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小森は従来オフセット印刷の技術を持っており、主に印刷会社に枚葉機や輪転機を届けてきた。創業以来90年間、ずっとこの商売を生業としてきたが、市場は成熟し、今後がはっきりと見通せない状況になってきた。
全く新しい市場・製品では難しい。弊社が持つ従来の技術を使って、何か新しい市場は無いか、これまでお世話になってきたお客様に、何か新しい製品を提供できないかを考え、以下のような取り組みを始めた。
従来の技術、例えば証券印刷事業などがあるが、お陰様で日本の紙幣は、全て弊社の紙幣印刷機で刷っていただいている。これを海外にも広げていこう、紙幣用印刷機の開発にさらに力を入れ、新分野としてチャレンジしていこうと考えた。
もう1つ例を出すと、プリンテッドエレクトロニクス事業である。これは、増粘性のあるインクで、タッチパネルに引き出し配線といわれる配線をプリントする。従来はスクリーンを使用する場合が多く、70~100μくらいの太さの配線が限界になるといわれていた。それを、グラビアオフセットという手法を用いて30μ以下の配線を敷くもので、ここで生まれるお客様は弊社にとって新規の顧客となる。台湾や韓国などに向けた製品である。
さて本日は、従来顧客に対し、少し新しい技術でデジタル印刷機を開発、提供していこうという考えを中心にお話する。
「事業構造変革」と「業態変革」という、2つキーワードを挙げているが、事業構造変革とは、従来のオフセット印刷機だけでなく、デジタル印刷機、海外に向けた紙幣用印刷機、PE、プリンテッドエレクトロニクスという分野、扱い商品のテリトリーを増やそうという内容だ。
業態変革とは、どちらかというと提供するサービスの内容を広げていこうという話だ。弊社はこれまで典型的なハード売りの会社だったが、ソフトウェアや材料系の商品も合わせて、事業の領域、テリトリーを広げよう、営業スタイルを変えていこうという考え方である。
1番バッターとしては、IGAS12からコニカミノルタのOEM商品として、「Impremia C80」という名前を付けて弊社で販売させていただいた。OEMなので、コニカミノルタが開発した商品である。それに対して弊社としては、K-Color SimulatorというCMSを行うソフトをセットにして、少し弊社の価値を足してお客様に提供しようと、前回のIGASから販売を始めている。現在、国内と北米、ヨーロッパ、中国の4地区で展開している。
2番手は「ImpremiaIS29」である。これはUVインクジェットを用いた枚葉タイプのデジタル印刷機だ。29インチと書いてあるが、日本風に言うと菊半寸伸びというような、具体的な裁断値は750mmというサイズの29インチの枚葉印刷機である。1200dpiの解像度があり、片面印刷のときは3300回転、毎時3300枚で印刷する。
これは、コニカミノルタとの共同開発というスタンスを取って進めている。弊社とコニカミノルタの切り分けは、製品のアッセンブリ自体は山形にある工場、小森マシナリーで行い、ワールドワイドに出荷している。当然、用紙も当社の開発によるものである。コニカミノルタはヘッドとRIP、インクの部分を担当と、おおよそこのような切り分けで進めていこうと計画している。
3番手は、これは仮称だが、「Impremia Landa」である。イスラエルのLanda社からのライセンスに基づいて、小森の工場でデジタル印刷機、水性のインクジェット印刷機を製造し、全世界に向けて販売していこうという計画だ。これは40インチ、B1サイズの紙幅で1050mm、1200dpi、スピードは毎時6500回転からスタートしよう考えている。
この3セットを組み、デジタル印刷機のビジネスに加わりたいというのが、小森の基本的な計画である。
次に、IS29に関して簡単に説明する。枚葉タイプのインクジェット印刷機で、解像度が1200dpi、印刷速度は片面機が毎時3300回転、両面のときは2回通すので半分の1650回転である。
紙サイズは585×750で、750は他メーカーも大体同じような寸法をあげているが、585はあまり国内には無い。これは、北米のレターサイズが6面付けできるサイズだ。
紙厚は薄いほうが100分の6から、厚いほうが0.6mm、これが全体の紙厚の寸法だが、両面の場合は0.45mmである。国内でも海外でもパッケージを主業にしているお客様に「0.6はどうか」と聞くと、8割から9割は「0.6でできる」と言っていただける。
インクはUVインクを使っている。HSというのは商品名で、ハイデフィニッションシングルパスという意味だが、要するにUVインクである。また、小森が非常にこだわっている部分だが、専用紙やプリコートが不要である。通常、私どものお客様が使っている一般的な紙をそのまま、プリコートしないで印刷できるのだ。
IS29の様々な特徴として、プレコーティングや専用紙を使わずにコートやマット、上質、コートボールといった通常の紙を使える。
紙厚が100分の6mmから0.6mmという非常に広い紙厚仕様を持っているため、お客様が選択できる用紙の幅が広い。これが、一番の特徴と考えている。
UVなので当然だが、デリバリー部に排出されるとすぐに加工に持って行ける状態になっており、従来の小森が得意とする、全て爪を使ったオフセットの機構を採用しているため、用紙の搬送や表裏の転倒は良い性能が出せると考えている。
Landaは水性インクジェットなので、コンベア上のブランケットにセッティングする。このブランケットが加温されているので水分が飛び、水分を失ったインキと溶剤が圧をかけながら紙に転写されるという、非常にシンプルな原理になっている。
まだ実験レベルで、密着という意味ではまだ少し改良が必要だが、コート、マット、上質、プラスチック系にも、そのまま印刷できる段階には来ている。
発売時には、YMCK4色にオレンジ、バイオレット、グリーンを加えた7色でスタートしようと考えている。
上質系の紙にサーモグラフィーで、Landaの仕組みで打った場合と、通常の水性インキをダイレクトで打った場合の顕微鏡写真がある。水を失っているので、あまり滲んだり広がったりしないのが特徴となっている。
あとは、CMYKにOVGと7色加えることにより、パントーンの75%くらいをカバーする。パッケージの場合、いわゆる特色が、疑似色で同じものが出て許されるのか、それともコーポレートカラーの、コカコーラレッドのような、スポットカラーでないとならないのか、実は結構後者が多い。それがOGV含めて広い範囲をカバーしてどこまで受け入れられるのかは、国によって異なる。お客様に色々教えていただきながら色を考えている最中だ。
今後についてだが、2015年1月には「S10C」というパッケージ向けの片面機の、ベータ機を出したいと思っている。図は、簡単なモックアップレベルである。当初はここに大きなタッチパネルがあったが、ここで身体全体を使って操作するのは現実的ではないので、タッチパネルは集約し、このような機械でやっていこうと、今現在では考えている。
今後様々な出力機を出していく中で、各出力機関で色の制御をどうするか、というのは非常に重要になってくる。小森はデジタルとオフセットで、同じ紙が使えて、イコールにはなかなかならないが、ある程度似た品質で印刷ができる、というのを大切にしたいと考え、K-Color Simulatorという名前のオリジナルCMSソフトウェアを作っている。
これは、2013年4月から販売を開始し、現在16セットくらい販売している。あとは、デジタルになると当然細かいジョブ、点数が増えていくため、出力機は処理能力があっても、その前段階、仕事のワークフローが立ち行かなくなると結局は回らないということがあり、それにお応えするために、K-Stationという名前のソフトウェアも併せて開発している。
あとは、全体の簡単なロードマップだが、2014年の後半からIS29を市場に出し、Landaに関しては2015年の前半にベータ機を出していきたいと考えている。
2013年12月12日トピック技術セミナーより(文責編集)