本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
2014年2~3月に調査した印刷会社経営動向調査の最新レポートがまとまりつつある。印刷会社の経営状況と戦略はどのようなものか。業績良好な印刷会社のかたちとは。印刷会社の経営と戦略、設備と投資スタンスを同時に調査する唯一の本レポートから最新動向を見る。
印刷会社の売上高は小幅ながら増加、7年ぶりの下げ止まりとなった。売上営業利益率は4年ぶりに2%台を回復した。2013年は、リーマン・ショックと東日本大震災により長引いた構造的な長期低迷局面をいったん脱した年と位置づけられる。製品・業種業態別には、包装印刷と総合印刷の持ち直しが全体の回復を主導したようだ。人員規模別には、従業員数が多くなるほど売上伸び率が高くなる相関が見られる。地域別には、東京以外の地域より東京の回復の方が優位だった。
経常利益率は昨年に引き続き2%台を確保、リーマン・ショック後続いた1%台を脱している。材料費が上昇したので加工高比率は改善せず横ばいだが、売上高の回復によって人件費など固定費の割合が相対的に低下した。近年続いてきた構造的な経費削減の効果が現れたといえる。1人当り売上高・1人当り加工高といった生産性も回復した。労働分配率も改善傾向が続き、収入に占める人件費負担の割合は低下した。利益率は改善したが、従業員の平均年齢は史上最高を更新するなど、人的資源に関しては課題が多く残っている。
あまりに多くの設問があり、部分的に紹介する。「現在重視する事業領域」における選択と業績の相関を見ると、「専門化」を選ぶ企業が「総合化」を選ぶ企業を6年連続で上回っている。「将来的に重視したい事業領域」は「総合化」が一番多い。しかし「最も妥当と考える経営スタンス」の最多は圧倒的多数で「印刷ワンストップサービス」。相当な差があって「印刷専業」と「ソリューションプロバイダー」が続く。「強化したい工程」の最多は「デザイン」。「加工」「Web制作」の順で続く。「加工」が業績格差をつける工程になっている。「デザイン」は差別化要素になっている。
報告書では、業績良好な印刷会社の形を浮き上がらせている。業績上位20%の印刷会社とそれ以外の平均的印刷会社を比べると、売上高は平均的会社より少ないが、1人当り売上高は変わらない。加工高比率は7~8ポイント高く、ここで収益性の大きな開きが生まれている。売上高は従来の分類に入らない「その他」の構成比が高い。1人当り機械装置額は同じくらいで設備面の大きな違いは見られない。1人当り人件費は1割弱高く、1人当り教育研修費は平均の1.2倍。業績良好企業ではこうした人的資源への投資が活発などの特徴が見られる。
詳細な設問から構成される本調査に回答をいただいた130を越える印刷会社の方々に、心より御礼申し上げる。36回目となる本調査の調査結果及びその分析はレポート「JAGAT印刷産業経営動向調査2014 」にまとめ、8月上旬日に回答企業に献本を送付予定だ。ダイジェストはJAGAT会員限定誌「月刊JAGAT info」、2014年6月号・7月号・8月号に分けて紹介する。また、希望者には8月上旬より有料で頒布するほか、報告会を8月に東京(28日)と大阪(29日)で開催する。
(JAGAT 日本印刷技術協会 研究調査部 藤井建人)
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■関連セミナー 【東京・大阪開催】
東京開催:2014年8月28日(木)
最新調査結果にみる印刷経営の現在と戦略 (東京開催)
大阪開催:2014年8月29日(金)
最新調査結果にみる印刷経営の現在と戦略 (大阪開催)
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「JAGAT印刷産業経営動向調査2014」
体裁:A4版、102ページ
定価10,800円(税込)、JAGAT会員特別価格5,400円(税込)
発行:公益社団法人日本印刷技術協会 研究調査部
購入:予約お申込みはこちら
【構成】
1.2013年度の印刷会社の経営動向
(1)経営動向の概況
・印刷会社経営の最新状況
・業績良好な印刷会社の経営構造
(2)経営動向指標
・貸借対照表、損益計算書
・生産性、収益性、安全性
・人的資源(平均年齢・部門別人員構成比・教育研修費)
・1人当り指標(売上高・加工高・人件費・機械装置額等)
2.印刷会社の業績と経営戦略
(1)業績と経営戦略の概況
・業績良好な印刷会社経営者の思考を探る
・業績良好な印刷会社の戦略
(2)経営戦略
・事業領域、戦略、事業分野、市場ポジション
・財務、顧客、生産、営業、マーケティング、人材と変革
・人材教育(手法・対象者・分野)
3.印刷会社の設備動向
(1)設備動向の概況
・設備投資のスタンスと意向
・工程の保有・強化・縮小意向
(2)設備保有状況、導入・廃棄意向、満足度
・枚葉機
・輪転機
・デジタル機等
(3)新技術・新商品/サービスの導入意向
・クロスメディア展開
・導入状況と満足度
(4)DTP環境
・PCの種類と台数
・アプリケーションの種類とバージョン
・データの入稿形態
4.印刷会社の経営指標
(1)セグメント別の経営指標
・データ:損益計算書・収益性指標・安全性指標・生産性指標等
・セグメント:地域別、従業員規模別、業種業態別、オフ輪の有無別)
(2)月次の各種前年比推移
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【印刷産業経営力調査の概要】
概要:印刷会社130社から調査票を集計
内容:印刷会社の経営状況、戦略、設備
期間:2014年2月~3月
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■関連レポート 業績と戦略の相関、高収益印刷会社は何を考えているか
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