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今やDTPが普及し,DTPによる印刷物作成は常識になりつつある。そしてDTPのユーザーは,専門職から一般人へと広がってきている。現在DTPは単に紙媒体である印刷物作成のためのツールとしてだけではなく,印刷情報を広範囲な情報伝達手段に活用する中核として認識が高まっている。
DTPは印刷情報のデジタル化を促進し,プリプレスの合理化を実現しているが,プリプレスの各工程を不要にしたわけではない。企画・編集,デザインや組版レイアウト,製版や刷版などの作業は必要である。
一時,DTPは初心者でも容易に印刷物作成が可能といわれた。たしかにDTPで文字・画像処理が可能になり,でき上がった印刷品質もそこそこにできるようになったが,そのでき映えに関しては,組版レイアウトやカラー品質のレベルに首を傾げるようなものが多く見られる。ハードウエアとソフトウエアの進歩とDTPによる恩恵は計り知れないものがある。その結果,上記の作業はロースキルで可能になったが,スキルレスで可能になったわけではない。
20年ほど前からコンパクトカメラが急速に普及した。露出・焦点距離などがすべて自動的に設定でき,ボタンを押すだけで写真がとれるものだ。一般人がプロのカメラマン並の写真がとれるといわれたが,世の中にプロのカメラマンがいなくなったわけではない。
世の中すべてのことにいえることであるが,使いこなすためのスキル(熟練・経験・ノウハウ)は必要とするものである。 印刷物といってもその内容は多種多様ある。簡単な印刷物はDTPを使って一般人でもできるようになったが,プロとして対価を得ようとするならば,それなりの知識や技能は必要になるであろう。
現在DTPを使いものにするためのキーワードを集約すると日本語組版,カラーマネジメント,データの互換性などであろう。なかでも日本語組版については,フォントを含めてすっきりしない。これにはアプリケーション側の対応とユーザー側の対応の両面がある。対応策の一つとしては,アプリケーション側で規範となる組版ルールを組み込んだソフトを作ること,そしてユーザー側が組版の知識をもって使うことである。
禁則処理でいえば,追い込み優先か,追い出し優先か,その際の約物やスペーシングなどの処理方法は,アプリケーションでデフォルトとして設定できる。しかし単位記号などは国際的ルールに準拠する必要があるが,これは入力に関係することである。この知識がないと,本来欧文小文字を使いkg,kmとすべきところを,ワープロの全角に収めたものを入力することになる。
今まで組版作業は,印刷発注者からの組版指定書(割付用紙)に基づいて行っていた。手動写植時代に,プロの組版オペレータと呼ばれたことがあったが,現実に文字原稿だけ渡されて自身で行長・行間・文字サイズ・レイアウトを設定し,印刷物のページ体裁としてページメーキャップできるオペレータは少ない。彼らは割付用紙に基づき,組版技術を駆使して組版を行っていたわけである。言い換えれば,オペレータは割付用紙がないと組版はできないことになる。
このことは、本来DTP時代でも同じである。印刷発注者には出版社,官公庁,一般企業,広告代理店,制作プロダクションなどがあり,彼らが印刷仕様書を作成するわけであるが,今では紙の仕様書の代わりにDTPを使い,文字組版・画像のデジタルデータを作成するようになった。ところが、それによってさまざまなトラブルが発生しているのである。