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印刷の4版式といわれている凸版、凹版、平版、孔版の印刷は、印刷時に紙などの被印刷物に圧力(プレス)を加えて、インキを版から被印刷物に転写する。
しかし近年圧力を加えないで行う印刷技術が生まれた。この方法は同時に印刷インキを使わない印刷方法でもある。
コピー機のように、紙に「トナー」を付着させる「静電印刷方式」やノンインパクト・プリンタに代表されるレーザプリンタ、また熱転写(溶融型/昇華型)プリンタ、インクジェット・プリンタなどのプリンタが「版を使わない印刷」に該当する。コンピュータで処理した印刷情報の文字・図形・画像データを直接、モノクロやカラーで印刷する方式である。
今やカラープリンタでCMYKの4色カラー印刷は当たり前の時代である。これが「デジタル・プリンティング」である。またDDCP(Direct Digital Color Proofing)と呼ばれる網点階調でカラー出力するプリンタが、従来の色校正に代わるものとして浸透しつつある。
このプリンタ形式とは異なる「版を使わない印刷」に、大日本印刷が開発した「カールフィット」と呼ばれる印刷方法がある。プラスチック製品や家電製品などのカラー印刷に応用されている。凹凸の立体成型品に曲面印刷ができるのが特色である。
印刷機を使った「CTPオンプレス」というシステムがある。RIPで処理したデジタルイメージを、機上の刷版に直接焼き付ける(イメージング)する方式で、DI(Direct Imaging)と呼ばれるものである。
この方式は印刷用の版が印刷機に取り付けられ、印刷物ごとに版替えが行われるため、純粋な意味では無版印刷とはいえないが、版の有無の問題よりはトナー対インキの構図の違いであろう。
既存のハイデルの「Quick Master-DI」(図参照)や大日本スクリーンの「True Press」などがこの方式に属するが、DRUPA2000で発表された新システムがある。リョービの「RYOBI 3404-DI」、桜井グラフィックスの「オリバー474EPⅡ-DI」、小森の「プロジェクト-D」などもこの方式である。
しかし今後の開発指向としては、直接シリンダーにイメージングし、印刷終了後はシリンダーを自動的にクリーニングするというシステムが期待されている。これで純粋な意味の無版印刷が実現されるであろう。
その他に「紙を使わない印刷」がある。
厳密な意味で印刷定義の範疇に入るかどうか異論があるところであるが、最近普及しているCD-ROMの「電子出版」である。これは紙メディアではなく、電子メディアである。
またWebパブリシングも、ディスプレイ画面で印刷情報を読むことができる。これらのマルチメディアが「紙を使わない印刷」といえるが、紙にプリントアウトすると紙を使わない印刷とはいえないかもしれない。