本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
DTPの普及とともに、組版レイアウトや画像処理を含めて、限りなく質の低下を招いているという有識者の声がある。なかでも製本関係者から、DTP印刷物のトラブルが多いと聞いているが、印刷を含めた成果物が不完全ではロスが多く、製本工程の生産性を低下させることになる。つまりDTPユーザーの知識不足から、製本工程は被害を蒙っていることになる。
コンピュータ to プレートによりプリプレス工程はフルデジタル化になるが、印刷とはオフラインである。しかしコンピュータ to プレスは、デジタルデータを直接紙に印刷する方式で、印刷工程までフルデジタル化される。
いずれの方式でも、印刷後は後加工が必要になる。これらの方式では中間工程での手直しは不可能であるから、プリプレス工程から完全データで、しかも製本仕様を満たしている必要がある。しかし現実には仕上げ断裁をしたら小口側に白が残ること、また綴じ方が異なるにもかかわらず同じ版面レイアウトになっている、などの問題がある。
ところがアナログ時代には製本関係のトラブルは少なかった。つまり組版・製版・印刷関係者が、製本知識を心得ていて、フィニッシュワークの版下作成段階で、製版・製本仕様にもとづいて版下作成を行っていたからだ。これはDTPに相当する作業である。
印刷会社でも、クライアントからのデジタル入稿のトラブルが多く、完全原稿を要求しているのが現実である。これと同じことが印刷と製本の間でもいえることである。したがってDTPを使って印刷物作成を行っている印刷企業やデザイナーは、製本の知識は心得るべきものであるが、若いDTPオペレータにすべての知識を求めることは酷なことかもしれない。そこで組版・製版・製本などの知識をもつ、プリンティング・ディレクターの必要性が強調されているわけである。
そこで製本工程の流れを簡単に述べる。製本工程はプリプレス工程に似て、いろいろな作業が輻輳し複雑である。そしてそれぞれが独立した工程で、寸断されているのが特徴である。しかも工程間に運搬作業が伴っている。したがって現状の一般的な製本工程は、CTPシステムのようなデジタルデータを一貫処理するシステムは実現していない。
枚葉(シート)印刷の製本工程は、刷本(すりほん)の折に不要な部分や折丁単位の断裁作業から始まる。これを「断ち割り」という。次が「折加工」で、一折づつ折り機で刷本が折られる(図参照)。
これを「折丁」というが、1冊全部の折丁(おりちょう)が揃うと「丁合工程」に進む。輪転印刷(巻取印刷)の場合は、輪転機で折加工を行うので直接丁合工程に入る。「丁合い」とは、1冊分の折丁をページ順に揃えることをいう。