本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
欧米のデジタル印刷は、Web to PrintやITソリューションによって顧客の課題を解決することで成長している。どのようなプロセスで顧客の課題を解決したか、海外事例を参考にすべき点は多い。
DIGジャパンの共同代表、星名勧氏に話を伺った。
印刷の仕事が海外に流れている。あるスイス企業の日本法人は日本でマニュアルを印刷していたが、印刷費を減らしたいということだった。物流について聞くと、韓国にパーツセンターがあるという。韓国の印刷会社に当たると、日本の半額で印刷できるという。パーツと一緒であれば、輸送費はかからない。Web to Printを用意して韓国で印刷し、パーツセンターに納品してもらうことで、印刷費を半減することができた。
食品メーカーでは、ある食品をメキシコから輸入していたが、日本でラベルを印刷していた。メキシコでラベルを印刷したいという要望だった。このときは、現地のオンライン印刷発注を利用した。
このように、いつの間にか日本の印刷物が海外に流れている。だからといって、海外の事例や仕組みを、そのまま日本に持ってきてもうまくいかない。海外のやり方を日本流にアレンジすることが重要である。
チックフィレイは全米第2位のチキンファーストフードチェーンである。チックフィレイは、まず、クーポンが2枚ついたDMをお客様に送った。このクーポンは、Webにアクセスして個人情報を登録しないと有効にならない。登録すると特典が1つ付加される。さらに、SNSで紹介した友達がアクセスすると、特典がもう1つ付加される。この結果、31歳から40歳の女性がFacebookやTwitterで情報を拡散し、顧客情報の収集とクチコミ(WOM)マーケティングの両方を実現することができた。
注目すべき点は、紙を起点にしたキャンペーンということである。2000年頃に米国レクサスで紙のDMからWebに誘導する手法を見学したことがある。富裕層には紙のDMが有効で、現在もその方式が継続されている。
この事例では、紙を起点にしていることやクチコミマーケティングが強力な手法であることが分かる。
ヒルトンは世界中にホテルがあるが、紙やノベルティグッズなどの販促物をアレンジしてオーダーするWeb to Printを採用している。1カ所にアクセスするだけで必要なものが注文でき、テンプレートや写真などのコンテンツも用意されている。担当者は商品を選び、カスタマイズ情報を入力する。上司の承認を得ると発注できる。
日本ではまだ少ないが、海外では、このようなWeb to Printがかなり普及しており、大手企業なら当たり前である。海外で普及している理由は、ブランド規定が厳しく、勝手に発注できないことがある。また、発注窓口を1本化することでコストダウンを図っている。
イギリスのトヨタでは、ディーラー向けサイトに新聞広告のWeb to Printを搭載している。トヨタのキャンペーンカレンダーを参照して、キャンペーンを打つ。印刷発注する場合は、割安なトヨタ価格が適用される。トヨタから見ると、ディーラーのキャンペーン履歴を入手することができることが大きなメリットである。
DIGのクライアントで、年に約4億の印刷物を受注している会社がある。医師が学会で発表する抄録集のWebサイトを運営している。そのデータを手作業で編集加工して、印刷物を発注していた。コンサルに入って、本格的に自動化することになった。原稿データをWiki書式で入力する仕組みを作り、Web上でも上付き文字や数式を表示できるようにした。抄録をパターン化して、InDesignで読み込み、自動処理できるようにする。
海外だけでなく、国内のクライアントでもWeb to Printを利用したブランド管理やコストダウン、自動化を進めている動きがある。PODiの事例などを参考にすることで、顧客の課題解決を進めて欲しい。
(テキスト&グラフィックス研究会)