本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
従来の印刷物制作における慣習としては、活字になったゲラ刷り(初校)を見てから初めて推敲するというやり方であった。つまり原稿段階では文字校正は行わないわけだ。もっとも組んで見なければ、組み体裁や文章量(文字数)の過不足も判明しないからだ。したがって文字校正を行いながら、写真やカットの大きさや位置調整をして、加筆・訂正を行うわけである。そのときに原稿の間違いや印刷所側の誤字・誤植などに対して赤字を入れる。
これが従来からのオーソドックスな文字校正の方法である。
ところが現代のようにワープロやDTPのデジタルデータが入稿する時代に、なぜ従来形態の校正が必要なのであろうか。また校正ワークフローが改善されないのであろうか。考え直す時期にきているであろう。
従来の「校正」に対する定義は、印刷する前の段階で校正刷りの誤字や誤植、体裁の不備などを、原稿と照合し訂正することをいう。文字校正にはJISで定められた校正記号を用いる。ところが、この校正記号を知らないというオペレータが多くなっている。「トル」という赤字に対して「トル」の文字を挿入したり、欧文書体の指定で「ローマン」と指定すると、欧文文字を「ローマン」と、かたかなに直すなど笑えない現象も見られる。
一人で原稿と校正刷りを対照しながら行うのを「単独校正」または「突合せ校正」といい、二人一対になって行うことを「読み合わせ校正」という。
1回目の校正を「初校」といい、2回目を「再校(二校)」、3回目を「三校」という。最終校正で直しがない状態を「校了」といい、多少の直しがあるが印刷所の責任で訂正するのを「責任校了」または「責了」という。最終的に念のためにとる校正を「念校」といい、その一部分だけの校正刷りをとることを「抜き念」という。
顧客に校正刷りを提出する前に、印刷所で校正するのを「内校」といい、編集者が印刷所へ出かけて校正するのを「出張校正」、著者自身が校正するのを「著者校正」と呼んでいる。
このように多くの校正段階を経て印刷されるが、やはり間違いが起きる。誤字・誤植の見落としである。「てにをは」の間違いは許されても、価格の数字の間違いなどは致命的なものである。しかし誤字というものはあるものである。世の中に完全とか絶対ということはありえない。コンピュータのデジタルデータは完全とはいえないし、コンピュータのデータだからチェックが必要である。これが校正の目的であるが、校正に対する通念が旧態然としていると、プリプレスにおけるトータルデジタル化の恩恵は中途半端なものになる。
DTPワークフローにおいて、特にフルデジタルのCTP(コンピュータtoプレート)のワークフローになると、文字・画像のデジタルデータが直接刷版出力される。刷版になってから誤字・誤植が発見されると、再出力になり時間とコストの無駄になるであろう。したがって校正ワークフローに関する、顧客と印刷所間の新たなデジタル化時代の校正ルール作りが必要になる。そのためにも執筆者や出版社、また印刷所などの意識改革が必要であろう。