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最近DTPにおける日本語組版に関する話題が多くなってきたが,何故今ごろあらためて各所で取り上げて論議されるようになったのかその背景を考えてみたい。
従来の慣習として,プリプレスの川上部門である企画・編集者やデザイナーなどの発注者側は,原稿や組版/製版指定書などを印刷企業に渡し,実際の作業は印刷所側で行っていた。言い換えれば,発注者側は写植組版やカラー製版の実際経験がないし,また直しを指定するがどのように直すのかも知らないでよかった。
ところが,これら川上側の人達(デザイナーやMacオペレータ)が,DTPを使って印刷用データ(フィニッシュワーク)を作るようになり,そのデータが印刷所に持ち込まれるようになってから問題が発生してきた。つまり組版やカラー製版,および後工程の印刷や製本などの技術的知識不足が起因して,いろいろなトラブルが発生しているわけである。
一時「フルページネーション」という言葉が流行したことがある。印刷情報の素材(文字・図形・写真)のすべてを,1ページにページアップして出力することを意味しているが,これらを実現するツールとしてDTPが注目を浴びた。
しかし印刷業界にとっては,日本語組版が満足できるアプリケーションソフトやフォントの問題,加えてカラー品質が印刷に耐えられるレベルになかったことがDTPを敬遠した理由でもあり,DTPは使い物にならないという見方がされていた。
その後,DTPの組版ソフトも徐々にグレードアップされ,日本語組版機能の充実が図られてきた。まだ組版内容によっては不十分といえるが,最近プロのユーザーの間でもDTPを非難することより積極的に使おうという姿勢から,各方面でDTPの日本語組版のあり方について論じられている。それは日本語組版が満足にできない,とはなにか,またどこが悪いのかなどである。
日本語組版はどうあるべきかという観点から,アプリケーションソフトに対する批判・要望とDTPユーザーへのチュートリアルを含めた論点になっている。
日本語は,漢字と平かな・片かな混じり文で表記するのが基本であるが,現代では英字,洋数字,記号などを加えた世界に類を見ない特殊なものである。たとえば「DTPはデスクトップパブリシングの略語である」という文章は,日本人であれば当たり前のごとく「DTP」はアルファベットで,「デスクトップパブリシング」は片かな,「略語」は漢字,それ以外は平かなで書いている。
このように,異なる数種類の文字をシステムが使い分けていることは驚嘆に値するが,これらの要素がタイポグラフィとしての日本語組版ルールやフォントの使い方にも影響を及ぼしている。