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現在のデジタル印刷、インクジェット機のメインストリームは連帳、トランザクションである。ビジネスフォームの延長線上にあり、ミヤコシの機械の導入が進んでいる。
もともとミヤコシは1946年創立以降、ビジネスフォームのオフセット印刷機を製造販売してきた。そのお客様に、ミヤコシのインクジェットプリンターを十数年くらい前から導入していただけるようになっている。
最近は新しいパートナーと一緒に販売しているので、ビジネスフォーム以外のお客様にも導入していただいているが、基本的には今までミヤコシのオフセット印刷機を持っているお客様に入っている。
ただし、今後はトランザクション、トランスプロモ系だけでなく、書籍や商印、ラベル・パッケージ分野にもデジタル印刷化が波及していくのではないか。ミヤコシとしては、この分野へのマーケティングと商品投下が急務となっているところである。今後のデジタル市場にいろいろなものを投入していこうというのが我々の考えである。
連帳POD機に求められるものということで、アプリケーションの拡大。従来のインクジェットプリンター機は帳票関係の可変情報出力に特化している。しかし昨今では商業印刷とデータプリントの垣根が解消しつつあり、多種多様な印刷アプリケーションに対応できる柔軟性が必要とされている。
それと、さらなる高画質化ということで、標準的な600dpiのインクジェット画質は商業印刷やパッケージの品質要求レベルには達しておらず、これらの市場では依然として実生産での使用が難しい。今後のデジタル印刷機ではさらなる高画質化が課題となる。
ミヤコシとしては、この辺に対応すべく、2012年に1,200dpiの高解像度のヘッドを搭載したモデルを発表している。2014年くらいから、だんだん市場に出てくるのではないか。数年後にはおそらく1,200dpiがスタンダード化されるのではないかと予想している。
多様なアプリケーション対応というところで、デジタル印刷機、あるインクジェットのモデルだが、これが1,200dpiになるということで、いろいろアプリケーションが増えていくのではないか。ミヤコシ独自の加工技術を応用して、さまざまなアプリケーションにも対応していこう、さらなる高付加価値を創出可能にしていこうと考えている。
ミヤコシは今までオフセット印刷機をやっていて、デジタル印刷機に早く取り組んでいなかったら今頃どうなっていただろうと思う。オフセットでも、ビジネスフォームをやっていた中でお客様の細かい要望に応えるためにカスタムメイドの加工機というのをずいぶんやってきた。そこが重宝がられてお客様に購入していただいたという経緯がある。そういうところをインクジェットとプラスアルファをつなげていくとか、そういうアイデアを今後出していきたいと思う。
例えばバリアブル製本機というのは2009年とか2010年の展示会でも出したが、A4とか、その辺のサイズをシートカットしてページを重ねていき、糊を付けて、可変のページで簡単な製本をする。
それと、圧着はがき加工機というのは、去年から今年に限って言うと、最近、圧着はがきでDMとか請求書が届くと思うが、デジタルプリンターと圧着はがき加工機のセットで購入するというトレンドがあり、いろいろ引き合いや注文をいただいたケースがある。今まで、インクジェットはインクジェット、加工機は加工機という形だった。文庫本の加工機を、印刷だけでなく、シートカットして重ねてまた糊付けまでは一貫でやろうというアイデアも持っている。
次はミヤコシ独自の用紙加工技術というところで、ビジネスフォーム印刷機の設計・製造で培ったノウハウを活かし、パンチ・ミシン・スリッター等、多彩な加工パターンを、お客様の要望に応じて提案可能である。
真ん中にあるのはインクジェットプリンターだが、いろいろな加工を付けた図になっている。マージナルパンチというのは用紙の両端に穴を開けるとか、ファイルにパンチに穴を開けるとか、横ミシン、シートカット、縦ミシン、ジグザグ折、スキップミシン、スリッター、検査装置、いろいろとお客様の要望に応じてプリント部分だけではなく、加工の部分もお手伝いできるというところがミヤコシの強みというふうに考えている。
プリンターとここまで加工機を一緒にできるというメーカーもそうないと思う。日本のお客様に対しては、カスタムメイド、オーダーメイドというところが非常に重宝がられるというか好評だが、こと海外となると、難しすぎて販売できないというところで、ほとんど海外向けのインクジェットプリンターは海外メーカーの加工機が付いている。
理由は、注文しようにも難しくてできないというところで、今はなるべく付いている加工部をファイルパンチならファイルパンチ、シートカットならシートカットと、モジュールだけ、なるべく簡単に注文してもらえるようにという動きをしている。
もう1つの動きとしては、給紙とか巻き取りも単品で販売できないか。そういうものを扱って商売できないかということも視野に入れてやっている。
2012年以降のミヤコシの取り組みについて紹介すると、2012年にはdrupaがあった。その後、2012年11月に八千代事業所にてオープンハウスを開催している。そのときは9台のデジタル印刷機をデモンストレーションして、4日間で総来場者数1,500名を動員した。
2013年9月にはベルギーのラベルエキスポに出展した。このとき出展した装置は、MJP13LX-2000で、1200dpiラベル用に水性インクジェットプリンターである。
もう1つがMKD13A-1000というもので、これも1200dpiで同じくラベル用だが、これは紛体トナープリンターである。
また、10月のJGASで、MJP20EX-6000というところで、インクジェットの1,200dpiのワンタワータイプを発表した。
2014年には、捺染市場向けに、新開発機MTPシリーズの市場投入を予定している。
これはdrupa2012で発表したMJP20MX-7000である。用紙は788 x 600mm(B2サイズ)、解像度は1200×1200dpi、最大色数は8色片面、裏面8色、最高速度は1,200×1,200dpiで160メーターということで、ハイエンドの高速のタイプとなる。
最大毎分160メートルの圧倒的な生産性。1,200dpiヘッド搭載の、デジタル印刷の可能性を商業印刷領域にまで拡大。CMYKに特色4色を加えた最大8色対応でワイドな色域を表現。アンカー剤のプレコート不要でコート紙に対してもダイレクトで印字が可能というところで、これはインクと用紙セットを兼ねてやっていた。用紙によっては厳しい場合もあり、アンカー剤等、用意しなければいけない場合も出てくると思っている。
このプリンターはJGASで発表したタイプで、今お見せした1200dpiをコンパクトな1タワー構成ながらA3表裏フルカラー印字を可能にする。こちらも1200dpiヘッドを搭載している。CMYKに特色2色を加え、最大片面6色裏面6色での印字が可能である。小設置スペースと高生産性を両立する新世代のMJPのエントリーモデルということである。以前もこのタイプで600dpiを出していたが、その1,200dpiというイメージである。
これは2012年に同じくdrupaで発表したMDP8000という液体トナー方式の枚葉デジタルプレスである。これも1,200×1,200dpiで片面4色で6000枚/時、用紙の重量は64~360g/m2、0.4か0.5くらいである。0.6がパッケージには必要だが、0.6にすると若干トナーのノリが悪くなる。今いろいろテストしている。
アドバンテージとしては、商業印刷とパッケージ分野を広くカバーするB2サイズ対応。B2デジタル印刷機では最高水準となる、毎分最大6,000枚の高生産性。オフセットと同様の用紙搬送方式を採用し、安定した見当精度を実現。これは1年以上前に新聞等で発表されている。用紙搬送部分はリョービが担当して、デジタル部分はすべてミヤコシがやっている。そして、小ロット対応とフルバリアブル仕様の2パターンのコントローラを用意している。
これも同じ液体トナーで、B2サイズである。520幅なので、約20インチ、1,200dpiの、片面4色、裏面4色、最高速度は60メーターというところで、アドバンテージは超微細液体トナー採用でオフセットに迫る印刷品質を実現。1,200dpiの高解像度でトランザクションから商業印刷まで幅広くカバーする。また、毎分60メーターの高速出力。無害・無臭のトナーキャリア液を使用して、環境に配慮した印刷システムである。
ミヤコシとしては液体トナーに関してはかなり前から取り組んでいる。
一番初めに出したのは2003年なので、システム的にはほぼ100%完了した。もう数%というところで大きな販売につながらないが、トナーがもう少し定着性が良くなればいいと、日々、開発部隊がテストを行っている。来年には両方用意して設置していきたいと考えている。
これは新製品で、ラベル市場向けに投入したMKD13A-1000というラベル用紛体トナー方式デジタルプレスである。
最大用紙幅が330で印刷幅が321、1,200×1,200dpiの4色。この部分のプリント部分はコニカミノルタのドライトナー式プリントエンジン、C-7000をミヤコシの給紙とレーザーカッターを統合して、最大、レーザーカッターの速度が1分間で9メートル、レーザーカッターなしでそのまま巻きでやる場合は18メートルというところで、ミヤコシが今までやっていた装置と比べて非常に速度が遅いが、その分、価格帯もかなり抑えていこうと考えている。
これはまだやったばかりなので、これからまた技術的な課題とか、フロントも含めて立ち上げていって、来年中にはリリースしたいと考えている。
これはラベル用フルカラーのインクジェットプリンターである。ラベルは13インチ幅が主流なので、13インチ幅の商品だが、最大で8色ということと、解像度が1200×1200dpiということで一番解像度の高いヘッドを搭載している。
最高速度に関して言うと、ラベル用のインクジェットプリンターというとあまり早くないので、これは50メーターくらいに押さえて乾燥性も十分対応できるように、50メートルで、ドライヤーのドラムの径を少し大きくして設計している。
アドバンテージとしては、新開発の水性顔料インクを採用し、UV式に比べてインクコストを低減している。ラベル用インクジェットプリンターでは最高クラスとなる50メーター、アンカー剤のプレコーティングなしで直接ラベル用紙に印字が可能。マグネット式ダイロール装置か、レーザーカット装置をインライン搭載可能というふうになっている。
ローマイグレーションインクというのがUVインクで、1年くらい前から注目されていたが、実際に市場で販売されるとなると、今我々が水性顔料でラベルを出すが、フイルム対応は、顔料とか水性だと100%無理なので、ローマイグレーションインクができたら、無臭のインクなので、これもパッケージ含めてUVインクジェットプリンターのほうにするという可能性も十分視野に入れている。
2012年までのミヤコシのPOD機のターゲット市場において、商業印刷系では解像度が足りないということがあり、トランザクション系が主流だろう。ラベル・パッケージで言うとUVインクジェットプリンターが20インチ幅であったということと、その他のアプリケーションで言うと、専用のインクジェットプリンターが、1.8メーター幅あるというような形になっていた。
2012年、商業印刷向けでは液体トナーの画像再現品質が良いと我々は考えているので、この部分にこの装置を投入してきている。それと1200dpiのインクジェットはトランザクション系、ダイレクトメール、プラスアルファ商業印刷もカバーできるのではないかというようなところでラインナップを増やしている。
ラベル・パッケージもこれが非常に注目されている中で、先ほどのコニカミノルタ製品とラベル用のインクジェットプリンターを投入する。その他で言うと、捺染用のインクジェットプリンターを、この春に完成予定だが、かなりこの業界でのインクジェット化が非常にブームになっているということなので、ミヤコシでも投入していくというプランになっている。
インクジェット事業の強化ということで、国内向け・海外向けとも連帳インクジェットプリンター機の出荷台数は堅調に推移。今後のシェア拡大をめざし、さらなる高機能化・高品質化を追求していく。
1,200dpiモデルをいち早く市場投入し、市場スタンダード化を目指す。それと、ミヤコシの強みであるインライン加工部の同時提案により、各印刷会社の細かいニーズにマッチした印刷・加工ソリューションを実現していく。
2番目に液体トナー技術の確立。現状ではプレーヤーの少ない液体トナー機の市場で、確固たる地位を築く。HP社がこの技術の中ではかなり独り勝ちという感じになっていて、何とか我々も10年以上あきらめずにやってきて、何とか来年は半分とは言わないが、少しでも市場に入っていこうと考えている。
それから、顧客からの画質要求レベルやアプリケーションに応じ、インクジェット機とセグメントを分けて販売促進活動を行っていく。
紙以外の媒体への対応というところでは、これまでの連帳インクジェットプリンター機開発における技術蓄積を活用し、多方面への印刷アプリケーション対応を目指す。
今年で言うと、全く関係ない新しい分野のインクジェットプリンターで、1メートル幅くらいのインクジェットプリンターを内装材用のアプリケーションに開発して販売したり、ブロック塀とか、そういった変わった資材のほうにインクジェットがいろいろ使われるケースも出てきているので、来年以降、紙媒体以外のものに対しても開発していきたい。
最後にフイルム、テキスタイル、建材といった基材へのオンデマンド印刷を可能にするデジタルプリンターの開発にリソースを投入するというところで、この辺を注目していこうというふうに考えている。
ミヤコシは、印刷業界の5年後、10年後を見据え、積極的な商品開発と技術革新を行っていくので、ご期待いただきたい。
2013年12月12日トピック技術セミナーより(文責編集:郡司秀明)