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世界の印刷市場は60兆円ともと80兆円とも言われる。カラーデジタル印刷機の市場動向を見ると、2000年以前から成長が期待されながら、なかなか期待ほどには成長していないところもある。それでもデジタル印刷のカラー領域は今後も成長が見込まれており、ドライトナーではCAGR(年平均成長率)で10%以上伸びてきている。インクジェットはCAGRで、2016年までに28%くらいの成長が予測されている。
例えば2011年に当社でもインクジェット機を投入したが、最近の1~2年で2桁の台数を導入いただいた。ドライトナーは、富士ゼロックスの得意分野であるが、2009年から2012年で販売台数が2.5倍~3倍くらいに上がっている。機能は向上しているが、手ごろな価格の機械が登場しており、それだけ市場にデジタルのプリンターが展開されているという状況である。
また、いろいろなアプリケーションが出てきているので、おそらく2013~15年も成長するものと見ている。デジタル印刷機を使った印刷物でのコミュニケーションが活性化してきて、デジタル印刷ビジネスがようやく本格化したと見ている。
アプリケーションから見たとき、インクジェットとドライトナーの位置づけは、マーケティングのところでコラテラル、カタログ、DM関係とある。
トランザクション系のDMはもともとデジタルの分野だが、これらの分野ではドライトナーが多く使用されている。ただし、部数的に見ると、特にDMなどでの小中ロットが対象である。大量ロットはインクジェットの事例が多くなる。
これからインクジェット、ドライトナー技術が目指すのは、インクジェットはコンテンツ系で、雑誌や書籍などである。加えてラベルパッケージ系にも随時展開していくことと、もう1つは高画質化も含めたカタログ、コラテラル系に進んでいくだろう。
ドライトナーの特徴は、スキルレスで運用できることがあり、メディアの汎用性も非常に高い。その特徴を生かして、One to One、もしくは個々のコミュニケーションツールとして、ラベルパッケージ系やコンテンツ系を伸ばしていく。
富士ゼロックスの商品のラインナップは、大型のインクジェットからモノクロの連帳機、カット紙のカラー機、LPCという低価格印刷機、モノクロ機などがある。
1980年代にモノクロのカットシート機、DocuTechを発売した。2000年にカラーの領域に向けた製品を出して、2010年代でインクジェット機を出した。中でもカラー機のColor 1000/800 Pressは2010年に販売して実績を積んできた機械であり、その中で技術も少しずつ進歩させている。高画質化を目指し、EA-ECOトナーやクリアトナー、ヒューザー関係や用紙の乾燥系、コントローラーなどをいろいろな形で技術の中に入れている。さらに、Color 1000 Pressは様々なオプションを追加し、ドキュメントの高付加価値化に向けてさらなる進化を続けている。
インラインセンサーは DocuColor 8000 Digital Pressの頃から採用しており、画像の欠陥、色味に対して、自動的に補正をかけるセンサーの技術である。
センサー技術はデバイス側だけでなく、コントローラー側でも管理して、欠陥部分、もしくは抜けたところを補正していくもので、その精度が少しずつ上がってきている。
インラインセンサーは、どのように画像の欠陥を見つけて、それに対してどう補正をかけていくのかが、これからの技術のポイントになっていくだろう。
クリアトナーの技術は、「4色+クリアトナー」で、富士ゼロックスはもともとテカリが多いといわれることもあって、マットトナーを出している。それをクリアトナーと組み合わせることによって、必要なところにグロス感を与えている。
インラインセンサーはアライメント調整やキャリブレーションなど、日々の運用で補正をかけていく。その精度を上げて、検知をする技術と補正する技術を組み合わせて、出力された成果物を100%に近づけていく。
もう1つはリモートサービスという形でお客様に提案している。リモートサービスの考え方は、基本的には稼働を止めないサービスである。これは世界中の機械の稼働データを元に、その機械の状況を見て障害の予兆診断に行っていく。ここでは駆動系や部品のライフ系、作動系などのパラメータ、時系列に動いていく変動する数値データを集めている。その結果として、どのような形でどのように経時変化をしていったのか、その場合、どのようなトラブルが起こっているのかを、予兆技術の中で対応していく。
ワールドワイドのデータを吸い上げることによって、このデータをいかに解析して、次のステップに生かしていくことに力を入れている。
現時点では、予兆、予測は2割、3割くらいのトラブルまでしか見えていないが、特に機械の駆動系や振動系の予兆については精度が上がってきている。一方、画質系の予兆に関してはまだまだ足りない部分がある。しかし、ここ数年のうちに予兆技術を80%~100%に高めていきたい。逆に言うと、その予兆が出てきた段階で、生産物を出力する前に予防の手を入れていく。成果物の保証という部分と稼働の保証という部分に富士ゼロックスのテクノロジーを入れていくということである。
高画質化、低価格化ための技術開発も続けていくが、ポイントなるところは技術を強化していこうと考えている。
それと同時に、リモートの技術(接続するプロトコルの技術)とカラーマネジメントの技術を組み合わせた形で、多様なデバイス間、画面と出力、デジタルの印刷機、トナー機、インクジェット機、オフセット機などに対する自動補正をかけていくような形でカラーマネジメントに取り組んでいく。
また、拠点間の機械の稼働状況、色味の状況も含めて、どのようなところまで色味のずれが出てきているかのチェックをする。それを自動的に補正していく技術に展開していこうと考えている。そのため、今ある技術をよりブラッシュアップしていくことで、お客様に対する、機械に対する稼働、出力保証、性能の保証などのポイントを強化していく。次のステップでは、これらをすべての商品、フルラインナップ商品で展開していく。
インクジェット技術が進化しているが、高画質化などがポイントになるだろう。2013年は1分間に100メートルのプリントができる1400 Inkjet Color Continuous Feed Printing Systemをリリースした。いろいろな形で省スペース化や高速イメージとRIP化を実現した。加えて、いろいろなデータフォーマットの採用、用紙の汎用性、走行性の技術も強化した。
特長として省スペース設計で、インクジェットの必須条件である乾燥機能なども小型化している。インクの供給機構も小型化技術を取り入れた。
コントローラーでは、スジ、ムラを改善させるために、直交方向にドットが接触しやすくなるよう制御する技術を入れている。
用紙の安定性、安定走行性については、ビジネスフォーム、オフセット印刷機をベースにしており、機構としては非常に安定した技術で用紙の走行性を図っている。
富士ゼロックスでは3つのセンターでサポートしている。1つはリモート技術を使って予兆診断するお客様統合サポートセンターで、ここの技術員がすべてリモートでつながっている機械を見ながら予兆診断し、エンジニアに指示を出していく。お客様価値創造センターは、デジタル出力でどのようにコミュニケーションを図れるかを紹介しており、デジタルの価値を作っていくセンターである。お客様共創ラボラトリーは、今持っている技術をお客様がどのような形で使えるのかということを検討し、コラボレーションできるようなセンターである。これらを活用しながら、お客様と一緒に価値を創造していく。
リモートによる統合CMSを提供していく。ここではすべての機械に対して、お客様も含めて稼働状況を把握して、例えば色味の変動がA機械とB機械でどのくらい差異があるかなどを監視して、お客様に報告できるような状態にする。それを元に、各機械自身が自動補正していく。さらに稼働していないタイミングでできるような形で、小型トナー機から大型ドライトナーやインクジェット機、もしくはオフセット機などと、シームレスに運用し、稼働させていくことを目指して進めている。
2013年12月12日 JAGATトピック技術セミナー 2013より(文責編集)