可能になる。
「スピードウェブ」というアプリはAppStore、グーグルプレイ上で無償で配布しているので、誰でも検索してインストールすることができる。
まずタップして立ち上げると、一番最初は「スピードウェブとは」という、アプリの説明のページが表示される。使うときは右上の「使ってみる」というボタンをタップする。そうすると、「IDの入力」という画面に切り替わる。このIDというのは、「今から撮影するのは何という会社のサービスである」、「何という媒体で提供されている画像を認識する」という、一般的な区分けになる。
ここで「IDを直接入力する」というボタンを押すと、ここではテキストによってIDを入力する形になる。「tokn」と入れると、コトブキ企画のサンプルで登録しているID、体験というサービスが立ち上がる。この状態で「設定」をタップすると、「かざしてください」という、認識画面の一歩手前の画面になる。
ここでID入力の必要性について簡単に説明しておきたい。画像認識システムというのは、1つのシステムをたくさんの企業で利用することが想定されるサービスである。
その場合に、起こり得る問題が3つある。
1つは、よく似た競合企業のロゴや商品で誤認識を起こしてしまうこと。また、同一ブランド企業のロゴ・写真で、印刷会社同士が同じ画像をアップしたいのにアップできないというバッティング。3つ目は、登録画像がどんどん増えてくると、意図しない画像で画像認識が発生してしまうという、この3つが挙げられる。
この問題は、我々開発メーカーにしてみれば想定されたものだが、実際にトラブルが起こった際、導入された印刷会社としてはクライアントに簡単には言い訳できないものとなる。これを防ぐために、「スピードウェブ」では、一番最初にユーザーにIDを入力してもらっている。
それでは、実際の画像認識の画面を見ていただきたい。「かざしてください」というところの下のカメラボタンを押すと、カメラの認識モードに切り替わる。これは私の名刺だが、ロゴを登録しているので、かざしてピントが合った段階でサーバに画像を送信する。そうすると、サーバ側で送られてきた画像に対してマッチングを行う。適合したコンテンツがあれば、このようにリストを返してくれる。これが画像認識の流れである。
通常、他の画像認識やARシステムでは、1つのマーカーに対して表示できるのが1種類というものが多い。このようにいろいろなコンテンツを表示できるというのが、「スピードウェブ」の大きな特徴になっている。1つの企業ロゴを、このようにマッチング操作を行った際に、ホームページ、その会社への道案内とか、動画であれば会社の代表者の新年のあいさつを流したり、いろいろな使い方ができるようになっている。
ここに表示できるコンテンツのデータフォーマットは、8種類のデータコンテンツになり、最大で20個までリストアップすることができる。
「スピードウェブ」では、このリストで表示する一次コンテンツ、例えば動画サンプルとあるのが一次コンテンツになるが、この動画を表示しておいて、興味を持った人はさらに詳細な情報が載っているWebサイトに情報するという、画面で「Go to Web」ボタンを押すとさらに詳細な情報を表示するWebサイトへ誘導することもできる。
地図の表示では、コトブキ企画の東京営業所は虎の門にあるが、虎の門の地図を表示したり、左下の「カメラナビ」を押すと画面の上部がカメラモードに切り替わる。これはARモードになっていて、建物の近くに来たとき、同じようなビルがたくさん並んでいても、その建物がどちらにあるのか、かざすだけで表示してくれる。
右下の「経路案内」というボタンを押すと、今GPSでJAGATの位置を取っているので、ここから虎の門までの経路案内をしてユーザーを誘導することもできる。こういった画像認識プラスアルファで、スマートフォン特有のGPSなどと連動させることができるのが、「スピードウェブ」の大きな特徴である。
まず、1つ目は商品パッケージである。商品を購入した後、マニュアルとか取扱説明書がいつの間にかなくなっていることが多いと思う。そんなマニュアルを「スピードウェブ」で、パッケージの中に入る折込の画像に登録すると、ユーザーはいつでもそれをスマートフォンでかざすだけで目的の取扱説明書を手に入れることができる。
認識した後、二次コンテンツへ結び付けることもできるので、取扱説明書を表示した後、さらに詳細なWeb動画を表示したり、表示した結果からWebサイトにひもづけて、より詳細なWebコンテンツを見たりすることができる。パッケージの中の少ない面積でもより多くの情報配信をすることが可能になる。
2つ目は旅行案内や観光案内のパンフレットである。紙面にスマートフォンをかざすと、観光案内の動画が見えたり、有名飲食店の料理動画などをユーザーに閲覧させることが可能である。
また、少し変わった使い方だが、最近は外国の人がたくさん日本に来るので、観光名所に直接マーカーを置いて「スピードウェブ」で撮影すると、先ほどのリストの中に例えば中国語の案内が出たり英語の案内が出たり、多国語展開してユーザーにメリットを与えるという使い方もできるようになっている。
3つ目は折込チラシへの利用例である。チラシというと、最大でもこれくらいの紙面である。その中に量販店だといろいろな安売り情報などを掲載するが、どうしても載せる情報が商品スペックと商品画像、価格くらいになってしまう。
しかし、いろいろな量販店に話を聞くと、もっといろいろな情報を伝えたいというのが本音である。そこで「スピードウェブ」を利用して、チラシの中の商品画像をかざすと、さらに詳しい商品スペック、例えば部屋に置いたらどれくらいの大きさになるのかというのも表示すれば、ユーザーはより購買力を高めてくれるのではないか。
また、チラシの場合、その日、その日で当然、情報が変わる。「スピードウェブ」では、管理画面からひもづけるWebコンテンツをいつでも変更可能である。チラシのようなタイムリーな印刷物に対しても簡単に対応することができるようになっている。
以上はほんの1例だが、画像認識「スピードウェブ」はアイデア次第でいろいろなことが可能になってくる。我々も、いろいろなお客様と話をさせていただく中で、想像もしていなかったような使い方を逆にクライアントから提示していただくことがある。画像認識を使って、ぜひ広角的なメディア戦略を考えていただければ、我々もお手伝いして一緒に考えさせていただければと思っている。
次に「スピードウェブ」の管理画面を見てもらいたい。「スピードウェブ」はクラウドサービスで、1台のノートパソコンとかデスクトップパソコンにインストールするアプリケーションタイプではない。クラウド型のサービスである。
ブラウザからアクセスして、誰でもどこからでも画像コンテンツの登録、変更、削除が可能である。利用するパソコンや利用者に制限を感じることなく、いつでも利用できるようになっている。
これは「スピードウェブ」の管理画面のキャプチャー画像である。登録した画像はこのように一覧で管理でき、業務や案件ごとに自由に画像・コンテンツを入れ替えることができる。また、ご契約いただいたプランで、マーカー上限値以内であれば複数の案件にも利用できるようになっている。
これはコンテンツ登録画面である。まず、コトブキ企画のロゴを登録して、ひもづけるコンテンツを選ぶ画面である。登録は非常に簡単で、ひもづける動画の種類、URLなのか動画なのか、そういった情報を選択してもらう。
その下にあるのは有効期限設定である。例えば、今画像をアップしているが、ユーザーに見てもらいたいのは来週からだという場合、未来を指定すれば、その日にならないと反応しないコンテンツができる。
対象のコンテンツを結び付けた後、右下にある「確定」ボタンを押す。基本的には、この3クリックくらいでひもづけ操作は完了する。
この画面は「スピードウェブ」に搭載されているアクセス解析情報である。実際のマーカ画像に対して何回アクセスがあったのか、またリスト表示も、ユーザーはどういったコンテンツをタップして見たのかという情報を表示することができる。このログの解析をして、印刷会社は次回アプローチの方法やコンテンツの方向性などをクライアントに提案することができる。
例えば3つくらいマーカを使って展開していて、人気のあるコンテンツとあまりアクセスのないコンテンツが出てきたら、そのときにどんなコンテンツがひもづけられているかによってアクセスの増減があったのか、また動画ばかりひもづけて、ユーザーは見るのが面倒でやめてしまったのか、いろいろな可能性が考えられるので、比較的簡単に、企業の人に原因を調査して提案していただけるツールではないかと思う。
ARの技術や画像認識のシステムというのは、世の中にたくさん存在する。Printo to Webという商材を選択するとき、この項目をもとに検討いただければと思う。
まず、低価格、短期利用できること。たくさんあるAR商材の中で、システムは無料だというシステムもある。ただ、そこで表示するコンテンツを作るには200万円、300万円という高額なコストがかかってくる。それでは印刷物の販売価格よりもARのほうが高くなってしまい、その状態では印刷会社は価格の逆転したシステムというのをクライアントになかなか提案できないというのが実情である。
それから、すぐに利用ができて特別な教育や知識、ソフトウェアやハード導入が不要なこと。こちらも、同じ理由である。内部コストがかさんでしまっては、いくらいいシステムを提案しても、続けていくのは難しい。
QRコードや専用のマーカーが不要だったり、スマホの強みとなる機能、GPSなどと連動していること。コンテンツの表示が1種類だけではなくていろいろな複数のWebコンテンツを表示できること。
利用期間の設定、自動更新が自らできること。他社のシステムで、そのサービスを展開している会社にコンテンツを渡さないと更新できないというものがある。チラシのようなデイリーの印刷物だとスピード感に欠ける商材というのは扱いにくい。
セグメント分けが明確で、同業他社と混在しないこと。これも、先ほど誤認識は怖いということで話をしたことである。他社と比較検討する際に、この項目を頭の片隅に置いて検討していただければと思う。
企業の意識は、Webファーストへと着実に向かっている。Webファーストを実現するには、そこに誘導する手段がないと十分な効果は出ない。だからこそ、印刷物の特徴を生かした画像認識を活用してはじめてWebファーストが生きてくる。
特別な提案ではなく、印刷会社が日常の営業活動の中にさりげなく盛り込める提案ができるツールを提供すること。コトブキ企画は、印刷会社がパッシブ型提案でも生き残れるようなツールを生み出すことこそが使命だと思っている。
今後、Print to Webの事例をたくさん作り、印刷業界から提案の土壌を作っていきたいと考えている。それができない場合、デジタルブックと同じように印刷会社飛ばし(いわゆる印刷会社パッシング)の状況がまた生まれてくる。
印刷会社の、我々の業界の未来はあまり明るいものではない。だからこそ、未来を破壊する必要がある。そのツールとして、我々の商品を活用して成功する印刷会社をたくさん見たいと思っている。
2013年4月23日TG研究会「Webファーストの実現と電子カタログの有効利用」より(文責編集)