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学術ジャーナルはオンライン化、ペーパーレス化が国際的なレベルで進んでいる。
杏林舎の営業企画課長 合田 淳良氏にオンラインジャーナルの動向とXMLによる出版・電子書籍サービスについて話を聞いた。
杏林舎のクライアントは日本医師会、日本外科学会など医学系の学協会が多く、60誌以上の学術論文誌に関わっている。
学術ジャーナルは研究論文を掲載する雑誌だが、一般書店で販売されるのではなく、ほとんどが会員へ郵送される。研究論文は、研究から発表、そしてまた次の研究へというサイクルで動いており、Webや複数のオンラインジャーナルなどへ展開されることが求められている。
国際的には、インターネットの初期段階からオンライン化は進んでおり、すでに成熟期とも言える。海外においてはペーパーレス化やデジタルファーストも実現している。オンラインジャーナルの運営は、ScienceDirect、SpringerLinkなどの出版社系、アメリカ国立医学図書館のPubMed、国内では科学技術振興機構のJ-STAGEといった公的機関、日本アレルギー学会、日本外科学会などの学協会系がある。
日本におけるオンラインジャーナルの状況は、最近までは進んでいるとは言いがたいものだった。しかし、科学技術振興機構の無料プラットフォームJ-STAGEが構築されたことで、利用する学協会が増加しており、掲載誌は約1600誌となっている。
学術論文は、複数のオンラインジャーナルへの展開が求められること、定型的であることから、XMLによるワンソースマルチユースが最適と考えている。つまり、お客様の原稿を独自形式でタグ付けし、XML-DBに保管する。XSLTで組版エンジンのコマンドに変換し、自動組版する方法を採用している。PDFで印刷データを書き出すことも、HTMLやEPUBを書き出すことにも対応している。
ニューキャスト社のWPSというシステムを利用している。WPSはキヤノンITSのEdianWingを組版エンジンとしたシステムである。
XML組版のメリットに、体裁ルールが一定で組版品質が保持されることがある。ジャーナルごとのパターンを登録しているため、誰が作業しても正しいルールで組版される。タグ付けのルールはごく簡単なもので、誰でもすぐに覚えられる。規定のXML形式をマスターするだけで、ジャーナルごとの組版ルールを覚える必要はなく、特別なスキルも不要である。
近年、J-STAGEや電子書籍対応など、マルチユースの頻度が高くなってきたため、XML化した効果も大きくなっている。また、印刷会社がXMLという校了データを保管しているため、新しいメディアへの対応も容易であり、将来にわたってクライアントとの関係性を維持することができる。
データをXMLで保持しているため、電子書籍のEPUBデータを作成することも容易である。それに加え、学術専門の電子書籍サービス、KaLib(カリブ)をスタートした。学術ジャーナルやテキスト、専門書など学術系コンテンツに限定しており、ユーザーは医療従事者・学術研究者を想定している。
日本の学術ジャーナルにおけるペーパーレス化は、この1、2年で急速に進んだ。オンライン化による費用削減や、携帯性や検索性が求められている。これまでのような印刷ありきの受注体系、価格体系には限界がある。
そのためには、学術ジャーナルをつくるための総合的なサポートへと進化しなくてはならない。オンラインの投稿査読システムやオンライン校正サービス、電子書籍サービスなどに注力して、サービスを広げて行きたい。
(研究調査部 千葉 弘幸 文責編集)