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株式会社デジタルコミュニケーションズ
営業企画部マネージャー
今井 孝 氏
デジタルコミュニケーションズは平成10年に設立して約15年、XMLに関するドキュメントや、それにかかる受託、製品開発、特にWordをXMLに変換するツールに特化した事業を行っている。
中でもXMLツールのソリューション受託開発、製品開発・販売、XMLのドキュメント管理システム受託開発、XMLの制作サービス、自動組版システム開発、Webシステム受託開発、Webコンテンツ制作、XMLシステムのコンサルティング、運用管理という感じで、ほぼ一貫してXMLに関わるビジネスを行っている。
主な製品群として、一番コアとなっているのはWordをXMLに変換するという製品群である。さらに、電子書籍作成ソフト、Wordの文書をEPUB形式にしたりWordをXMDFに変えるもの、PowerPointをEPUBに変えるものを販売している。
最近は、新旧文書比較ソフト、新旧対照表を作成するソフトということで、よくドキュメント管理システムの引き合いをもらうと、履歴管理とか、前のバージョンとどう変わったのかというところで比較ソフトはないのかという声をよくいただく。
最近のトピックとしては、11月末現在、製薬会社のトップ10から約7割導入された製品として、今注目を集めている。その他、RSSへ配信する形の文書管理システムとか、PDFをXMLに変換するツール、PowerPointをXMLに変換するツールと、XMLを中心とした製品を販売している。
デジタルコミュニケーションズが考えるドキュメントソリューションは、こちらの製品体系図に表されている。
現在のドキュメント管理システムというのは、単なるファイルを保存して検索するというよりは、ファイルの中の必要な情報を切り出して、必要なデバイスで、最適化したビューで、さらにはリアルタイム性を持って見たいというのが最近の文書管理システムではないか。それを実現するためには、ドキュメントはやはりXMLで管理されていなければいけないと考えている。
XMLがどういう形で格納されているかというと、ダイナミックドキュメント、即ち生成から利用までのライフサイクルをもって、利用者の立場、局面等で自在に状態を変え、他の情報とも関連して体系化した形で表出するようなことが重要ではないかと考えて、そういったものを実現するために、この黄色で書いたツール群を販売して、こういったダイナミックドキュメントを実現しようと考えている。
中でも、こういったオフィスの文書をXMLにするツール、さらにはXMLの表示出力系のツールをやっている。
デジタルコミュニケーションズのドキュメントソリューションの説明をすると、今まで行ってきた業務、対象業務としては、まず印刷出版社向けのXMLの組版ツールを手掛けていた。最初はSGMLから始まり、2000年初頭にかけて、こういったビジネスを主に行っていた。
次にXMLを活用したオンラインドキュメントシステム。銀行の窓口業務をサポートする帳票類を作成するツール群をやっていた。今、一番中心としているテーマは、製造業の設計・開発文書のXML化である。
こういったものを実現するためには、XMLに変換するツール。XMLといってもいろいろな形があるが、それを100%使えるような形にするための事前処理として、Wordにスタイルをつけて自動構造化することが必要になってくると思っている。
次に、製造業のマニュアルに主に使われている、DITAへの変換ツール。これはWordの文書をDITAに変換するツールである。
次に製造業の設計・開発のスピードアップに必要なツール。これは変換したものを素早く編集しやすいように、XMLからWordにまた戻すというツールである。さらにはそういった情報をコンシューマ向けとか配布用のフォーマットへ変換するツール。Wordの文書をEPUBに変換するツールを説明していきたい。
これが、デジタルコミュニケーションズが標榜している循環ソリューションの実装イメージである。ユーザーは使いやすいWordをインターフェースにして、いつもどおり文書を作成する。それが社内で統一した正式なフォーマットであれば、それを自動的にXMLへ変換して、さらに既存の文書管理システムとかXMLデータベースといったものに保存されていく。
一方、既に企業内では作られた文書がある。そういった、スタイル等を意識せずに作られたWord文書等も、自動構造化ツールでまずスタイル付けして、XMLにコンバートして、先ほど言ったデータに戻す。
そこでXMLにしたデータは、ダイナミックドキュメントという形で、表示系を、印刷したり、PDFにしたり、Web、EPUBといったものに出し、さらにはまたそのデータをXMLからWordに戻してまた改訂・再利用をする。こういった文書の生成から廃棄までのライフスタイルを司るような循環ソリューションというものを実現していくというのが、この絵である。
ここからはデモを見てもらいたい。まず、こちらの自動構造化ツールについてデモを行う。例えば、普通にベタで打ったWordの文書がある。これを、自動構造化という形で、構造化のルールを設定したスタイルを選ぶ。
例えば「第」という文字が付いた場合には大見出しにするとか、ルール付けを指定しているファイルがあって、それを選択して、テンプレートを選択して、「自動構造化」を押すだけである。そうすると、先ほどベタで打っていたWordの文書に対して、タイトルとか大見出しというようなスタイルが自動的に当たる。これで1つ文書ができ上がる。
次に、でき上がった文書をXMLに、ここではDITAに変換するという作業が続く。WordからDITAへ変換するコンバータを立ち上げて、今作ったファイルが保存されているフォルダを指定して、XMLに吐き出すフォルダを指定して、あとはスタイルを指定しているファイルを選んで「実行」を押す。今、先ほど作った文書をDITA形式に分割して変換しているところである。
そうすると、このサンプルという下のアウトというフォルダにこのような形で分割されたXMLとDITAのマップファイルができている。これを開くと、このように、今の文書がXMLになっている。
今度はこのファイルをDITAからWordに戻して、編集者がWordを使って編集するということを実演してみたい。Wordを立ち上げて、先ほど作ったXMLのファイルを選んで開く。こうすると、またWordに戻って、通常通りWordを使って編集して戻すといった一連の循環がこれでできた。
今はWordの循環という形だったが、今度はWordのデータをコンシューマとか配布用に表示するためのツールとして、Word2ePubという製品があるので紹介する。Wordにそのままベタで打った夏目漱石の「こころ」という文書がある。このツールにはあらかじめCSSスタイルが6種類装備されていて、これを選んで、例えば表示用の画像ファイルがあればこれを選んで、あとは変換開始とすると、このような形で、今作ったWordのファイルがEPUB形式のファイルに自動的に変換された。
今は横書きになっているが、これを、例えばスタイルを変えることによって縦書きに変換することも簡単にできる。このように、先ほど横書きだったものが縦書きに変換された。これは自動的にXMLファイルにも書き出されているので、XMLをまた違ったコンテンツに出すことも可能である。
このようなツール群を使った事例として、デジタルコミュニケーションズではマニュアル製作会社の事例がある。編集者がXmetalを使って執筆したものを、いったんDITAに変換し、そのDITAのCMSからマップを使ってWordに出力。このDITAからWordへの変換とか、またWordで作った文書をDITAに戻してこのCMSに戻すというようなことを手掛けた事例がある。Wordで文書を作成して、DITAに変換して、別の組版で印刷する。あるいはDITAをまたWordに戻す。こういったものを納めた例がある。
また、自動車メーカーの事例としては、Word文書を、自動構造化でスタイル付けして、それをカスタムDocBookへ指定してのXMLに変換するというような例もある。
ここまでは個別のツール群を説明したが、これらを1つの循環ソリューションとして、一連の流れとして納めた例をこれから紹介する。それは大手生保の規定文書の管理システムである。
生保はこういった規定類の文書が非常に多く、それらを管理するが、今までのドキュメント管理システムだとファイル管理になってしまう。ファイルを編纂するというところまではいいが、規定集だと文書が長いので、ある部分だけを呼び出して加工したいとなると、非常に使いづらかった。
このシステムは、Wordで編集作業して、文書を部品化して効率的な作成を実現することを目的とした文書管理システムである。実際の流れとしては、例えば文書を編集するというとき、文書の部品化した、DITAのマップ、トピックから呼び出して編集、保存、さらには文書を部品化しての管理といったことが可能なシステムである。
基本的には、規定文書管理システムはこのような画面になっている。ある規定で、章があって、その中の条、節とあり、節ごとにこういう形がある。例えば被保険者調査の取り扱いという形で、ファイルが自動的にXMLとWordの形で保存されるようになっている。「XML」のほうを叩くと、このような形でXMLファイルが立ち上がる。「Word」のほうをクリックすると、Wordの、この章の中の文書が立ち上がる。
次に文書の編集をやってみたい。先ほどの画面の「詳細」をクリックすると、その中の文書が出てきて、ここでWordを立ち上げるとWordの文書が出るので、ここでいろいろ編集をそのまま加えて「登録」を押す。登録すると、先ほどのようにまたXMLとWordの形式で保存されるという仕組みになっている。
さらに、保存するときに、以前使ったものを部品として登録して上書きするかしないかというチェックを付けたり、前のバージョンとの比較もできる。「比較」を押すと、冒頭紹介した、新旧文書比較ソフトが自動的に裏で動く形になっていて、今見ている文書と前の文書の比較を対照表にしてくれる。
新旧文書比較ソフトについてもう少し詳しく言うと、例えばこういったWordの文書がある。このソフトはWordのアドインで動く形になっていて、インストールすると、ここに新旧文書比較という???ができる。
これはローカルでやった場合だが、このファイルとこれより新しいファイルを選択する。これはツールなので、手動でやっていたが、先ほどのような文書管理システムと連携すれば、この操作が自動的にできる形になる。
これを見ると1つの文ごとにこのような比較になっていて、例えば古い文書のほうには「わかりやすく説明してます」という言葉が入っているが、こちらのほうには「わかりやすく」という言葉がないので削除という判定になっている。
先ほどのように文書が長いと、見ていくのが大変だというときには、「すべてを省略」とすると、変更がない箇所については折りたたんだ形で、「略」という形で省略して、変更のあるところだけ表示してくれる。
さらにはWordの中にある表の内容も、変化があるとこちらに追加したり、さらに図形のほうでこういった位置がずれているところも「変更」という判定をしてくれるというソフトである。
最近、文書管理のときには必ず「新旧文書比較で履歴を管理したい」という声が上がってきている。
今は2つの文書を比較したが、もう1つの大きな機能として、1つの文書を検索というのがある。文書を作るときは、元の文書、今ある文書に何か手を加えて新文書を作り上げるという行為がよくされると思うが、新旧対照表を作りながらそれができる。
例えば今、これを開くと、自動的にこのような対照表を作ってくれて、例えば2を4にしたり、文字を加えたり、ここを消したり、このような形で変更を加えていって、途中どうなっているか見たいときには「変更箇所の表示」とやると、今文字を加えたところが「追加」になっているとか、消したところは「削除」になっているとか、2を4に変えたところは「変更」となっている。
これで提出するときには「提出用」という形でやってもいいし、文書のほうもここで「完成文書」と押すと、今の文字を入れたり消したり、2から4に変えたところの変更箇所がこのような形で加わっている。これが製薬会社の約7割、生保の約5割に入っているソフトである。
今、文書の編集から比較というところまで説明した。新旧文書比較についても説明した。今はWord版で説明したが、Excel版、PowerPoint版も揃っているので、デモを見たいというときは声をかけていただきたい。
次に、文書の部品管理についてである。今までの文書管理システムは、ファイルそのままで保存するという形だったと思うが、このシステムは文書をトピックごとに分割して保存することができる。さらに保存したものを部品として扱うことができる。それを見てもらいたい。
文書の新規作成というところで、普通に文書を編集する。ここまでは普通のWordである。さらに文書作成の効率を上げるために、部品化を行う。このメニューはいろいろカスタマイズというか、作り込むことができる。例えば何か検索すると、このように部品が出てきて、クリックすると部品として文書がはめ込まれる。
このままだとベタなWordファイルになるので、ここで先ほどの自動構造化をして、今度は生保向けなので、生保のテンプレートに変えて、ここで「構造化」とやると、このような形で簡単にスタイルが当たった形の文書に変換できる。これを保存すると、自動的にXML形式に保存されるという形になる。
こういった図も、部品として取り扱うことができる。同じように新規作成で、ここで入れる。先ほどの文書で入れて、今度は「図版」を押して検索すると、このように登録された部品一覧が出てくる。これをはめ込むと、文書が簡単に作れる。それでまた先ほどの繰り返し、自動構造化にして、保存する段階でXMLに保存されていくという一連の流れがここで完成している。部品の検索もできる。
ここまでだと一方通行だが、最終的にはXML出力と組版も意識している。「組版実行」というボタンがあって、これを押すと、今まで部品化されていた文書が1つのファイル、Word文書として組版される。
こうやって作って、参照ファイルでこのマップファイルを選んで「組版実行」とすると、先ほどの「被保険者症状調査等の取扱い」という文書が一連のものとしてまた組版される。以上が、大手生保で使われている規定集の管理のデモである。
今はWordのデモを見てもらったが、同様にDITAからPDF、DITAからEPUBも可能である。最終的にはまたWordの文書をXMLで構造化という一連の循環が、先ほどの文書管理システムで行われるという、循環ソリューションの例である。
最終的に我々が考えているのは、DITAの総合システムである。今までの文書管理システムはファイルごとで管理しているので、文書の検索まではできているが、検索してきたものを切り貼りしてまた新しい文書を作るということはできない。先ほどのように文書を分割してDITA化することによって、必要なところをピックアップしてまた新しい文書ができるというものは実現されていない。
先ほどは生保の例で見てもらったが、今のテーマとしては製造業というところを狙っていて、既存にあるPLMとDITAとの連携を狙っている。
ここはDITAの例ということでいろいろ書いてあるが、簡単に紹介すると、DITAは技術情報をオンラインでわかりやすく伝えることを目的としていて、さらにその情報の分割、整理、再利用を目的としている。効果としては、文書の再利用の促進、翻訳コストの削減、情報の品質向上というものが図られていると思う。
さらに、ドキュメントを再利用可能なコンポーネント、先ほどで言うと規定集を1つの節ごとに分けてトピックとして表現していた。DITAがなぜ使えるかというと、一意の内容で自己完結した情報単位に分割されているので、単独のXML文書になる。
さらには、そういったものがメタデータでエンベロープされているので、極論すると本来のドキュメントよりメタデータが半分を占めるくらいになる。この2つのXMLが対になってトピックを構成している。そういうこともあり、メタデータをPLMと連携することによって、製造業との連携も図れるということで、製造業で注目されている。
なぜ一般文書でDITAが使えるかというのをまとめてみた。既存の文書ファイルサーバだと、例えば参照とかコピーペースト、書式、レイアウト、コンテンツ再利用には人的な負荷が膨大であった。それがコンテンツを自動処理に適した形式に統一することで、再利用に伴う人的負荷が削減されている。
従来は、わずかなファイルの変更でも全体でバージョン管理をするため、無駄が多かったのが、DITAなら細分化されたトピック単位でバージョン管理するため、変更があっても無駄が非常に少ない。
翻訳にかかるコストも、今まで文書全体でやっていたものが、変更されたものだけにとどまる。また、既存のものは出力ごとに異なるアプリケーションを作成しなおす必要があったが、それが自動処理でWord、PDF、Web、EPUBなど、さまざまなものに出力することが可能になる。そして文書の分析にはマイニングツールなどが必要だったが、DITA化することによって、DITAはコンテンツのDBでもあるので、検索や分析に適しているという点がある。
DITAはこういったところで技術文書の中に広まって、今はマニュアルだが、技術文書というのは製品のライフサイクルのすべてに存在していて、DITAは最終的には製品ライフサイクルの全文書に使われるのではないかと思っている。
あとはe-learning業界、さらには製薬業界もDITA化を開始しているし、官公庁や、事務文書などもDITAを検討しているという形で、DITAは最初から「オンラインドキュメント」を作ることを目標としていて、「オンライドキュメント」の具現化としての電子書籍、EPUB、こういったものが合致したものがこちらのサイトにあるので、ぜひご覧いただければと思う。
最後に、デジタルコミュニケーションズが手掛けたDITAの事例をずらっと並べている。AT社ではWordからDITAへの開発、RY社ではDITAへのコンサルティングを行った。その他にInDesignのデータをDITAに変換してまた戻すツールや、Wordの文書とXMLとの循環ソリューションをDITA仕様でやっているもの。
名前が出ているところで言うと、YAMAGATA INTECHのDITAツール開発というのも行っている。
今はこちらでDITAのコンサルティングを主に行っている。また、ここにはないが、某自動車会社でDITAのコンサルティング含めた循環ソリューションの提案を行っているところである。
質問:このシステムを導入したところの費用対効果を教えていただきたい。
今井氏:費用対効果という意味では、文書管理システムなので、定量的になかなか数値で表すのが難しい。我々もそこまでは測っていないというのが正直なところである。ただ、効果と言えるのは、人的負担の削減と、実際のコストダウンも、金額までは出していないが、実感として得られているというところだと思う。数字でまだ表せていないというのが答になる。
質問:DITAはどのくらい普及しているのか。
今井氏:まだ全般的に普及しているとは言い難い。ただ、大手の製造業、特に自動車会社あたりからDITA化に取り組んでおり、今後、トップの企業が一度DITAでデータを持つことによって、情報のやりとりが生まれてくると思うので、そうなってくるとまた普及するのが変わってくるのではないかと考えている。
質問:一番旺盛な業種は自動車なのか。
今井氏:そうである。先ほどの生保の例は、生保自体はDITAというのを全く意識せずに使っている。意識しているのは自動車業界である。生保でも製薬会社でも、XMLというところまでは意識している。
2013年12月10日TG研究会「デジタル出版時代のドキュメント管理ソリューション」より(文責編集)